意外と時間は過ぎて
ネアは他の選択科目に行っているから、ネアだけがいない。2人が一緒にいる分、その事に違和感を感じる。その中で、僕達はが召喚獣に付いてや、魔力制御に付いて学んでいた。けれど、コンラットは理論派だからか、やっぱり魔力制御が苦手そうだった。
だけど、苦手でも自分なりに頑張っている姿を見ていると、僕も薬草学の授業を頑張ろうとは思った。でも、薬草の名前を聞いていても、別の国の呪文でも聞いているような感じがして、授業に付いて行けるような気がしない。それでも、バルドはもちろんだけど、一緒に授業を受けていないコンラット達にも聞けない。
どうすれは良いかと困った僕は、とりあえず兄様へと相談してみる事にした。
「それなら、私が教えよう」
「本当!!?」
「あぁ、明日の休みにでも、早速、時間を作っておこう」
「ありがとう!兄様!!」
仕事の合間に教えてくれると言った兄様に甘える事にした僕は、兄様と約束した時間に執務室へと向かった。
「裏庭?」
此処で教えて貰えると思っていた僕は、兄様の言葉に首を傾げる。
「教本の絵を見るよりも、実物を実際に見た方が分かりやすい」
兄様にそう言われ僕は、教科書だけを持ち、兄様に促されるようにハーブや薬草に使える植物が植えてある裏庭へと向かった。
「これと似た毒草もあり、どちらも似たような場所に生えている事がある。だから、自身で採取して使う時は、十分気を付けろ」
裏庭に付くと、兄様は目の前にある植物に付いて順に説明してくれて、僕は教科書を見ながらそれを聞いていた。だけど、教科書に乗っている挿絵と眼の前にある薬草と見比べて見ても、僕には違いがよく分からない。
「うーん…?」
絵と一緒に見分け方に付いても書いてあるけれど、葉の裏に毛があるだけ書かれてるだけで、どれが毛の部分なのか分からない。僕が唸っていると、兄様は助け舟を出すかのように、僕へと声を掛けてくれた。
「絵だけで分からないのならば、父上に頼んで現物でも取り寄せて貰うか?」
「い、良いよ!!」
兄様は僕へと提案して来たが。僕は直ぐにそれを断った。なぜなら、教科書にはしっかりと規制品と書かれていて、取り締まりの対象になっていると書いてあったからだ。
「そうか?だが、もし必要になったら言え」
当然、兄様もその事は知っているはずなのに、何の疑問や迷いもなく言ってのける所は、表情こそ違えど父様とそっくりだと思うし、僕とは違うなと思ってしまう。
「兄様?やっぱり、こういうは見分けられなきゃだけなのかな?」
「当然、見分けられる者もいるが、買い取りの段階で専門の者が仕分けているため、見分けられなくても問題はない」
「もし、それで間違って使ったら?」
「当然、気付かずに売れば責任は問われる。だが、規制品に指定されている毒草は、既に解毒剤が存在しる物ばかりで、人を殺せる程の毒はない。だから、仮に間違って使ったとしても、どうにでも対象出来る物ばかりだ」
「じゃあ、もし、この毒草を食べたら、どんな症状が出るの?」
「めまいと嘔吐が一週間続く程度、大した症状は出ない」
平然と言ってのける兄様に、僕は内心それだけで十分だと思った。だけど、兄様は本気で問題ないと思っているみたいだった。そんな兄様と、僕との価値観の違いを感じつつ、使う時は間違えないよう気を付けようと、1人、心の中で誓った。
そんな風に、慣れない授業で忙しく過ごしていると、意外と時間は過ぎるのが速くて、夏休みになっていた。夏休みに入ってからも、バルドと一緒に山積みの宿題と戦っていたら、旅行に出掛ける当日になっていた。
父様の叔母さんが住んでいる場所は、王都から少し距離が離れて馬車で3日掛かるらしく、途中の街に泊まりながら行くそうだ。だから、その分、今回は朝早く出る必要がないから、幾分か時間に余裕があった。だけど、楽しみにしていた僕にとっては、その余分な分がもどかしく感じた。
どうにも待ちきれなかった僕は、まだ時間があるから屋敷の中で待っていないか?と、父様達に止めれたのにも関わらず、朝ご飯を食べた後から外に出て、今か、今かと、ウロウロと歩きながらみんなが来るのを待っていた。
