表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/312

試験の合間

「その時の父様の様子が、何時もと違ってたんだよね?」


「そうなのか?」


「うん。やっぱり、怒ってたのかな?」


父様が怒った時なんて見た事なかった僕は、首を傾げながら問い掛ければ、バルドも同じように首を傾げていた。


「う~ん?俺は見てないから何とも言えないけど、俺の親父も、静かな時ほど怒ってるぞ。まあ、威圧感が増すから、怒ってたりすると遠目から見ても直ぐに分かるんだけどな」


「2人共、さっきから話してばかりですけれど、試験の勉強はしなくて良いんですか?」


一昨日の事も含めて、昨日の事をバルトと一緒に話していたら、コンラットが諌めるように声を掛けて来た。一緒に勉強をするために、少し速めに集まっていた僕達だったけれど、勉強もしないで話しているだけの僕達に、何処か不満そうな顔をしていた。


「仕方ないだろう…勉強したくないんだから…」


その言葉に、バルドはやる気なさそうに机に顔を伏せていたけど、何時も教えて貰うばかりの僕にも、今日はとっておきの秘策があった。


「ふふん!それなら大丈夫!昨日、父様から試験に出そうな所に印を付けて貰ったから!」


昨日話した後、今日の試験科目と試験の範囲を言ったら、父様が試験に出そうな所に印を付けてくれていた。その教科書のページを両手で開いてみんなに見せながら、僕が胸を張っていると、バルドが興奮したように顔を上げた。


「本当か!?なぁ!?これ!俺も見ても良いか!?」


「良いよ!」


「やった!」


僕の返事を聞くと、僕が持っていた教科書を受け取って、印が付いている箇所を確認していた。だけど、横でそれを見ているコンラットは渋い顔をしていた。


「勉強は、自分でしないと意味はないですけど…」


「それなら、コンラットは見ないのか?」


「………私にも、少し見せて下さい」


「何だよ、お前も見るのかよ」


バルドの問い掛けに、渋い顔のまま頷いたコンラットを、ネアはからかうような笑みを浮かべなら言った。そんなネアに、コンラットは少しムッとした様子で視線を向ける。


「アルノルド様が出ると行った箇所なら、見えおいて損はありませんから、貴方は見なくて良いんですか?」


「俺は良い」


睨むような視線を受けても、全く興味なさそうな顔で笑っていた。そんな様子が面白くなかったのか、少し苛立ったような声を上げる。


「そんな事言ってて良いんですか!?私も、今度は負けませんよ!」


「そうか、頑張れ」


コンラットの宣戦布告のような言葉にも、余裕そうな態度で少しも焦った様子がない。そんなネアに、不満そうな顔のまま、睨むような視線を向けていた。


そんな真剣な、とは言ってもコンラット1人だけだったけど。その空気を読まずに、バルドが僕に何時もの調子で聞いてきた。


「なぁ?これ、頼んだら毎回やってくれないのか?」


「父様達は頼んだらやってくれるけど、僕から頼もうとすると、頼む前に母様達に気付かれて叱られちゃうんだよね。それで、父様達から教えてくれた事があったんだけど、その後直ぐに気付かれちゃって、そうしたら僕じゃなくて父様達が母様に叱られてたんだ。だから、お互いにやらないんだ」


