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Ⅺ 秩序‐cosmos‐の否定

〝探偵〟が犯人を指させば、殺人事件での死はなかったことに出来る。


オルフェ・コクト(♂)……本作の主人公。探偵保険会社を辞め、現在フリーランス。

ユースティア(♀)……スラム育ちの少女。とあるアイテムのせいでオルフェの助手になる。

シマジ・ミサムネ(♂)……女装の清楚系高校生。クリスティ探偵保険会社所属。




(ボク)は犯人を間違えてしまったから、口出しはしないよ。オルフェの推理を聞かせてもらおうか」


「お前、無理にペナルティー負ってないか?」


「だって(ボク)がさっぱりなのに(キミ)が解けているなんて不公平じゃないか。だから腹いせに勘で推理したって良いじゃないか。少なくとも第一発見者である男装執事は犯人でもないし協力者でもない。つまり『ユースティアが犯人』というのが真実味を帯びてしまったわけだけど──」


 すねたように口を膨らませてくる。

 これが正規の探偵保険会社から派遣されている人物なのだからオルフェも苦笑い。

 それほどにオルフェに勝ちたかったらしい。


「協力者でないならあの嘘はなんの為についたのか。──簡単だ。第一発見者は遺書の文面を解いた。そして事が収まったら財宝を自分だけの物にしようと企んでいたから」


「ち、違っ」


「……遺書の文面。たしか(キミ)はほとんど解けてるとか言っていたね」


 あの謎解きのようなポエムのような文面。

 〝鏡の中の金色の明け方、燃え滾る火をかき分けて戦士は進む、それらが指し示す我らが故郷に宝は眠る〟。


「サファイア伯爵の美的センスを考えれば答えは出る」


「異性装好き?」


「それは表面上の物でしかない。彼の芸術は全て秩序(コスモス)の否定だ。秩序といえば完全なる調和──宇宙(コスモス)。庭に3体の像があったな」


 ナース服を着た少年が二匹の蛇が巻き付いた棒を掲げている像。

 バニー服を着た雷神ゼウス像。

 チャイナ服の『我が子を喰らうサトゥルヌス』像。


「ただの趣味の悪い像だろう?」


「ギリシャ神話の医者アスクレピオスの杖には蛇が巻き付いている。それに酷似したケリュケイオンは〝水星〟のシンボルの由来だとか。雷神ゼウスはローマ神話の主神ユピテルと同一視されることが多く、ユピテルは〝木星〟という意味。〝土星〟のサターンはサトゥルヌスから来ている」


「それがどうし……(女性シンボル)は美の女神が使う鏡が由来で〝金星〟を指す。(男性シンボル)は盾と槍を持った軍神アレスで〝火星〟を指す。そっか。そういうことか」


「分かったようだな。付け加えると金星は『明けの明星』とも呼び。堕天の魔王ルシファーの呼び名だ」


 ふたりで二枚の絵画に目を向ける。

 金星『果実を食して裸の男を誘惑している男装の悪魔』。

 火星『調理器具のおたまとフライパンを持った女装のローマ兵士』。


 遺書の文面はこの二枚の絵画のことを書いていた。


「残るは〝それらが指し示す我らが故郷に宝は眠る〟だけど……我らが故郷。惑星でいうなら地球だね」


 ミサムネも納得したように床を見る。

 というよりも第二の殺人の被害者を見る。


「そう。これは床にかかれた(女性シンボル)マークではなかった。ちょうど180度回転させた〝地球〟を表す記号だ」


 オルフェ達は左右に飾られている絵画の位置を床のシンボルマークの方向に絵を合わせる。

 するとシンボルマークの円の部分が回転するように下っていく。

 ディップの遺体も一緒に回りながら。


「隠しエレベーターといったところか」


「ディップはこの謎を解き。下の階に降りた。しかし何かが起きてそのまま息を引き取る。そして時間制限があるのかエレベーターは元に戻った……そんなところかな」


「第一発見者のお前も謎を解けてここへ来たがディップに先越されていた。隠れて待っていると何も知らないスティがやって来て興味本位に降りて行った。そして帰って来たのはディップの遺体のみ」


「謎解きのことを話さなかったのは隙を見て下に降り、財宝を独り占めにしようとしていたとか?」


 気まずそうにする男装執事。

 申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。


「まあ、俺たちも責めはしないさ。謎を解いたものにだけうんちゃらかんちゃらって文面があったしな」


 そんな事よりとオルフェは隠しエレベーターが造った穴をのぞき込む。

 思ったより深い。

 暗闇である。


 見えるのはポイントウォッチャーのライト機能の光。


「スティ大丈夫かー?」


「オルフェ~。ミサちん~。怖かったよぅ」


 半べそかいたユースティアがそこにいた。



「どうやってこの距離を下りたのさ」


「ジャンプ。からの転がりながら着地!」


「お前は猫か」

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