第10話 友の怒り
ある日、千津子の家に友達の依子が遊びに来る。
「いらっしゃい!依子」
「お邪魔します~」
依子は部屋に上がると、リビングでお茶を出す千津子。そして二人は楽しく会話をする。しかし……伸子は案の定、嫌みを言いに来た。
「ちょっと、千津子さん…うるさいわよ?声をもう少し、下げてくれないかしら?」
「お義母さん、ごめんなさい」
千津子は謝るが、それを聞いて依子は言う。
「千津子さんのお姑さんですか?かなり神経質な方なんですね!」
「は、はい?神経質?あなた、いきなり何よ!お客様でしょう?人の家で図々しいわよ!」
伸子と口論になる。依子は遠慮することなく発言をした。
「あなたっていつも人にそう言う態度をとるのですね?!」
「何ですって!ちょっと千津子さん!あなたの友達、礼儀がなってないわ……追い返しなさい」
「お義母さん、私の友達を悪く言わないでください」
千津子は伸子に申し訳程度に言い返す。そして依子は言い続ける。
「本当はここまで言いたくなかったですが、千津子のために言います!」
「何か言いたいことでも?」
「千津子のこと毎日いじめてるんですよね?そんな環境、佳純ちゃんに良い影響を与えるって思ってるのですか?」
「な!あなたが人の家庭に口出ししないでちょうだい!」
伸子と依子の口論はしばらく続くと、千津子が不安そうに言う。
「依子…分かったからもう大丈夫」
そして喧嘩は落ち着き、依子は帰る……千津子は依子を心配しながら言う。
「気をつけてね…」
「千津子…姑を怒らせ過ぎたかしら…」
「大丈夫よ…ありがとう、スカッとしたわ…」
千津子は依子を見送ると、伸子は面白くない顔をして千津子のことを睨むのだった。
一方で、美智子は透とテレビを見ていた。
何気なく見ていると、あるニュースが流れる。
内容は20年前に病院で取り違えが起き、それまで知らずに生活していた両者の家庭が小さなきっかけで不審に思い、調べた結果、病院側のミスで赤ちゃん同士が入れ替わっていたとあった。
被害者の家族は涙ながらに訴えているシーンがインタビューで映っていた。それを見て、美智子は驚いてテレビを消す。
「何よこんな物騒なニュース…子供に悪影響だわ…」
しかし、透が興味津々で美智子に聞く。
「お母さん、とりちがえってなあに?」
「透?こういうニュースはまだ早いわ…もうちょっと大きくなったらお勉強しましょうね?」
「うん、わかった」
美智子はドキドキしていました、いつか自分の事もバレるのではないかと。
その後、透は宏と遊んでる時にも何気なく聞いた。
「おとうさん~『とりちがえ』ってなあに?」
「取り違え?そうだな……何かを交換するってことだよ」
宏は不思議に思うも、子供の純粋な質問だろう……と思い、特に気にも留めなかった。
その夜、静かな町並みにあるサファイアホテル……。敦士は部屋に行き、ドアを叩く。 派手な女性が出てきた。化粧は濃く、髪はサラサラでストレートに長く、下ろしている。
「敦士さん…会いたかったわ…」
「僕もだよ…」
二人は親密そうな感じでハグをした。