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初日


学院に到着した僕は、さっそく迷子になっていた。


最初、大勢の人が向かう方向に行けば、教室に着くと思って、僕も一緒に付いて行った。だけど途中から、何かおかしいな?とは思い初めていた。そうして、僕が着いた場所は、Fクラスなどがある別の棟だった。


到着してから、人が多い方に付いていくんじゃなくて、最初から人に聞けば良かったと後悔した。


僕は、場所を聞くために、辺りを見渡すと、誘導員の先生らしき人が、棟の入り口にいたのが見えたため、慌てて自分の教室の場所を尋ねてみた。


「Aクラスは、こことは反対方向にある建物です。なので、今来た道を戻って頂いて、そのまま進むと建物が見えて来ると思います。案内して差し上げたいのですが、持ち場を離れるわけにはいかないので…。途中、別の案内人も立っていると思いますので、分からない時は案内人に聞いて下さい」


その言葉を信じて戻ったけれど、誘導が終わったからなのか、生徒の姿や、案内人の姿もいなくなっていた。それでも、言われた通りに、今来た道の反対方向を進みながら、人の姿を探して歩いてみても、何だかさらに人の気配が減って行っているような気がする…。


ピィー


何処からか聞こえて来た鳥の声に、辺りを見渡せば、木の上に1羽の鷹が止まっているのが目に入った。胸に、契約紋が見えるから、誰かの召喚獣だろうか?なら、近くに契約者がいないだろうかと、再度見渡して見ても、人影を見つける事は出来なかった。


「ねぇ?君の契約者は、何処にいるの?」


僕が尋ねると、鷹は羽を広げて木から飛び立つと、小さく鳴きながら、僕の上空をゆっくりと旋回した。そうすると、まるで僕を案内するように、僕の前をゆっくり飛び始めた。


僕は、置いていかれないように、鷹の後を追いかけた。僕は、上ばかりを見ながら走っていたため、前をよく見ていなかった。だから、気付いた時には思いっきり人にぶつかって転んでしまっていた。


「ご、ごめんなさい!前をよく見てなくて!!」


「小さいのにぶつかられても、そんなに痛くもないから別にいい。それに、俺は子供相手に怒ったりしない」


地面から立ち上がりながら、謝った相手は、赤い髪に黒い目をした少年だった。僕が、ぶつかって転んだのに対して、少年は転ぶこと無く、そのままの姿勢で立っていた。


少年は、学院の制服を見にまとっていて、左手には少し大き目の腕輪を付けていた。


少年は、大人びたような顔をしているけれど、僕との身長差なんて10センチくらいしか違わない。それでも、ネクタイをしていないから、少年の学年が分からなかった。


学年が一目で分かるように、ネクタイで色分けをしていた。ちょうど、兄様と入れ違いだから、僕も兄様と同じ緑色のネクタイを付けている。だから、ネクタイを付けてないと、学年が分からないので、先輩かもしれないと思い、不満を隠して対応する。


「この学院の先輩ですか?ぶつかっておいて申し訳ないのですが、僕、今日入学したてで道が分からなくて、教室まで案内して貰えませんか?」


「子供扱いが不満なら、不満だと言えばいいだろう。それに、学院に通うのは今日からだから、俺は先輩じゃない」


人の事を子供扱いしておいて、僕と同じ歳なんじゃないか!少し、身長が高いからって、僕を子供扱いするなんて!!それに、ちゃんとネクタイしておいてよ!!


「こんな所に1人でいるなら、君も迷子なんでしょ!?君だって子供じゃないか!!」


「子供じゃないんだから、迷子のわけないだろ。俺は、人を探しに来ただけだ」


図星を突かれているはずなのに、彼には全く動じる様子がない。


「じゃあ誰を探してるの!?」


「お前。レグリウス家の次男って、お前の事だろう?目立つ銀髪が、クラスの中に見えなかったから、探していたんだ」


「僕に、何かようなの…?」


僕を探していたと言われて、彼に対して少し警戒心がわく。


「お前というより、父親や兄の方だな。その2人と関係を持ちたいが、何せ警戒心が強くて近付けそうにない。だけど、お前なら警戒心が薄そうで、取り入りやすいかと思ったんだ」


それは…本人を目の前にして言うことではないと思うんだけど…。それにしても、クラスにいなかったって言ってるからには…。


「もしかして、君って…Aクラスなの…?」


「そうだが?それと、君ではなく、俺の名前はネアだ。貴族じゃないから家名は持っていない。これから、同じクラスとしてよろしく」


「よ、よろしく…」


貴族相手にも、敬語を使わず平然と話すネアには戸惑いしかなかった。これからの学院生活でも、問題を起こしそうな予感しかない。だから、彼とはよろしくしたくない…。


キーンコーンカーンコーン


「予鈴がなっているな。遅刻したくなければ、俺に付いて来い」


僕も、初日から遅刻はしたくはなかったので、ネアの後ろを追い掛けながら、僕は教室を目指した。


ここまで案内してくれた鷹は、僕が気付いた時には、既に目の前からいなくなっていた。


お読み下さりありがとうございます

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