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魔力交互


裏庭に付いた僕は、疑問に思った事を、兄様に聞いてみた。


「兄様?召喚ってどうやるの?」


「ん?卵の時に、自分の魔力を注ぐ事によって、召喚獣との間に、繋がりのような物が出来るんだ。だから、陣で道を作りながら、魔力の繋がりを辿って呼び出すんだが…」


兄様が、何処か困ったかのように、僅かに目尻を下げるが、僕も、魔力の繋がりと言われても、よく分からない…。そもそも、僕の場合、何で兄様に紋が出たかも分かってないしね…。


「魔力の繋がりって、どんな感じなの?」


「うーん…。自分の魔力を持った者が、もう1人がいて、何処にいるか察知出来る…といえばいいのか?」


「よく分かんない…」


「私は、少しだけだが、リュカとの繋がりを感じる。だから、近くにいれば、見えていなくても、だいたいリュカが何処にいるか分かるな」


「えー!兄様だけズルイ!!」


「ズルイと、言われてもな…」


兄様は、再び、困ったような顔をしているが、ズルイものはズルイ…。


「……あ、陣の作り方は分かるか?」


「まだ習ってない……」


「ああ…4学年の授業でやる事だったな…」


兄様が、話しを変えるように、僕に陣の事を聞いて来た。けれど、兄様に聞かれて、まだ習っていない事に気が付いた…。


僕達の間に、しばし沈黙が流れる。


色々と心配しながらも、意気揚々と裏庭に来てみれば、僕達に出来る事は、ほとんどなかった…。


兄様は、眉間にシワを寄せながら、何かを考えているようだった。何でも、眉間にシワが寄るのは兄様の癖らしくて、なかなか治らないと、王都へ帰る馬車の中で教えて貰った。


「……魔力交互をすれば、魔力の繋がりだけでも、感じられるようになるか?」


「魔力交互?」


「魔力を上手く使えない者に、魔力の使い方を教える時に使うんだ。だが、他人の魔力だと、拒否反応が出る場合があるから、普段は行われない」


「?前、兄様が僕にやってくれたのは?」


「あれは、魔力譲渡だな。他人の魔力を渡す事では同じだが、一時的な物で、さほど体調に変化が出る事はない。だが、魔力交互は、互いの魔力を循環させる。だから、魔力を渡す時間が長く、量も多くなる。だから、体調に異変が出やすく、命に関わる事がある」


「う、うん」


「だから、魔力制御や操作に優れている者しか、行う事は出来ない。だが、この前リュカの魔力に触れた時、私の魔力とさほど変わらないように感じた。それに、父上程ではないが、私も、魔力制御には自信はあるが…リュカ…どうする…?」


途中からよく分かんなくなったけど、魔力交互をすれば、繋がりが分かるようになるんだよね?


「じゃあ!兄様お願い!!」


「いいのか…?それに、実際に分かるかどうかも確かではないぞ…?」


「兄様なら、大丈夫だと思って!それに、やってみないと分からないなら、やってみた方が速いし!!」


僕の中には、兄様がやるなら大丈夫という、漠然とした信頼があった。だから、兄様に任せる事に、少しの不安も感じなかった。


兄様は、僕の言葉に小さく頷いた。そして、集中出来る方が良いと兄様が言うので、僕達は、裏庭に置いてある椅子まで移動する事にした。


兄様は、僕の両手を取ると、集中するように目を閉じる。すると、僕の中に、何か流れ混んでくるような感覚と一緒に、何かが抜けていく感覚があった。


何となくこれが、魔力の流れ何だと思った。僕が、普段使っている魔力の流れと違って、ちゃんと無駄なく制御されているのが僕にも分かる。それに、兄様から流れてくる魔力は、何だか暖かくて気持ちいい。


だんだんと体が暖かくなって来ると、しだいに眠くなって来てしまっていた。最初は、寝ないように頑張っていたけれど、自分でも気が付かないうちに、眠ってしまったようだった。その間に、頭を撫でられる感触や、何か夢を見ていた気がしたけれど、起きた時にはすべて忘れてしまっていた。


「リュカ。もうすぐ昼だぞ。いったん起きろ」


「う~ん…。!あれ!寝てた!?」


「寝てた。慣れない事をしたから疲れたんだろう。今日は、これぐらいにして、午後からはゆっくり休め」


「兄様は、この後どうするの?」


「書庫にでも、行こうかと思っている」


「なら、僕も行く!!」


「リュカは、休んだ方が…」


「行く!!」


「はぁ…分かった…。好きにしろ…。それに、私が側にいた方がいいか…」


「うん!」


昼食を食べた僕達は、夕食まで、一緒に書庫で本を読んだりしながら過ごした。


「今日は、どうだったのかな?」


父様は、夕食の席で僕達に、今日の事に付いて聞いて来た。


「陣の作り方が分からないから、魔力交互だけやった!」


「魔力交互…。オルフェなら大丈夫だとは思うけれど…体調に変化はないかい?」


「大丈夫!ちょっと眠くなっただけ!」


「それは…大丈夫なのか?」


「大丈夫!!」


「その後、しばらく様子を見ていましたが、魔力の流れをみても異常が見られなかったので、大丈夫だとは思います。ですが、明日も学院が休みなので、リュカの様子を見ているつもりです」


「頼んだよ。明日も、家にはいられそうにないんだ…。夕食までには、必ず戻って来るから…」


次の日も、父様はしぶしぶ仕事へと出かけて行った。


お読み下さりありがとうございます

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