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うさぎの人形

アルファポリスで先行投稿中


「他に何処か、行きたい所はありますか?」


しばらく笑い終わった後、フェリコ先生は、僕に行きたい場所を聞いてきた。


「僕、父様や母様に何かお土産を買って行きたいです!後、兄様にも…」


「それは、皆様とても喜びますね」


「……兄様も?」


「もちろんです。オルフェ様も喜んで下さいますよ」


兄様と仲良くする方法が分からないから、ひとまずは贈り物でもしてみようと思ったけど、兄様が、僕からの贈り物を受け取ってくれるか分からなくて不安になる。でも、兄様の家庭教師も務めた事もあるフェリコ先生の言葉を信じてみよう。


「兄様は、どんな物が好きか分かりますか?」


「好きな物ですか?本人に直接聞いた事はないですが、派手な物とかは好みませんね。普段からシンプルな装飾品を付けている事が多いです。後は、可愛い小物類とかですかね?」


「え…?可愛い…小物類…?」


「ええ、部屋が半壊した後からは、部屋に飾らなくなりましたけど、昔は、部屋たくさんにありました」


それは…子供の頃の話だよね?今の兄様が、それをもらって喜ぶとは、とても思えないんだけど……。まずは、店を回りながら、探してみようかな。


その後、父様達に渡すお土産は、あまり悩まずにすぐに決まった。


文具店に入って、店員の人に仕事で使えるオススメを聞いたら、奥の方から一つの商品を持ってやって来た。


「先週、発売したばかりの、ペレニアルペンは如何ですか?羽ペンのように、インクを付けなくても文字が書ける優れ物です。整備などの手間や、少々値段は張りますが、長く使えるので買っておいて損はない品ですよ。何せペレニアルには、昔の言葉で永続と言う意味もあるそうです」


これって、名前は違うけど万年筆じゃないの?店員が持ってきた物は、見た目が万年筆そのものだったけど、使い方を聞いても違いはないようだ。それにしても、この世界にも万年筆ってあったんだ。


その場で、父様へのお土産にするのを決めて、会計を済ませる。言っていた通り、少し高かったけど袋の中身はさほど減ってなかった。まあ、父様のお金で、父様へのお土産を買うのも何か変な話だけど…。


母様には、テーブルランプを買った。三日月の先に星を型どったランプが下がっていて、とても綺麗だった。母様のお土産というより、店のショーウィンドウに飾ったのを見て、僕が欲しくなったから買ったのは内緒だ…。


その後も、色々な店を何件か回ってみたが、兄様に何を買って行くかだけが決まらない…。父様と同じ万年筆にしようかとも思ったけど、何かしっくり来ない…。


何かないかと辺りを見渡しながら歩いていると、露店の商品の中に、光を反射してキラリと光る物が見えた。気になって、近くに行ってみると、小さなうさぎの人形の目に使われている赤い宝石が、光に反射して光っていた。


父様や兄様と同じ目だなと思ってしばらく見ていると、僕に気付いた店主から声をかけられた。


「お!それが気に入ったのか?安くしとくぜ!?」


「どのくらい?」


「そうだな…7000ルピアでどうだ!」


値段を聞くと、店主は少し考えてから答えた。それが、高いのかは分からないが、何故かこの人形が気になる。


「それは、少し高すぎるのではないですか?私達の服を見て、吹っ掛けているとしか思いませんよ?」


うろたえている店主とフェリコ先生との二人の間で、いつの間にか商談が始まっていて、5500ルピアの値段で方が付いていた。


店主から商品を受け取り持ってみると、思ったよりも柔らかく肌触りがいい。僕が持って歩いても、邪魔にはならない大きさなので、屋敷に届けて貰うのではなく、そのまま持って帰る事にした。


「もしかして…余計なお世話でしたか?」


うさぎの人形を腕に抱え、店から少し離れた場所まで歩いた時に、フェリコ先生から尋ねられた。


「ううん。父様や兄様の瞳に似て綺麗だなって思って見てたから、目に付いてるの宝石かな?」


「それは、クズ石ですね」


「宝石じゃないの?」


「赤い色は、小さい物しか取れないので、装飾品などには不向きなんです。そのため、貴族の間ではクズ石と呼ばれて、見向きもされません。なので、布代などを考えても、あの値段は高すぎます」


こんなに綺麗なのに、宝石じゃないのか。うさぎの目は、今も太陽の光を浴びながらキラキラと輝いていた。何故か、それが兄様の目と重なって見えた。


買ったのは偶然だったけど、これ兄様のお土産にどうかな?可愛い小物が好きって言ってたし、受け取ってくれないかな?


ピィーーッ!!


突然聞こえた甲高い鳴き声に辺りを見渡すと、屋根の上にとまっている一羽の鷹の顔だけが見えた。


「鷹だ!」


たまに、庭を飛んでいる所を見た事はあるけど、街の中にもいるんだな。そんな僕の横で、フェリコ先生が辺りを見渡しているのに気が付いた。


「フェリコ先生?」


僕が声をかけると、何処か慌てている様子だった。


「い、いえ、何でもありません。リュカ様、あの店に入って少し休憩にしませんか?」


フェリコ先生は、一つの店を指差しながら僕の手を取って、早足で歩き出した。


「は、はい?」


「手は握って、絶対に離れないようにして下さいね」


フェリコ先生はそう言うと、少し足速に歩を進める。街の人達も、何故かさっきと違って、遠巻きになったような気がする。僕は、フェリコ先生と手を握りながら店の扉をくぐった。


お読み下さりありがとうございます

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