課外授業
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「今日は、気分を変えて課外授業に行きましょう」
「課外…授業?」
朝食後、珍しく何時もの時間よりも、少し遅れてやって来たフェリコ先生が、僕に課外授業の提案をしてきた。
「はい。今日は、少し趣向を変えて、街に行って見ようと思います」
「街に!?」
屋敷の外に出かける際は、何時も馬車を使って移動をしていた。行く先も貴族街にある店や劇場なので、外を歩いている人も、お使いを頼まれている使用人くらいしか見た事がない。たまに、家族で王都の外へ出かける事はあるものの、馬車から降りる事はなく、ただ通り過ぎて行くだけの僕には、街とは未知の場所だった。なので、冒険心にも似た気持ちで、僕はワクワクしながら聞いていた。
「はい。リュカ様はまだ、自分でお金を使った事がないと思うので、学院に行く前にお金の使い方を知っておいた方がいいかと思います。それと、アルノルド様には、ちゃんと事前に許可は取ってあるので大丈夫ですよ」
たしかに、今後の生活していくためにも、お金の使い方は知っておいて損はないと思う。それに、街に遊びに行くのを僕が断るわけがない。街の様子を想像しつつ、速く行きたい僕は、フェリコ先生を急かすように扉へと引っ張る。
「フェリコ先生、速く!!」
「リュカ様、落ち着いて下さい。まずは、お金の説明が先です」
僕の興奮をよそに、カバンの中から袋を取り出すと、その中から一枚一枚硬貨を机に並べると、フェリコ先生は説明を始めた。
「いいですか?ここに並べてある硬貨の種類によって、それぞれ価値が変わっていきます」
我儘を言うと、街に連れて行ってもらえなくなると嫌なので、並べてある硬貨を見ながら大人しくフェリコ先生の説明を聞く事にした。
お金の単位をルピアと呼び、一桁、価値が変わる事に硬化の種類も変わっていく。
10 ルピア 鉄硬貨1枚
100 ルピア 銅硬貨1枚
1000 ルピア 銀硬貨1枚
10000 ルピア 金硬貨1枚
100000 ルピア 大金貨1枚
1000000 ルピア 白金貨1枚
つまり、150ルピアなら銅硬貨1枚に、鉄硬貨5枚を使えばいい事になる。説明を聞く分には、そこまで難しい仕組みでないため、硬貨の価値と種類さえ覚えれば、お金の使い方は大丈夫そうだ。それにしても、ここには鉄硬貨から大金貨なで並んでいるけれど、袋の中にはほとんど金貨や大金貨しか見えない。
「フェリコ先生は、何時もこんな大金もってるの?」
「……いえ。ここに来る前に、アルノルド様から渡されました…。街に行くので、そこまで必要ないと言ったのですが…これでも量を減らしたんですよ……」
なんでも最初、袋の中には白金貨も入っていたそうだ。フェリコ先生が、これから行くのは貴族街ではなく街だから、使う場所がないと返そうとしたが、父様がなかなか受け取ってくれなかったそうだ。だから、ここに来るのが遅くなってしまったと、フェリコ先生は謝ってきたけど、遅くなった理由それ!?でも、何だか父様らしくて、僕は思わず笑ってしまった。
一応、白金貨の上に、大白金貨という物もあるらしいが、よほどの時にしか使用しないため、王族や高位貴族くらいしか持っている人はいない。なので、フェリコ先生も今まで一度も実物を見た事はないそうだ。
「アルノルド様なら持っていると思うので、興味があるなら、頼んでみるといいです。アルノルド様なら、喜んで見せてもらえると思いますよ?」
「い、いいです!僕も、使うこと何てないと思うのでいいです!」
硬貨1枚で、1000万の価値がある物なんて怖くて触れない……。もし、落としたり、失くしたりしたらと思うと……。
「そうですね。私も、使う事はほぼないと思います。とりあえす、何か他に気になる事はありますか?まあ、実際に、使って見ないと分からない事もあると思うので、着替えをしたら街に行ってみましょう」
「このままじゃ駄目なの?」
「このままだと、貴族とすぐに分かってしまい危険なので、街の中にいてもあまり目立たない服に着替えた方がいいです」
さっそく隣にある衣装部屋で、街に行くための服を選ぶ。しかし、街に行かない僕の衣装部屋には、貴族らしい服しか入っていなかった。それでも、その中からなんとか服を選び出し、貴族ではなく、裕福な商人の息子に見えるくらいにはなった。でも、その上にリタが持ってきた暖かそうな防寒着を着たので、別に中の服は何でも良かったんじゃないのかな?
「では、準備も出来たので、街へと行ってみましょうか?」
「はい!!」
小さな疑問は忘れて、僕は流行る心を落ち着けながら、フェリコ先生と一緒に街へと出かけて行った。
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