未来人の落とし物 その3
君は自分を大切にしていますか?
僕は高校2年生の17歳勉強はかったるいけど、
友達とダベってるだけでも、ま~そこそこ
楽しくたわいもない日常を過ごせていた。
ある日の帰り道、落とし物を見つけた。
『生徒手帳』
可愛そうだし届けてやるかと思い、拾って中を
確認するとそれは自分の生徒手帳だった。
名前も写真も僕だ!
あれ?どこで落としたんだろう。
無くした覚えはないんだけどと考えていると、
「すいませんそれ僕のです」と声をかけられ
降る向くと「は!?」僕の声が漏れる。
現れたのは男子高校生
だだし、僕に『そっくり』
世界には3人は自分にそっくりな人が
いると言うが、ここまでそっくりな人に
会うのは初めてだ。
相手の人も動揺してぽか~んと口を開けて
止まっている。
「これ貴方のですか?」
僕は拾った生徒手帳を見せる。
「うん」首を縦に振る。
「突然なんだけど僕達凄く似てるよね!」
「僕もそう思ってた」
「なか見させて貰ったけど、名前まで
一緒なんだこんなことってあるのか?」
「そうだな……………」
僕達は無言になりどうすればいいかわからない。
「あの、これ」僕は生徒手帳を渡す。
「あ、ありがとう………」
「それじゃ~」
どうして良いか分からず、さっさと返して
帰ることにした。
じばらく歩いていると違和感を感じた。
後ろにさっきの高校生がついて来ている。
なんだ偶然同じ方向なのか?
正直気持ちが悪かったので早足で帰る。
まだついてきやがる。どういうつもりだ!
あと少しで家だ、さっさと逃げこもう。
僕は家の中に入り鍵を閉める。
「はー何だよあれ、似すぎだろ気持ちわる」
僕は愚痴を言いながらもほっとしていると
後ろから「ガチャ」と音がした。
鍵が開いた音だった!扉が開き入ってきたのは
さっきの高校生、再び時が止まる。
僕はカーとなりそいつに怒鳴る。
「どういうつもりだ!ふざけるのも大概にしろ
人の家に勝手に入りやがって」
その言葉をきっかけにそいつも怒鳴って来た、
「ふざけてるのはテメェーだろ。
ここは僕の家だ!お前が出ていけ!」
お互いしばらく言い合いになったが
一向に話が進まず平行線をたどった為、
部屋で話し合うことにした。
「勝手にベットに座んなよ!」
「いや、僕のだから………」
「あ、そう言う話だったな」
僕は机の椅子に座る。
「話を整理するぞ!まずは質問に答えてくれ」
「名前は」
「鈴木正樹」
「年齢は」
「17だ!」
「誕生日」
「10月2日」
「家族構成」
「父、母、僕の3人だよ」
「住所は」
「●●県◆◆市▲▲町………」
「好きな食べ物は?」
「納豆とキウイとサンマの塩焼き」
「同じだ…………いやまだだ!」
「親友と言えば」
「恥ずかしいこと聞くな~
う~ん 一応、健司と亮かな
「………部活は」
「…………帰宅部?」
「今度文化祭でやる出し物は」
「男装女装喫茶」
「ウグッ」それから答えにくい質問をしたが
ことごとく僕と一緒だ。これはまさか!?
「その……好きな人は誰かいるか」
「それも言わないとダメか?それにこっちばっかり
質問するのも納得出来ないしそれこそお前が
答えろよ!」
「栞 神崎 栞が僕は好きだ!」
「マジかよ!……僕の好きな人も同じ………」
そいつもやっぱり同じ名前、正直驚きを隠せない。
どうやらこいつは僕なのかも知れない。
なんで僕が2人いるんだ。
「!?」そいつは一点を見つめて止まっていた。
僕はそいつの目線を追って見てみると
カレンダーがあった。
「どうかしたのか?」
「なんで30日の予定に✕をうっていないんだ!