普段は、父様も教えないようにしているけれど、今回はこの前のお詫びにと言う事で、特別に父様に教えて貰った。


「確かに、お前は顔や態度に出やすいからな」


「うッ…!」


僕も、顔に出さないようにしようとは思っても、嘘を付こうと意識したりすると、途端に何時もどんな態度を取っていたのか分からなくなる。


痛い所を突かれて、僕が顔をしかめながら苦い顔をしていると、廊下の方から話し声が聞こえて来た。


「だいぶ、人が来る時間になりましたね。話しの続きは、昼の時にしましょう」


コンラットと一緒に時計を見ると、試験まであまり時間はなさそうだった。


「時間が止まれば良いのに…」


未だにボヤいているものの、どりあえず僕達は、コンラットの言う通り今は試験勉強を優先する事にした。


その後、何とか午前中の試験も終わり、後は午後の分だけとなった僕達は、少し休憩を取りながら、学院の食堂で昼ご飯を食べる事にした。


「それにしても、本当に俺達も一緒に言って良いのか?」


バルドがご飯を食べながら、珍しく何処か遠慮した様子でそんな事を行って来た。


「うん。父様が良いって言ったから、大丈夫だよ」


「そうか?それなら良いんだけどよ」


「どうしたんですか?貴方がそんな事を言うなんて珍しいですね?何時もだったら、気にせず行くでしょう?」


「あのなぁ!俺だって!仲が悪い実家に初めて行くって言う時に、呑気に一緒に付いて行ったりしないぞ!」


直ぐに不満そうな顔で言い返すも、僕の横で意外そうな顔をしたネアが口を開く。


「お前にも、少しは良識はあったんだな」


「そうですね」


「お前等!俺を何だと思ってんだよ!それくらいは俺だってあるぞ!!」


そんな2人の態度に、さっきよりも憤ったように言い返していたけれど、動じる様子もない2人の様子を見て、苦い顔をした後、気を取り直すように、大きな声を上げた。


「リュカ!行って良いって言うなら!俺は全力で楽しむからな!南の島のバカンスも楽しそうだけど、泳ぐのは湖でもやったから、今度は虫取りも楽しそうだよな!」


「うん!」


バルドの言葉に、笑顔で頷く僕だったけれど、僕の前に座っていたコンラットは、少し沈んだような顔をしていた。


「私…あまり虫は得意じゃないですよね…」


「えっ?そうだったのか?でも、俺が帰り道で捕まえたトンボとか見せても、平気そうな顔してただろ?」


意外そうな顔を浮かべるバルドに、少し躊躇ったように視線を泳がせた後、きまり悪そうにバルドへと視線を向ける。


「そういうありふれた虫くらいなら、まだ見ていても平気なんですよ。それに、蝶とかは見ていて綺麗だとも思いますしね。ですが、イモムシや、足が多くて不気味な姿をした虫は、見たいとすら思いません…。どうしても、あのブヨブヨと見た目や、ウネウネ動く姿が駄目なんですよね…」


その言葉に、コンラットの気持ちが、少し分からなくもなかった。僕も、イモムシとかまでは平気だけど、毛虫やムカデとか言った虫は好きじゃない。


「まあ、虫も色々いるからな。俺も蝶は良いけど、蛾は苦手だな…」


「でも、兄様は蛾も蝶も同じ虫だって言ってたよ」


嫌そうな顔をしているバルドに、兄様が言っていた事を伝えると、何を言われたのか分からないような顔で首を傾げる。


「同じって、見た目の色とか全然違うだろ?」


「そうでもないですよ。オルフェ様の言う通り、蛾も蝶の仲間に分類される種もいるらしいですから」


「そうなのか?」


「多少違いはありますけど、そこまでの違いはないみたいでしたね。昼に活動するのが蝶で、夜に活動するのが蛾みたいな認識でも間違いはないようでした。なので、蝶と蛾が一緒に扱われている国もあるそうですよ」


「俺には、一緒なんて思えないけどなぁ…」


僕の言葉を補うように言ったコンラットの言葉にも、どうにも納得出来なさそうな顔をしていた。


「兄様は、どっちも鱗粉を落とされそうで、上を飛ばれるのも嫌だって言ってた」


「虫、嫌いなのか?」


「兄様は得意じゃないって言ってた。だけど、気配が近くにあるだけでも嫌なんだって」


「オルフェ様にも、苦手な物があるんですね?」


「でも、それって夏とか外に行けなくないか?」


「そんな事ないよ。普通に、街に出掛けたりしてるよ」


「そうなのか?それなら、それ程でもないんだな?」


王都とは言っても、蝶なんて何処にでもいるから、それを気にせずに出歩くなら、それ程でもないんだろうと納得したような顔をしたいた。


「ああ、そういえば父様が、カレン様から聞いた劇の話しは、全て忘れてって言ってたよ」


父様から言われていた事を、言い忘れる前に伝えると、バルドはきょとんとした顔をしていた。その後、何かを思い出そうとするように眉間にシワをよせていた。


「劇って?何か、言ってたか?」


「貴方達の両親が劇の題材になったと、カレン様が話していたでしょう?」


そんなバルドの様子を見かねたように、コンラットがバルドへと声を掛ける。


「あぁ、そういえば、そんな事言っていたような気がする」


「忘れてたの?」


僕が朝にも少し話したのに、バルドはすっかり忘れていたようだった。


「劇になんか興味ないからな。でも、何で今更?」


「家の沽券に関わるからだって」


「そうなのか?分かった。でも、劇なんだから、放っておけばいいのにな。それが、本当にあった事なら…」


「お前、それ食わないのか?なら、貰っていいか?」


「駄目に決まってんだろ!」


それまで黙っていたネアが、急に僕達の話に割って入って来たため、バルドは急いで自分の皿を遠ざけながら叫んでいた。


「そうか、なら良い」


バルドがそう答えた途端、ネアは途端に興味を無くしたよかのように、自分の皿に乗って残りを口に運んでいた。


「いったい、何なんだよ?」


不可解そうな顔でぼやきながら、ネアの事をじっと見ていたバルドに、コンラットが冷静な声で声を掛ける。


「ネアではないですけど、食べないなら置いて行きますよ」


既に食べ終わり、食器を片付けようと立ち上がりながら告げて来た。その言葉に、僕達2人は慌てたようにそれを止める。


「ま、待って!今食べ終わるから!!」


「お前一人で行くなよ!」


「一人では無いですよ」


コンラットの視線を追えば、ネアもいつの間にか残りを食べ終わっていて、席を立とうとする所だった。


「お前等、喋り過ぎなんだよ」


ネアの言葉を受けて、急いで残りの昼食を食べた僕達は、待っててくれた2人にお礼を言いながら、少し早足になりながら教室へと戻った。

お読み下さりありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