子供の頃(オルフェ視点)
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「お前また眉間にシワが寄ってるぞ」
学院の教室で1人思考を巡らせていると、隣でうるさく騒ぐ奴が現れた。そいつが現れたせいで、思考を乱され私は、若干の苛立ちを感じながら目を向ける。
「レオン、煩いぞ」
「眉間にシワが寄ってたから教えてやったんだろ?考え混む時に、眉間にシワを寄せるその癖、直した方がいいと思うぜ?」
簡単に言うが、そんな簡単に癖を治せるなら苦労はない。それが、無意識にやっている事ならなおさらだ。
「…余計なお世話だ」
「何か悩みがあるなら聞くぞ!」
こいつに相談するのは嫌だが、この前、奴の言った事が役にたった事もあり、試しに相談して見る事にした。
「…リュカとの距離感が、分からないんだ…」
「…距離感?」
「この前の休みの日に、一緒に書庫で過ごしたんだが…次の日には、私を避ける態度に戻っていたんだ…」
「状況がわからねぇ…。え?何?仲悪かったの?よく俺に、弟の事しゃべってなかったか?」
間抜け面をさらしながら、私の話を理解していない様子に、やはり相談したのは間違っていたかとも思ったが、説明が足りなかったのかと思い直し、説明を続ける。
「普段、怖がらせないように近づかないが、この前は、私の後を可愛らしく付いて来てくれたんだ…。なのに…」
「その眉間のシワのせいじゃね?」
レオンの一言に殺意を覚えて、奴の事を睨みつける。
「じゃ、じゃあ!その目つきのせいだ!?と、とにかく!相手が悩んでいるような時、相談に乗るとかすればいいと思うぜ!じゃあな!!」
奴は言いたい事だけ言うと、逃げるように私の前からいなくなった。
「相談…」
私が子供の頃から、周りから愛想がないと言われていた。何かを褒めらたとしても、いっさい表情を変える事がなかったからだ。だが、周りが普通に出来ている事を褒められたとしても、何を褒められているのかが分からなかった。それに、両親は私の感情の機敏を理解してくれていたので、表情を動かさなくても、何も困りはしなかった。
父上からは、子供らしく遊んでいいと言われた事があるが、子供らしさというものが、どういうものなのか分からなかった。周りに大人しかいなかった事も、要因の一つにはなっていたのだろう。
学院に入ってから、周りの同学年を見て、少しはどういったものか分かったが、私には無理そうだったので早々に諦めた。誰かと一緒にいるよりも、1人で静かに本を読んでいた方が、有意義な時間だったのもある。
そんな私の時間を、たびたび邪魔をしてくる者がいた。
「また、本読んでいるのか?そんなの読んでないで、俺と模擬戦しようぜ!」
「…興味ない。他の奴を探せ」
「俺より弱い奴の相手なんかしてもつまんないだろ!だから、一緒に模擬戦やるぞ!!」
何が、だからなのか理解できない。そもそも、私は了承などしていない。あまりにも煩いから一度、模擬戦をしたら、付きまとうようになった。王族ということもあり、無下には出来ないと相手をしているが、煩わしくてしかたがない。父上からは、無視しても構わないと言われてはいるが、そういうわけにもいかないだろう。
その後、屋敷にやって来た奴を盛大に叩きのめした事があった。その時は、さすがに叱られるかとも思ったが、何も叱られる事はなかった。原因となったギャラリーの絵を、すぐに使用人達に片付けさせた事で、逆に陛下から叱られたと奴に言われたが、そんな事私には関係ない。それ以来、奴に対して容赦しなくなったが、それはまだ先での出来事で、この時はまだ大人しく奴に従っていた。
「ほら、行くぞ!!」
ため息を付きたいのを我慢しながら、奴の後を付いて行く。こんな奴に好かれるより、小動物達に好かれたい。
私は、昔から小動物などの可愛い生き物が好きだった。だが、父上譲りの魔力量のおかげで、逃げられてばかりいた。そのため、父上が私のために放ってくれた裏庭の小動物とも、未だに近付けないままだ。だから、弟が私に見せる反応も当然だったのだろう。
「ウワーン!」
「リュカ、オルフェはお兄ちゃんだから泣かなくても大丈夫よ」
初めて私が弟と合った時、近づいただけで盛大に泣かれた。父上は、私と違って魔力を制御出来ているためか、近づいても泣かれる事はなかったが、私が近づくともう駄目だった。私も、弟を泣かせたくはなかったので、起きている間は近づかないようにしていた。唯一、私がリュカに近づけるのは、寝ている間だけだった。
寝ているリュカは、何処も小さくて可愛らしかった。頭を撫でている時に一度、寝ぼけて私に笑いかけてくれた時は、本当に嬉しかった。動き回るようになると、あちこちで悪戯をしていたが、父上が言っていた子供らしさとはこういうものかと、何処か楽しんで見ていた。
私は、怯えて泣かれないように、魔力をより制御出来るように努力した。部屋に飾っていた小物も、兄として格好がつかないかと思ってはいたので、小物が全滅したのを期に部屋に飾るのも止めた。しかし、私に対するリュカの態度は、成長しても変わる事はなかった。
昔と違って、魔力もより制御出来るようになったはずなのに、何故、怯えたような態度をするのか理由が分からない。そんなリュカに、私も何を話したらいいのか分からず、黙って考え混んでしまえば、ますます怯えられ、避けられるようになっていった。
そんな日々が続いて、リュカの召喚の儀を行う日がやって来た。
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