一昨日書いたはずなのに………」
うん?30日、遠出で遊びに行く予定をしていた日だ。
「健司に急遽予定が入って昨日カレンダーに
✕をうって2週間後に変更したはずだ」
「どういうことだ、僕はそんな話聞いていない」
「ま、まさか……あんた健司から連絡入ってないか?」
「あ、スマホ見てなかった。連絡入って……る
健司からだ、悪いけど30日急遽予定が入って
日程を変えたい詳しくはまた明日……
これどういう意味だよ」
そいつは急に混乱して発作が起きたように
苦しみ始めた。僕は混乱しながらもそいつを
落ち着かせるため背中を撫でたり水を呑ませたりと
バタバタしていた。
「大丈夫か?お前」
「は~は~は~悪い助かった。
動揺してまだ今も混乱しているんだ
もう少し待ってくれ」
「いいぞ!気にすんな!」
苦しんでいる奴に対して強く当たるつもりはない
特に自分にそっくりなら尚更言いたくない。
「今日は何日だ!教えてくれ」
不安そうな顔でそいつは言った。
「今日は20日だぞ!」
そいつはぎょっとしてすぐな暗い顔になる。
「そうか、もしやと思ったけどそんなこと
あるのかよ!」
「どうしたんだよ突然、20日だと問題でもあるのか」
「僕は多分未来から来たんだよ」
なんだこいつ突然気でも狂ったか?
「僕は今日が22日だと思ってるんだ、
さっきの健司の連絡は一昨日知って
カレンダーの✕をうった」
「え!?………つまりお前は2日後の僕ってことか?」
そいつは静かに頷いた。
しばらく沈黙が続き、
「ま~あれだ、いきなり出ていけとか
言わないから安心しろ!知ってると思うが
両方とも親はいつも帰ってくるのは遅い
僕が一人増えたところで気が付かないさ」
「良いのかよ!お前………」
「良いよ!自分だし………な!」
困っている自分を見捨てる程薄情じゃない。
「ありがとう、ありがとうな!」
自分にお礼されるされるとはきっと他の人が
見たらかなりシュールな光景だろう。
それからは飯食って、風呂入って寝た。
朝起きてきっと昨日のことは夢だったのか~と
ならなかった。横に寝る自分を見てため息が
漏れた。
「それじゃー行ってくるけど、ウロウロ外には
出るなよ!近所の人に見られて学校サボってる
と思われるから」
「分かってるよ。家でじっとしてるよ」
「行ってきま~す」自分に言って出ていった。
…………▽
それから数日が過ぎ
「お前またダラダラしてずるいぞ~」
もう一人の自分はソファーで寝ながら
マンガをよんでいる。だいぶこの生活に
慣れたようだ。
「そんなこと言われても仕方ないだろ
外に出れないんだから、マンガとかネットとか
見て過ごすしかないだろ」
「そうだけど……チッ良いな!」
「そこまで言うならたまには僕が行こうか!学校」
「良いのか?」
「別にいいけど、それに家の中にずっと居るのも
結構しんどいんだ!正直ありがたいよ」
「よっしゃ!そうと決まれば明日は休み~
明日なにしょっかな~」
僕はワクワクして、みんなが勉強しているなか
だらだらと1日を過ごした。
…………▽
それから1ヶ月後
定期的に入れ替わるようになり、
入れ替わる頻度も徐々に多くなる。
いつの間にか週5日の内2日しか学校に行ってない。
「な~ここ最近僕の方が学校に行ってるけど
良いのかよ勉強とか遅れるぞ!」
僕はベットに寝転がりマンガを読みながら
「何だよ母親みたいなこと言うなよ!
