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卒業式の裏側(オルフェ視点)


「はぁ…」


学院からの言われて、原稿を指導室で書き直した私は、講堂に向かう廊下で、何度目か分からないため息を付いていた。何故、面倒なだけの代表挨拶なんて、しなければならないのか…。それもこれも、隣にいるこの男のせいだ…。


「オルフェが承諾してくれて、本当に良かったぜ!周りから、頼まれて承諾はしたけど、俺にはこういうの向いて無いからな!」


「……」


レオンは、指導室を出たあたりから、ずっと私に付いて来ながら、隣で煩く喚いていた。


「オルフェ!俺の分まで、よろしくたの…ぐふっ」


さすがに苛ついて来たので、レオンの腹を一発殴って黙らせる。


「殴る事ないだろ…」


「殴りたくなるような事を言うからだ…。それに、顔じゃなくて、目立たない腹にしておいただろう…」


「でも、お前からやるって、言っただろう?」


たしかに、私からやるとは言った。だが、それは、リュカが楽しみだと言うから引き受けただけで、やりたかったわけじゃない…。


「お前が、私がやると、陛下に言ったせいだろう…」


「い、いや…俺はただ…オルフェにやって欲しいけど、どうしたらいいか相談しただけで…オルフェがやるとは、言ってないぞ…」


「……」


「わ、悪かったから、そんなに睨むなよ!!」


毎度の事ながら、レオンに関わると、本当にろくな事にならない…。


朝、別れたばかりだというのに、屋敷でリュカと一緒に過ごした時間が、懐かしく感じる…。


最近では、リュカとも普通に話せるようになった。それに、契約紋があるから、リュカの感情の一部が伝わってくる事がある。そのため、あまり動かない私の表情さえも、リュカに連られて、自然と動くほどだ。


あの騒がしい2体からも、感情が伝わってくる事があるが、自分自身で感じる、呆れなどの感情の方が強く、とても笑う気にはなれない…。


「それより、オルフェが、学院から原稿を書き換えろ、なんて言われるの初めてじゃないか?俺の場合は、何時も学院から言われてるけど?」


「普段は、無難にまとめているからな。今回、どうせやるなら、少し警告を含んでおきたかったんだ…」


「警告?」


「今年は、リュカが入学するからな…」


「ああ!!でも、普通に言えばいいんじゃないのか?オルフェを真似して、右手に手袋付ける奴が出るほど、好かれてるだろ?」


「気色悪い事を言うな…。それに、あいつ等は、そんな理由でやっているわけではないぞ…」


「そうなのか?てっきり好かれ…ッテ!」


「だから…気色悪い事を言うな…」


「わ、分かった!だから!頭から手を離せ!!」


私が、締め付けていた頭から手を離すと、レオンは直ぐに、私から距離を取った。


「ふぅー。お前、俺が馬鹿になったらどうするんだ!?」


「それこそ今更だろう…。まったく、お前みたいな馬鹿がいるから、分かりやすく殺すぞと警告文を入れたんだ」


「卒業式で殺害予告するなよ!!お前さぁ、冷静な振りして、感情的になり過ぎる所あるよな…。それで、結局、無難な挨拶にしたのか?」


「最初以外はな…」


少なくとも、警告だけはしておきたいからな…。


「それにしても…お前は、私の右手の件を聞かないんだな…」


「?それ、聞かない方がいいだろ?そもそも、オルフェが、盗賊相手に怪我するとかあり得ないから、俺だって訳ありな事くらいは分かるぞ?」


それが、分からない馬鹿な者が多いけどな…。


周りには、盗賊と遭遇した際に、右手に怪我をして、跡が残ったから手袋をしていると言ってはいた。しかし、それでも煩く聞いて来る者や、モテそうなんて、馬鹿な理由で真似する馬鹿も増えていた。


それを考えるならば、同じ馬鹿でもレオンの方が、まだましだ…。しかし、常日頃から、その感を活用してくれるなら、私の負担も減るというのに…。


「なぁ…人多過ぎじゃないか…?」


講堂前に着くと、大勢の人だかりが出来ていた。もう少しで卒業式なのだから、人が少なくなっていてもおかしくはない。だが、その原因の1つになっている存在に、心当たりがあるせいか、レオンみたいに疑問に思う事はなかった。


私には、リュカが人混みにいても、いる場所が分かるから問題はないが、そこにレオンを連れて行くのは遠慮したい。


「レオン…卒業式が始まるまででいいから、家族を探すのを手伝ってくれないか?私は、向こうを探す、お前には、あっちを頼みたい」


「いいぜ!あっちだな!」


家族がいる方向と、反対の方を示せば、そこに素直に走って行くのだから、少しは人を疑えと言いたくなる…。


あれで、王位なんて継いだら、下の者がどれだけ苦労するか予想が付く。そのため、卒業を機に、レオンとの関わりをなくしたいが、無理だろうな…。屋敷に、レオンが突撃して来る未来しか見えない…。


「はぁ…」


私は、家族のいる場所に向かいながら、これからの事を思い、ため息を付くのだった…。


お読み下さりありがとうございます

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