アジトへ(オルフェ視点)
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「やっと見つけたぜ!まったく手間かけさせやがって!!」
「…誰だ」
私を取り囲む数人の男達に誰かと聞けば、下品な笑みを浮かべながら答えた。
「何、俺達はちょっとばかし、お前らから金を恵んで欲しいだけだ。宿にいた2人は、先にご招待している。だからお前も大人しく…ギャャー」
「煩い…少し焼いただけだろう…」
少し焼いただけで、煩く騒ぎ出したが、まだ殺すわけないだろう…。2人の居場所を吐くまではな…。
学院で行った魔物討伐の合宿の際に、盗賊には遭遇した事があるので、倒す分には問題なかった。
「アジトに!や、山にある山小屋のアジトにいる!だ、だから殺さないでくれ!!」
「素直に案内するなら、私は殺さないでやろう…」
なかなか吐かない事もあって、何人か殺してしまった。倒す事は問題が無くても、聞き出す事は初めてだったので、加減が少し分からなかったが、2人の無事と居場所を知る事が出来たので問題ないだろう。
盗賊は、見つけしたい討伐が推奨されている。見逃せば、そこを通る商人や民間人に被害が出るからだ。その際、出来れば生け捕りにするようにとはなっているが、あくまで出来ればと言うだけで殺してしまっても問題はない。盗賊へと身を落とした時点で、人としての命の保証はなくなる。
私も、人を殺すのは初めてではないうえに、私の家族に手を出してのだから生かしておく理由がない…。
「他はいらないな…」
アジトへと案内する1人を残して、他の連中は焼いて始末する。煩い声が止んだ後、あたりには焦げ臭い匂いだけが残っていた。
しかし、父上はまだ戻って来ないのか?父上が戻って来ていたならば、私が始末する前に、全員この世から消えているはずだ。しかも、この騒ぎでも戻っていないのなら、この近くもいないだろう。ならば、今起こっている事態にも気付いていない可能性が…。
「アクア、イグニス」
2体を目の前に呼びたせば、騒ぎで集まっていた町の住民達がさらに煩く騒ぎ出す。
「アクアは俺と来い、イグニスはここで待機。声で異常事態を知らせて、父上が戻って来たら私達の所まで来い!」
残党の襟首を掴んで、アクアに乗り飛立てば、町中に響くようなイグニスの咆哮が聞こえた。これで、父上にも異常事態が起こった事が伝わるだろう。
私はアクアと共に、2人の元へと急ぐのであった。
案内に従いしばらく飛んでいると、山の中に目指していた山小屋が見えた。その瞬間、私は掴んでいた残党の襟首を離した。男は悲鳴を上げながら、魔物がはびこる森へとそのまま落ちていった。運が良ければ、この高さから落ちても死ぬ事はないだろう。約束通り、殺さないでおいてやる。私は、な…。
煩い声はしだいに小さくなっていき、最後には聞こえなくなったが、私はそんな事は気にせずに、山小屋の中の気配を探る。気配がない位置を着地地点に決めると、そのまま山小屋の屋根を破壊して中に入った。
山小屋に入ると、煩いだけの連中がまだ大勢いる事に、不快感を覚えながら母とリュカを探す。屋根を破壊した影響であたりに土煙のような物が舞っており、2人の姿がなかなか見えない。屋根をぶち抜いたのは、失敗だったか…。
視界を妨げていた土煙がようやく収まって来た頃、2人が縛られている姿が見えた。そして、その横に男が1人立っているのが視界に入った瞬間、その男を殴り飛ばしていた。
殴られた男は、そのまま壁まで飛んで行ってから止まった。殴った時に、肋骨が折れた感触がしたが、まだ死んではいないだろう。母やリュカがいる前で、人を殺すわけにはいかないと思い、理性を総動員しながら我慢していた。
「アクア、制圧しろ。殺すなよ…」
アクアに残りの連中の相手をさせて、私は2人の元へと向かった。腕を縛っていた縄を魔法で焼き切り、2人の首を見ると、魔力封じの首輪がはめられているのが見えた。それを見て、怒りで理性が飛びそうにもなったが、なんとか抑え込み首輪も魔法で焼き切る。
「…大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。私よりも、リュカが…」
リュカを見れば、少し辛そうにしていた。魔力封じは、魔力を封じるのと一緒に、相手の魔力を奪う性質がある。
私のように、生まれ付き魔力が多いならいいが、基本、リュカの様に小さい子供は、体に見合った魔力しか持っていない。自分で加減して使う分にはそれでもいいが、無理やり搾取されると余分に負荷がかかるから、大人でも辛い時がある。なので、小さなリュカには、もっと辛いだろう…。
私は、そっとリュカの手を取った。
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