僕ってそんなに真面目なこと言う
キャラじゃないぞ!」
ここ最近こんな言い合いが増えてきた。
正直この生活は楽しくて止められない。
何とかして続けたい。
「いいか、お前は僕のおかげて
この家に居られるんだ!僕がそうしたいって
言ってるんだから従うべきじゃないのか!」
「………………分かったよ」
そう言ってあいつは出ていった。
……………▽
それから6ヶ月後
僕はあれからほとんどあいつに学校に行かせて
今では1日も行かずぐうたら生活を満喫、
意外だったのはあいつがなにも文句を言わずに
学校行っていること。
ま~あいつも僕のおかげで生きていけると
感謝しているんだな!アハハハ
「腹減ったな、冷蔵庫に目ぼしいものはないか……
しゃーない、たまには外に出るか」
僕はコンビニに行くことにした。外に出る為
服を着替えようとすると、「少し太ったか?」
服がなかなか着れず、ズボンのベルトが
締まらなかった。ちょっとダラダラし過ぎた。
靴を履いて玄関のドアを開ける。
あー外に出るだけなんだけど久しぶりだから
新鮮な気分になるな!
僕は少しワクワクしながらコンビニに向かう。
コンビニでお菓子を大量に買い、ぐうたら生活の
準備は万端だ!せっかく外に出たんだし
近くの公園でアイスでも食って帰るか
僕は公園でアイスを食べながら散歩をしていると、
「あ!?」口から声が漏れる。何故なら少し先の
場所に僕が好きな女の子、神崎栞ちゃんが
座っていたからだ。
久々に見たせいかいつも以上に可愛いく感じる。
僕はドキドキしながら遠くから見ていると、
栞ちゃんが嬉しそうに立ち上がり
その直後男子高校生が走って来た。
「嘘だろ!?栞ちゃんに彼……う~ん!?」
好きな子に彼氏が出来たのかと驚いたが
それ以上に驚かされたのは……「あれ、僕だよな」
そこには椅子に腰掛け楽しそうに栞ちゃんと
喋るあいつが居た。
どう言うことだ?何であいつが栞ちゃんと
仲良く喋っているんだ!
僕はすぐに1つの可能性に気が付くが
そんな馬鹿なこととすぐに否定する。
しかし、あいつと栞ちゃんが手を繋いで
歩いていく姿を見て、やりやがったと確信した。
当然と言えば当然、僕は栞ちゃんが好きで
あいつも好きなんだ、こうなる可能性はある。
でもまさか付き合えるなんてもっと早く声を
かけておけば良かった。
僕はニヤリとした。
これはチャンスだ!また入れ替われば
栞ちゃんと付き合える。
頭の中ではデートはどこに行こう。
映画館が良いか遊園地が良いかそれとも
まずはカラオケくらいを誘うのが良いかな~
などと思いを馳せていた。
急いで帰らないと
僕は重い身体を振るわせ「ゼェーゼェー」
息をしながら走って帰る。
「は~は~は~やっと家に着いた」
息を切らせて家の前で立ち止まる。
何故なら女性が家に入ろうとしていたから、
「母さん今日は早いじゃん珍しい~」
母さんはいぶかしげな目で僕を見る
「あなた、勘違いしているわよ!」
「なに言ってるんだよ!しばらく会ってないから
忘れたのか、冗談が過ぎるよ!」
「あなた、これ以上変なことを言うと
警察を呼びますよ!」
母さんは怯えるように家に逃げてしまった。
「ちょっ、か、母さん待ってくれー」
僕は慌ててドアに手を掛けるが鍵をかけられ
開けることが出来ず、「母さん開けてくれ~」と
声をかけながらガンガンドアを叩いた。
「ウーウー」遠くからパトカーのサイレンが
「母さん本当に警察を呼んだのか!チクショー」
僕は仕方なく走って家を離れた。
くそ~なんでこんなことになるんだ
僕が項垂れていると前から栞ちゃんが
歩いてきた。
「栞ちゃん!」
沈んでいた僕の心を一気に舞い上がらせる。
「あの~どこかで会ったかな~
ごめん、ちょっと思い出せなくって」
「待ってくれ僕は●●だよ!栞ちゃんまで
僕を忘れたようなこと言わないでくれ」
「あなた!!何の冗談●●君はそんなに太って
ないわよ!それにちょっと臭い、来ないで!」
栞ちゃんは僕を罵倒しながら逃げるように
走って行ってしまった。
「栞ちゃん なんで?なんで?行っちゃうんだよ~」
僕が絶望のどん底にひしがれていると、
「もう、お前は●●じゃないんだよ!」
そこに現れたのはもう1人の僕
「お前どう言うことだよ!なんで母さんも栞ちゃんも
僕を分かってくれないんだ~」
「お前さ~自分見てないのかよ」
スマホを僕に向けて写真を撮ると
こちらに画面を向けて見せられた。
これ……誰だ!
