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紛らわしい


何とか今週も切り抜けた僕は、やっとみんなと約束していた週末を迎えられた。


「今日も、クラスメイトは来るのか?」


「うん。そうだよ」


その日の朝食の席で、みんなが屋敷に来るのか、兄様から訪ねられた。


「今日は、外出の予定もない。だから、手が空いたら顔を出そうと思うのだが、問題はないか?」


「え!?」


「何か、問題でもあるのか?母上も、顔を出したと聞いたが?」


だから、来て欲しくないんだけど…。どうやって頼んでいいかも分からなかった事もあり、来ないで欲しい事をすっかり伝え忘れていた。それに、ここで断ると、母様はよくて兄様は駄目だと言っているようで、何とも断り辛い…。


「でも…兄様は忙しいでしょ…?無理しないでいいよ…」


「少しくらいなら問題はない。それとも、私が行っては駄目な理由でもあるのか?」


「ないよ!ないけど…」


「ないけど?」


「いえ…ぜひ、来てください…」


僕に言える言葉は、もうこれしか残ってなかった。この事を伝えたら、喜びそうな人物が頭を過ぎりながら朝食を終えた。


「それで、何が分からないんですか?」


「全部だよ」


屋敷に来たみんなを書庫に通した後、コンラッドから歴史の何が分からないのかを聞かれたので、正直に答えた。


「ぜんぶ…?」


「うん。全部」


年号を覚えたと思っても、他の年号と混ざって分からなくなるし、名前もやたら長かったり、紛らわしいかったりするので覚えられない。


「初代国王の名前くらい言えるでしょう…?」


「えっと…レイナルドだっけ?」


「レオ、レオナルドだ」


「そうですよ…。それは、3代目の名前です…」


「じゃあ…2代目は?」


「それは、レイナードだろ?」


ややこしい!ほとんど間違い探しみたいなものじゃないか!それに、ネアやコンラッドだけじゃなく、バルドにすら教えて貰うと、何とも言えない気持ちになる。


「何でこんなに似たような名前なの!?」


「それは、初代にあやかっての事でしょう」


「それでも、似すぎてるよ…」


「別に似てないと思うけどな?レオナルドは剣が得意だろ?それで、レイナードは槍、レイナルドは魔法。な?全然違うだろ?」


それは、バルドだけの覚え方だよ…。僕は、得意武器とかでは覚えられないし、逆に分かりづらいよ…。


「バルドの言う事は無視して、簡単な本から読んでみたらどうですか?昔読んでいた本を、カバンに入れて持って来ているので、今持って来ます」


「お!なら俺は、この前読んで面白かった、騎士が出て来る本を取ってくる!!」


「それは、取って来なくていい…」


僕の返事を聞く前に、バルドも本を取りに行ってしまった。でも、今の僕には騎士まで覚えている余裕はない…。


「リュカ。この本を借りても良いか?」


「良いよ!それ、面白かったでしょ!」


僕が進めた本の続編を片手に、ネアが尋ねて来たので、喜んで頷いた。


「思ったよりも面白かった」


「何の話ですか?」


戻って来たコンラッドが、不思議そうに僕達の会話に混ざって来た。


「この前、リュカから進められた本の話しだ。シリーズで出ているようだったから、続きを借りて良いか確認していた」


「私も、読んでみます。1巻は何処にありますか?」


ネアが持っていた本の表紙を見て、コンラッドが本の場所を聞いてきた。


「え!?コンラッドも、子供向けの本読むの!?」


僕は、コンラッドは難しい本ばかりを読んでいて、こういう本は読まないと勝手に思っていた。


「普段なら読みませんが、本の表紙が気になるので、読んで見ようかと思います」


「まあ、お前なら興味を持ちそうだなとは思ってはいたがな」


「何で?」


「お前の兄を題材にしたみたいだろ?」


表紙には、1人の少年と龍の絵が描かれていた。本の中身も、少年と龍の冒険物語なので、兄様みたいと言われれば、そうかもしれない。


「兄様は2体だけど、これには1体しか龍は出てこないよ?」


「まるっきり同じだと、何かあった時に後々不味い。だから、こういうのは少し内容を変えて、逃げ道を用意しておくものだ」


「うーん…」


今まで、何も考えないで読んでいたけど、そういう事を言われると、今度本を読む時に色々と考えちゃいそうだな…。


その後、バルドが持って来た本は丁重に断って、コンラッドから借りた本を読んでみたけど、やっぱり文字だけだと覚え辛い。絵とかあれば、覚えやすいのに…。


そうやってみんなと過ごしているうちに、兄様が顔を見せに来るかもしれない事を、僕はすっかり伝え忘れてしまっていた。


お読み下さりありがとうございます

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