8話 どうもしよう
「な、なんでですかぁ!?」
戸澤は叫んだ。俺も叫びたかった。あんな威勢の良すぎる『無理』には動揺せざるを得ない。
「部活の設立は生徒会長の許可がなければ出来ないと校則で決まっているだろう」
「い、いやだから先生に頼んでるんじゃないですか!」
「すまん戸澤、こればっかりは俺個人にはどうしようもないことなんだ。どうしてもと言うなら校則を変えないと……」
そんな無責任な……。
「つーか校則変えるのも生徒全員からのアンケートとかいりますよね。現実問題それって今月中になんて無理じゃないですか?」
「おぉ、鋭いな伊佐。校則見直しのアンケートは毎回10月だ」
鋭いなじゃねーんだよ、一瞬にして八方塞がりになっちゃったじゃねぇか。
「ど、どうしよう伊佐ぁ……」
「どうするつっても、もっかい出向くしかねぇだろ」
「うー……それでどうにかなるのかぁ?」
100%どうにもならない、だけどこのままボーッとしているわけにもいかない。
とにかく下手に出たら、もしかしたらワンチャンあるか、ないか……考えれば考えるほど薄い望みで泣きそう。
「そういえば……言い忘れてたけど創部は今月いっぱいまでだからな」
「は?」
「お、追い打ちー……!」
今日が四月の二十日だからあと一週間で機嫌直してもらわないとゲームオーバーか、どんなクソゲーだよ。
ていうかあっちはこの事間違いなく知ってるだろうしむしろ下手に出れば出るほどつけあがるだろうな。あぁ、想像しただけでイラつく。
「……先生は会長に仕事を頑張るよう言っといてください。おい行くぞ、戸澤」
「えっ、どこに?」
「生徒指導部だよ。会長のこと、信じてもらえるからはわからないけど一応言っとこう」
正直俺たち二人の証言が信じてもらえるとは毛ほども思ってない。だが今出来ることをやる事の重要さを毎日話しかけてくれた戸澤の姿から学んだ以上、行動しないという選択肢はない。
「ん? 生徒指導部長は俺だぞ?」
「えっ」
「まぁ実績というか……前の学校では一人転校しちゃったけどな、ははっ!」
「はぁぁぁぁ!!?」
……キレていいですか?
転校した生徒については『変人にしかモテない俺はどうやったらまともな相手に出会えますか?』の4話を見たら大体わかります。
見なくても大丈夫です。