そこに写ってあるのはデブテブのボサボサの
別人になっている…………俺なのか?
「分かったか!不摂生が過ぎたな。
まったくいつも臭くて堪ったもんじゃなかったぜ」
「ふざけるな!いくら見た目が変わったからって
僕が分からなくなるわけがない!」
「は~説明するぞ!
お前が引きこもっている間、学校のみんな、
ご近所さん、父さん、母さんと会ってたのは僕だ!
お前が戻っても急にそんな姿に変われる訳がない
だからみんなお前を認識出来るわけがない」
「そんな~そんな~僕は~」
「フッ もうお前は●●じゃない!
僕が●●だ!どっか行っちまえ!」
「おい、僕を見捨てるつもりか?
お前は僕なんだぞ!な~助けてくれるよな!」
僕は必死にしがみつくが
「くせぇーんだよ!おまえ」僕は蹴り飛ばされる。
「いいか!僕にとってお前は邪魔者なんだよ!
消えな!二度と僕の前に出てくるんじゃね~」
そう言ってあいつは僕のことを見捨てた。
……………▽
それから1年後
「は~疲れた。健司も亮も卒業式だからって
泣くことないのに会いたければいつでも
会えるんだから」
ベットに腰掛けながらスマホを弄る
「お!栞からじゃん
明日暇かって、ヒマヒマ、栞の為なら
暇じゃなくても行くけどね~返信返信っと」
『よ!』後ろから声が聞こえ振り向こうとして
……「は?」 ……『ゴン』頭に衝撃が走る。
…………▽
目が覚めると縛り上げられていた。
頭が痛いし腕から血が出ている。
『目、覚めたか?』
「おまえ!?」目の前には自分が立っていた。
『なに驚いてるんだ!僕だよ僕』
顔をヌ~っと近づけ確認させる。
前と違って太っておらず今は僕とまったく
同じ体型同じ姿になっている。
「なんでここにいる!」
『不思議なこと言うな~ここは僕の家だ
いても何ら可笑しくないだろ』
「ふざけるなよ!もうここにはおまえに居場所は
無いんだよ」
『じゃー入れ替わろうぜ!』
「!?」
『別におかしなことはないだろ。1年前に
そうしたんだから、また変わるだけさ!』
「待ってくれ!そんな!」
『もちろん待ったさ!1年も、もう良いだろ
我慢の限界なんだ!家族、親友、好きな人
お前は僕からいろんなものを奪ったんだ。
僕はもう甘くはないぞ!お前はもうすぐ
出血多量で死ぬ、死んだら跡形もなく
燃やしてやるからちゃ~んと消えてなくなれ』
「た、助けてくれ~」※小声
外に助けを求めたいが
『もう、声を出す力もなくなったか?諦めろ』
「い、いやだ~助けてくれ」※小声
身体をガタガタ動かす僕を見て
……………………………………………………………
『は~帰り道に変なもの拾うんじゃなかった』
……………………………………………………………
【END】
みんな~人に優しく自分にも優しくだよ!
夏のホラー2023に参加するため
書いていましたが、
このシリーズもこれで最後になります。
読んで頂いた方本当にありがとう御座いました。
今後もまだまだ投稿はしていきますので、
鉄馬 メウを宜しくお願いします!( ´∀` )b