ギャラリー
少しでも、勉強をしようとした時、母様が書庫にやって来て、みんなに挨拶を初めた。僕は、それが何か恥ずかしくて、必死で止めていたら、その様子をバルドが笑いながら見ているから、なお恥ずかしい!!
結局、その日は勉強どころではなくなり、勉強会は来週に持ち越しとなった。僕は、みんなを見送りながら、今度は乱入されないように、家族に頼んでおこうと、僕は心に決めた。
「それで、勉強するの忘れちゃったんだけど、来週、またコンラットに頼んで教えて貰うんだ」
「……のに」
「兄様?今何か言った?」
「何も…」
兄様が何か言ったような気がしたけれど、気の所為だったかな?
「それでね父様。来週も、みんなを呼んで良い?」
「……」
「父様?」
「…え!あ、ごめんね!?何の話しだったかな?」
「来週、またみんなを呼んで良いって」
「もちろんいいよ。好きに呼んでかまわない」
今日の父様、何か変だな?今もそうだけど、何処か上の空だし、落ち着きなく母様の方へと何度も視線を向けている。でも、母様は何時もと変わらないように見えるし、何なんだろう?
「リュカ。クラスメイトが来週来るのなら、明日は何か予定があるのか?」
「特に何もないけど?」
僕は来週じゃなくて、明日でも良いと言ったんだけど、コンラットが2日も続けて来るのは、さすがに迷惑だろうと遠慮したんだよね。バルドまでとは言わないけれど、そんなに遠慮しなくていいのに。
「なら、午後から時間を貰えるか?」
「いいけど?仕事は?」
「午前中までに片付けておく」
「分かった」
僕は、兄様の言葉に、すぐさま了承の返事を返した。
次の日の昼食を食べに食堂に行くと、兄様はまだ来ていなかった。その後、少し遅れて来た兄様が、席に付くなり僕に謝って来た。
「すまない。まだ少し仕事が残っているので、昼食後も少し待って貰ってもいいか?」
「うん。僕はいいけど、もし兄様が忙しいなら別の日でもいいよ?」
「あと少しだから問題ない」
食事が運ばれて来ると、兄様は慌てる様子もなく優美に食べているように見えた。なのに、皿の食事がみるみる減って行く様子に、僕は驚き見入ってしまった。
「私は先に戻る。リュカは、ゆっくり食べていてかまわない」
兄様は、足早に食堂を後にしたけれど、そんなに忙しい中、僕に何の用事だろう?僕は、食事をゆっくり食べながら、疑問に思うのだった。
コンコン
「兄様。入ってもいい?」
「入ってもかまわない」
ノックして入室の許可を貰うと、僕はゆっくりと扉を開ける。
兄様は、父様が使っている執務室に机を置いて仕事をしていた。何でも、資料とかも揃っているから、同じ場所で仕事をした方が効率がいいらしい。でも、僕は初めて入るので、辺りを伺うように部屋の中を見渡す。すると、父様の事務机の横に、この部屋には似合わないとまり木が置いてあるのに気が付いた。
何で、ここに置いてあるんだろう?
「待たせてしまってすまないな。今日は、リュカに召喚に必要な陣の作り方を教えようと思っていたんだ」
「?召喚関係は、まだやらないって学院でも言っていたよ?」
「学院の方針としては、そう決まっている。だが、父上とも相談をして、教えておいた方がいいだろうと話になった。でも、リュカが嫌だと言うなら、無理に強要する事はしない」
「僕は別にいいよ」
僕との会話する間も、ペンを止めずに仕事を続けている兄様が、わざわざ時間を作って教えると言っているのだから、僕にとって必要な事なんだろう。
「何か、僕に手伝える事ある?」
ただ待っているだけなのは暇なので、少しでも手伝える事があればと思って聞いてみる。
「そうだな…。なら、離れの保管庫に置いてある教本を、探して来て貰ってかまわないか?私が昔使っていた本が、そこにしまってあるはずだ」
「分かった。行って来るね」
「ありがとう。この仕事が終わったら私も…。いや!やはり、私も一緒に行く事にする!!」
「え!?でも、仕事は?」
「これは、後からでもいい。私は、同じ轍は二度と踏まない」
兄様は、急いで机の上の書類を片付け始めた。急にどうしたんだろう?
「では、保管庫に行くか」
「う、うん」
僕は、疑問に思いつつも、兄様と一緒に離れの屋敷にある保管庫へと向かった。その途中、兄様から学院での出来事などを聞かれた。
「それでね。僕にだけ、歴史の先生が厳しくて嫌いなの」
「何という教師なんだ?」
「リータス・ティーティアって言う先生」
「たしかに、私が学院に通っている時に、厳しいとは聞いた事がある。だが、生徒に公平で真面目な教師とも聞いた。だから、誰か1人に厳しくするなどなかったはずだが?」
でも…僕にだけ厳しいもん…。兄様から、先生をかばう発言をされると、何か面白くないな。兄様から視線を逸した時、ちょうど装飾がされた大きめな扉が見えた。
「兄様。ここが保管庫?」
普段は、離れに屋敷に来る事なんかないから、何処にどんな部屋があるか分からない。
「そ、そこは、保管庫じゃなくて…ギャラリーだな…」
「ギャラリーって事は、絵が飾ってあるんだよね?どんなのが飾ってあるの?」
「ここは…家族の肖像がとかを飾っているな…」
「僕、ちょっと見てくる!」
「ま、待て、リュカ!!」
後ろで兄様が止めていたけれど、すでに僕は扉を開けていた。扉を開けると、壁に家族の絵がずらりと飾られていた。入り口の方から、最近の絵が飾られているらしくて、奥に進むに連れて壁に飾られている肖像画がの絵が若くなって行く。まあ、父様だけ姿変わってないけど…。
「?兄様。何でここだけ絵がないの?」
1箇所だけ絵が飾られていない場所があったので、不思議に思って兄様に聞いてみた。両隣の絵を見ると、兄様の子供時代の絵が飾られていたと思うんだけど?
「そ、それは…」
「それは?」
「………。何時までもここにいては、保管庫で本を探す時間がなくなる。だから、私は先に行って本を探してくる」
兄様は、僕の質問には答えずに、足早にギャラリーから出て行ってしまった。僕は、逃さないとばかりに兄様の後をすぐに追い掛けた。
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