「そんなにそわそわしていても、まだ来ないと思いますよ?」
「だけど、落ち着かないんだもん!」
僕と一緒に来てくれたリタが、落ち着きなさそうな僕の様子を見て、クスクスと楽しそうに笑っていた。そんなリタの様子に、僕が少しむくれながら返事を返した。すると、門の方からやって来る1台の馬車の影が見えた。
「今回はよろしくな!」
馬車から元気に飛び降りなから僕に挨拶をして来たのは、やっぱりバルドだった。約束の時間よりも速いけれど、バルドならきっと速く来るだろうなと思っていた。
「やっぱり速かったね!」
「おぅ!止められはしたけど、屋敷で待ってるのは何か落ち着かなくて、少し速いけど来た!!母さんや親父からは、よろしく伝えてくれて言われたけど、他の人は屋敷の中にいるのか?」
「うん!待ちきれなくて、僕も先に出て来たんだ!」
「俺と一緒だな!!」
「うん!でも、コンラットは一緒じゃないの?」
てっきり一緒に来るのかと思っていたけれど、馬車出て来たのはバルドだけで、コンラットの姿が見えなかった。
「なんか、準備に時間が掛かるから、当日は先に行ってて欲しいって昨日言われたんだよ。だから、俺だけ先に来た!」
「そうなの?」
「おぅ!」
元気良く返事を返すバルドを前に、僕は準備ってなんだろうと不思議に思いつつも、僕はバルドへと問い掛ける。
「それでどうする?屋敷の中で待ってる?それとも、此処で2人が来るのを待つ?」
「此処で待ってようぜ!コンラットなら、約束の時間前に来るだろうから、もう少しで来るだろう!!」
そう言っている僕達の視界に、1台の馬車が走って来て来るのが見えた。
「何だ?コンラットはまだ来てないのか?」
僕は、コンラットか来たのかなと思ったけれど、実際に馬車から降りて来たのは、少し不思議そうな顔を浮かべたネアだった。
「ネアが馬車で来るなんてどうしたの?」
普段から馬車なんか使わないネアが馬車で来た事に疑問の声を上げれば、馬車を運転していただろう御者の人が、馬車から何か荷物を持って来た。
「今回は少し遠出だったのもあって、商会からちょっとした土産を持たされたんだ。だが、その量が思ったより多くてな。だから、商会が持ってる馬車で来たんだ。それより、時間を一番守る奴がまだ来てないって珍しいな?」
「準備するものがあるんだってよ」
「ふぅーん、まぁ、まだ遅刻したわけではないからな」
自分から聞いたにも関わらず、ネアはそこまで気にした様子もなく、一人で納得していた。
それから暫く、僕達がそこで話しながら待っていると、何処か慌てたような様子で走って来る馬車が見え、それを裏付けるように、コンラットが馬車から飛び出してきた。
「すみません!!遅れました!!」
「ううん、まだ、約束の時間になってないから大丈夫だよ。それにしも、バルドから準備してたって聞いたけど、何してたの?」
馬車から降りるなりるなり謝って来たコンラットに言葉を返しなら、僕は遅れてきた理由を問い掛ける。
「この量の荷物を積み込んだ事がなかったので、思いの外荷物の積み込みに時間が掛かってしまいました…」
「荷物って、何をそんなに持って来たの?」
この前の旅行では大した荷物を持って来てなかったのに、何をそんなに持ってきたのかと不思議に思いながら訪ねたら、少し居心地悪そうな顔を浮かべた。
「何でも、父に色々とご配慮して貰ったそうなので、それに相応の物を渡そうと思ったらしいのですが、何を贈ったら良いのか分からなかったらしくて…それでこの量になったようです…」
「父様と知り合いみたいだったし、そんなの気にしなくて良いと思うだけどな?」
それに、父様なら自分の欲しい物とかは自分で買って持ってそうだから、今さら欲しい物とかもなさそう。
「なぁ?コンラッド も来たんだし、もう行かねぇ?」
「そうだね。遅く出るより、速めに行った方が良いだろうしね」
「よしっ!じゃあ、みんなで呼びに行こうぜ!!」
予定の時間には まだあるけれど、お父様たちを呼びに行くため屋敷の中に入って行った。
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