7話 急展開
生徒会室から離れても戸澤は俺を引っ張り続けていた。それが一瞬でも感情的になってしまった申し訳なさから来る行動か、とにかくあの場から離れたいという衝動的なものか。
なんにせよ付き合いが浅い俺には全くわからない……とかそんな事を考えていると戸澤は急に立ち止まった。
「……ごめん」
一言謝ると掴んでいた手が離れる。俺は何も言わず、肩を軽く叩いた。
「だから、別にいいって」
「……本当にごめん」
戸澤は俯き、拳をぎゅっと握った。そこまで落ち込むような事ではないと思うけど、真面目なやつだな。
少なくとも逆の立場だったら俺は何も言えない。アイツへの怒りが勝って非を認めるなんて考え、脳内に浮かび上がりやしない。
「ま、別に先生からは許可もらってんだ。直接言えば別にオッケーしてもらえるだろ」
「あっ、たしかに!?」
「いや気づいてなかったのかよ……」
目を丸くして大げさに驚く戸澤にはこちらも困惑せざるを得ない。なんか心配になってきたな、常についててやらないといつかとんでもない事に巻き込まれそうだ。
「それじゃあ行くか、ちょうど目の前だし」
「え?」
戸澤はまた驚いてプレートを見上げた。たしかに3階の生徒会室から1階の職員室まで来てたらそんな反応にもなる……いや、ここまで連れてきた張本人ならおかしいか。
「そんじゃ入……」
「すいませェェェェッん! 水岡先生いらっしゃいますかァァァ!?」
「お前それが平常運転なの?」
特別気合が入ってるからかけ声みたいになってるのかなって思ってたんだけど。なんか知れば知るほど何かが違うな、根本的な何かが。
「いるぞォォォォ!!」
「え? 同類?」
俺が思っている以上にこの学校は愉快な人が集まっているらしい。水岡先生は声の勢いそのままに真っすぐこちらに走ってくる。
あまりの勢いに気圧され、俺はちょっと後ずさった。
「どうした、戸澤とー……伊佐? 相変わらずイケメンだな」
「急に落ち着きますね」
「いやーちょっと会長が忙しいみたいで紙受け取ってもらえなくて……そういうことなんで先生のほうで出来ないですかァ!」
戸澤は俺のポケットから取り出した紙を先生に突き出す。先生は見るも無残な姿の申請書に一瞬顔をこわばらせたがすぐに元の穏やかな表情に戻った。
「凪ぃ……!」
「あぁ、やったな」
「うん……うん!」
目を輝かせる戸澤とグータッチを交わす。色々あったがコレで野球部設立か、戸澤には待たせてしまった分プレーで返してやらないとな。
よーし、これからめっちゃ頑張るぞー!!
「すまん、ムリだ!」
……なして?
5.5だったり小数点の付く話は本筋には関係ないので飛ばしても大丈夫ではあります。