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私の転機(フェリコ視点)

アルファポリスで先行投稿中


リュカ様の件を、アルノルド様にすぐにでもご報告しようと思っていた。だが、とてもお忙しい方なので、夕食後にお伺いをたててからご報告をしようと思っていた。しかし、それよりも速くアルノルド様から、至急、執務室へと来るように呼びだされ、急いで執務室へと向かった。


入室の許可を貰い部屋へ入れば、暖炉の火は燃えているのにも関わらず、部屋の中はとても冷え切っていた。


「フェリコ、私に何か言うことはないか?」


アルノルド様から笑顔でそう尋ねられたが、目の奥が一切笑っておらず、底冷えするような目をしていた。思わず視線を、部屋に置いてあるとまり木へと視線をずらす。


「私も忙しい身なので、報告が遅れるということもあるだろう…。だが、私の気はそう長くないぞ……」


私は、慌てて昨日の件を含め、今日の授業でのリュカ様の様子をアルノルド様にご報告をした。


「はぁ~。私としては、何も出来なくても構わないんだが…リュカはそう思ってはいないんだな……。さて、どうするか…」


アルノルド様は、右手の指で軽く机を叩きながら、今後どうするか悩んでいるようだった。


「何処か気晴らしに行くのはどうでしょう?」


「気晴らし?そうだな。何処がいいだろうか…」


口に手を当てて悩み出すアルノルド様を見て、まさかと思い尋ねてみた。


「アルノルド様……もしかして、ご自身で連れて行こうと考えておられますか…?」


「当然だ」


当たり前のように言っているが、この人はいったい何を言っているのだろう…。もうすぐ新年祭が始まろうとしているこの時期に、休みが取れるわけがない。ただでさえ、この前休みを取っているというのに……。


新年祭には、地方の貴族も参加するため多くの貴族が王都に集まってくる。そして、王都に貴族が増えれば、その分揉め事なども多くなるため、一年で一番忙しい時期なのだ。


「それは…無理かと……」


「……はぁ。分かっている…。フェリコ…頼むぞ」


「かしこまりました」


分かっているなら私を睨まないで欲しい…。こちらに非がなくても、何処か不満気にこちらを睨まれると罪人になった気がして冷や汗が出る。私は、明日の予定を立てるため、と言ってその場を退出する許可を取り急いで脱出する。


部屋から脱出してホッと一息付きながら、昔の事を思い出していた。


私は、昔から勉強をする事が好きだった。だから、学院の入学テストでも上位の成績を取って入学した。しかし、私の家は、子爵であまり階級が高くなかったため、周りの高位貴族達からの嫌がらせを受けた。勉強をすればするほど嫌がらせも酷くなり、しだいに勉強する意欲もなくなっていった。


成績が下がれば、当然の如く周りの人間達は、私をこき下ろした。だが、全てに嫌気がさしていた私には、もうどうでもいい事だった。


そんなある日、惰性で日々を過ごしていた私に、アルノルド様が、私に声を掛けられた。


「おい。お前は、何故何もしない?」


後ろを振り向けば、直接あった事は無くても、人目で誰か分かる人物がそこに立っていた。だから、最初、誰に声を掛けているのかが分からなかった。


アルノルド様は、私よりも6学年上で、周囲から白銀の悪魔という異名で恐れられている人物だった。私が、入学したあたりから、少し穏やかになったとは聞いたが、そんな人物が、爵位も下で接点もない私に、直接声をかけるとは到底思えなかった。だから、私の他に誰かいるのかと周りを見渡していれば、呆れたような声が聞こえた。


「はぁ…。お前以外ここに誰がいる。優秀だと聞いたが、どうやら間違いだったようだな」


「え?優秀?」


わけもわからず聞き返す私に、アルノルド様は不快そうに眉をしかめた。その姿に、正直恐怖しか感じなかった。


「アル、それじゃあ分からないよ?」


「……」


「ごめんね~。アルは、普段から口も態度も悪いけど、根は真面目だから気にしなくていいよ~」


「おい……」


いつの間にか現れた、レクス殿下によって私から、アルノルド様の注意が逸れたのは助かった…。だが、アルノルドの機嫌が一気に急降下したせいか寒気を感じる…。今すぐここから逃げ出したい……。


「相手が怖がってたら話も出来ないだろ?普段から笑う努力をしなよ?」


「……くだらない」


「あの子からまた避けられるかもよ?」


「………ちっ、努力は…する…」


「そこだけ、素直だよね~」


アルノルド様の機嫌が少し回復したと思ったら、レクス殿下の一言で、再度、アルノルド様の機嫌が急激に悪くなる。


「あ、あの…」


速くこの場から立ち去りたくて、不敬だと分かっていても、お二人に声をかける。


「あ~ごめんね~?最近のアルは、からかうと楽しいからさ~」


すみませんレクス殿下。アルノルド様から、絶対零度のような冷気が漂っているので、私がいる場所でからかうのは辞めて下さい…。


「えっとね~?アルと今、将来有望そうな人材に声をかけて回ってるんだよ~。でも、学年が近い人間は、声をかける前にアルを見ると怖がって逃げるんだよね~。だから、学年と身分が低くて、話しかけたら逃げる事が出来ない人間から声をかける事にしたんだ」


レクス殿下が、凄くいい笑顔で、えげつない事を言ってきた……。たしかに、私のような身分や立場の人間は、許可も取らず、勝手に高位貴族の前を去ることは出来ない。下手すれば、不敬罪で罰を受ける可能性だってある。


学院の中は、階級は不問となっているが、そんな事を信じている者は誰もいない。だから、今すぐにでも逃げだしたいのを我慢して、私もここに留まっているのだから……。


「それでね?君、周りからの妨害で学院生活が上手くいってないよね?条件を飲むなら、私達がどうにかしてあげよう!君にとって悪い話じゃないだろ?」


たしかに、悪い話ではない…。


「私は…何をすればいいんですか……」


「ん?普通に学院生活を過ごしていていいよ?他の所に持っていかれないように、先に恩を売っているだけだかね~。だだ…恩を裏切るようなら…わかるよね?」


「は、はい…」


レクス殿下の浮かべる笑顔は、下手な脅しよりも恐ろしかった……。


「なら、さっさと連中を血祭りに上げて終わらせるぞ」


「え~。見せしめは不味いよ?バレにくい脅迫とかにしなよ~」


「……面倒臭い」


「すぐ、見せしめにするのは良くないよ?」


「見せしめにした方が速く、簡単に終わるだろ」


「そんなだと、あの子に怖がられて嫌われるよ~?」


「………」


この日、アルノルド様達と出会った事が、私の人生の転機となった。


お読み下さりありがとうございます

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