第9話 妻の疑い
美智子は帰り道……。気分が悪くなる。
「しっかりして!明美ちゃんの顔をみただけじゃない!入れ替わった事実はいい加減忘れるのよ!」
道端に座り込みながら自分に言い聞かせる。
美智子が帰った後、昭恵は退屈そうに掃除を始めた。旦那の部屋を掃除していると、服のポケットから何やら紙きれが落ちる。
「何かしら……」
昭恵は呟き、目を細めて紙を見るとどこかのホテルのレシートだった。
「サファイアホテル?!何よこれ!女と会っていたのね!」
昭恵はホテルのレシートを見て、すぐに不倫だと直感をした。
一方、千津子は依子の言葉を思いだして、伸子に話した。
「お義母さん……明日、私の友人を招いても良いですか?」
「何よ……あなたの友達なら、外で会えば良いじゃない?」
「迷惑でしょうか?」
「別に……でも、わざわざ呼ぶんなんて大げさじゃない?」
「大げさじゃないですよ?とにかく明日誘っても良いですよね?」
「勝手にしなさい」
千津子は伸子の反応に少し喜ぶ。
その夜、敦士は自宅に帰ると驚く!そこには包丁を持って立っている昭恵が。
昭恵は鬼の形相で言った。
「あ……昭恵……どうしたんだよ…怖いだろ」
「あなた……浮気してるわね?」
「してないよ……」
「じゃあ……これは?」
昭恵はホテルのレシートを投げつけた。敦士はレシートを拾って、見ると一瞬ドキッとするが、適当に嘘をつく。
「会社の同僚と、仕事の打ち合わせがあって使っただけだよ!」
「そんな分かりやすい嘘!お見通しよ!」
「嘘じゃない」
敦士はそのまま、部屋に逃げる。
「こら!待ちなさい!まったくもう…」
昭恵はそう言って包丁をしまう。そして敦士は会社の同僚に急いで電話をかける。
「もしもし?悪い……ちょっと嘘に付き合ってくれないか?」
敦士は同僚にホテルのレシートの時間に打ち合わせをしていたと言う口裏を合わせるように頼む。
「あなた?出てきなさい!話は終わってないわよ…」
昭恵がドアを叩いて言うと、敦士が部屋から出てくる。
「何だよ!違うと言ってるだろう…」
「じゃあ、同僚に電話して!私の前で!」
「分かったよ…電話すれば良いんだろう?」
敦士は同僚に電話をかける。そして昭恵は電話の会話に耳を傾ける。
「もしもし?悪いけどさ……妻が浮気していると疑っててな……今週の火曜日、夜7時にサファイアホテルで打ち合わせしたよな?」
「はい、先輩と確かにサファイアホテルで打ち合わせをしました」
電話の向こうから同僚の声が聞こえた昭恵は目を細める……。そして敦士は電話を切る。
「本当でしょうね?」
「だから、嘘じゃないって!いい加減にしろよ!」
「わ、分かったわよ、ごめんなさい」
謝る昭恵。半信半疑だが、同僚の言葉を信じるしかなかったのだ。