新年祭(オルフェ視点)
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一晩立った今でも、未だにかける言葉が見つからない…。朝食の席でも、普通にしているリュカの様子が気掛かりだった。
その日も、書庫でリュカと一緒に過ごしているがまったく会話がない…。こんな時は、レオンの無駄に動く口が羨ましくなる…。
「はぁ…」
横でため息を付くリュカを見て、奴の相談に乗ってみろと言う言葉を思い出す。
「…どうした?」
「えっと、明日からの授業が、嫌だなって…」
相談に乗れと言われた事に従い声をかけたが、今まで人の相談に乗った事がない事を思い出して、冷や汗が出そうになった。もし、昨日の件を相談されたらとも思ったが、別の案件でホッとする。
「…何をやるんだ?」
「ダンスや、貴族の家名覚えたり…」
ダンスなんて、適当に動いていればそれらしく見える。それに、私達がそばにいるのだから、家名なんか覚える必要もない。
「嫌な貴族だけ覚えていればいい」
相手から何か不快な事をされた時、私達が側にいなければ名前も分からない。そうすると、相手に報復が出来ないから、そいつの名前だけ覚えていればいい…。まあ、覚えていなくても、父上と協力して必ず見つけ出すがな…。
次の日、頼んでいた本が届いたと屋敷に連絡が来ていた。ちょうど学院も休みだった事もあり、本屋に本を取りに行った。
「依頼されていた本が届きましたので、ご確認をお願い致します」
届いた本を確認すれば、全て間違いはなかったので馬車へと自分で本を運ぶ。本来なら、使用人にやらせるのだが、今は使用人の数が減っているので、出来ることは自分でやっている。今週には新年祭の準備があるため、本を読んでいる暇はないだろうが、何時でも読めるようにしてやりたい。
その後の新年祭までの準備は、私には慣れたものだったので苦もなく終わったが、リュカは疲労困憊の様子で、次の日の新年祭を迎えた。しかし、家族で衣装を合わせたのだが、父上とではなくリュカと合わせたかった…。
馬車での移動中、リュカは緊張をしている様子だったが、城に付けば楽しそうにしていたので大丈夫そうだ。会場に入ると、リュカはあたりを楽しそうに見渡していた。だが、私は貴族共の視線が煩わしい…。こちらに話しかけるタイミミングを伺っているのだろうが、相手に不快しか感じさせていない事に気付くべきだ。
「オルフェ!」
名前を呼ばれ振り向けば、レオンがこちらに来ているのが見えた。その後も、リュカに馴れ馴れしく話しかけているが、余計な事しか言わないコイツをリュカに近付けたくはない。案の定、奴は余計な事を言おうとした。
「オルフェが言ってた通りかw…」
「…余計な事を言うな」
奴を黙らせるために、頭を締め上げればうるさく喚いていた。だが、コイツが悪い…。可愛いと思っているなど、本人を目の前にして知られたくない!
「オルフェ!痛い!今回は何時もより痛い!!」
気恥ずかしさもあったせいか、何時もより力が強かったようだが、私は悪くない…。余計な事しか言わないコイツが悪い…。
「お前!俺に容赦なさすぎだからな!!」
「…普段からの行いが悪い」
「俺が何したよ!?」
「…頼まれごとを安請け合いして、私に丸投げしては去っていくのは誰だ?テスト前に勉強を教えろと泣きついて、私の時間を邪魔するのは?お前が起こした問題の尻拭いをしているのは?」
「え、えーと…オルフェ…かな?」
視線を泳がせながら話す奴に、若干の殺意がわく。周りの奴らもコイツに頼めば、私の所に回って行くのを知っていて頼むのだから始末に負えない。
「ま、まあ、落ち着けよ、な?それより…ん?オルフェ?お前の弟は?」
後ろを振り返れば、リュカがいなくなっていた。今は、コイツにかまっている暇はない。王妃と一緒に来客の対応をしている母のもとへと向かった。
「母上、リュカを知りませんか?」
「リュカなら、あっちでお菓子を…っていない!?」
「探してきます」
「俺も手伝うぜ!とりあえずあっち探してくる!!」
慌てる母に、探して来る事を伝えて、料理が置いてある方へと行こうとした時、レオンが真逆の方へと走って行ったので、そのまま帰って来なければいい…。
テーブルには、多くのお菓子が並んでいるが、リュカの好きなチョコのお菓子が置いていない。なので、そっちに行ったのだろうと当たりをつけてその場へと向かった。
そこにいるだろうとは思っていたが、確実ではなかったのでリュカの姿が見えた時は安心した。リュカの所に行こうとした時、誰かとぶつかりそうになっているのが見えて、慌ててリュカの体を私の方へと引く。
リュカの顔を見れば、今にも泣きそうな顔になっていた。しかし、今のは明らかにワザとだ。リュカに見られないように相手を睨めば、青い顔をしながら相手は逃げて行った。後で、覚えていろ…。
リュカを連れて父上達の所に戻ろうとすれば、タイミング悪く音楽が鳴り出した。しばらくは、ここから動けないと思いながらリュカの様子を伺う。リュカは、ホールで踊る貴族達をじっと見ていた。そういえば、授業でダンスも頑張っていると言っていたな…。
「踊りたいのか?」
そう聞けば、リュカは躊躇う素振りを見せるが、視線は、ホールの方に向いているので、踊りたいのだろう。
私は、リュカの手を引いて、皆が踊っているホールへと向かう。さすがに、女性パートは踊った事はないが、見馴れてはいるので踊れる事は出来るだろうと一緒に踊る。
今まで誰かと踊りたいなどと、思った事はなかったが、リュカとなら踊るのも悪くない。
踊り終わった後、リュカが何処か喉が乾いた様子だったので、飲み物を取りに側を離れた。側を離れるのは心配だったが、ここに居るように言って、直ぐに戻って来れば大丈夫だろうと思っていた。だが、思いのほか予定よりも遅くなってしまった…。
リュカがいる場所に戻ると、既に両親もリュカを見つけていたようで、一緒に私が戻って来るのを待っていた。その後、飲み物を飲み終えた私達は、早々に城を後にした。
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