どんな人?
「どうかしましたか?」
「ううん!何でもない!あっ!リータス先生だ!」
何も言わなくなった僕を不思議そうに見てきたコンラッドに、僕は首を振りながら返事を返していていたら、ちょうどリータス先生の姿が見えた。少し険しい表情を浮かべながら、父様達と何か話している様子だっだ。
「何にを話してるんだろう?」
「さぁ?此処からでは分かりませんね」
陛下も一緒にいるのは見えるけれど、コンラッドの言う通り距離が離れているので、此処からでは会話まで聞こえて来ない。
2人でしばらく様子を眺めていたけれど、リータス先生は僕達の視線に気付く事なく、その場を去って行ってしまった。
「そろそろ…戻らないか…?」
お兄さんが決まり悪そうで、申し訳なさそうな顔で僕達に聞いてきた。
「どうします…?」
「うーん…」
コンラットとお互い視線を交わしてから、バルドの方へと視線を向ける。
「バルドはどうする?」
「これ食ってから戻る!」
今取ったばかりのような山盛りになった料理の皿を片手に、バルドは頬張りながら答えた。
「じゃあ、僕は先に父様の所に戻っているね」
あまり長いをしてお兄さんに悪いから、僕だけでも先に戻る事にした。みんなに声を掛けてから、僕は父様達がいる方へと行った。
「おや?思ったより速かったね?」
僕が戻った事に気付いた父様が、僕の方を振り向きながら不思議そうな顔で聞いて来た。
「うん。気になる事もあったから戻って来た」
「気になる事?」
さすがに、お兄さんの迷惑になりたくないからとは言えなかった僕は、さっきの気になった事を聞く事にした。
首を傾げながら聞き返してきた父様の影から、さっきまで父様と話していた陛下が姿を現しながら言った。
「いきなり私を無視しないでくれないかな?」
「邪魔だ。そこをどけ」
「君はねぇ……」
僕達の会話に割って来るように入って来た陛下だったけど、父様の不躾な態度に困ったような表情を浮かべていた。
パーティとかで見かける父様の態度は、何度見ても普段と違い過ぎて違和感しかない。陛下と仲が良いから許されているのかもしれないけれど、此処まで貴族としての演技を徹底しているのは凄いと思う。
「君の事に関しては、たまに本当に頭が痛いよ…。はぁ…あぁ、すまない。挨拶が遅れてしまったね。この度は招待に応じてくれた事に礼を言うよ」
僕が父様に感心してながら聞いていると、陛下は途中で僕の事を思い出したように僕の方を向いた。その顔は、さっきまでの浮かないような表情から、思考を切り替えたように王様らしさを感じさせる威厳のある顔になっていた。
「こんばんは。こちらこそお招き頂き光栄です陛下」
僕はマナーの授業を思い出しながら、挨拶をした後に軽く一礼してお礼の言葉を僕も返すと、陛下はまるで微笑ましいものでも見たような笑みを浮かべた。
「君は父親とは違って、礼儀正しい良い子だね」
「フン、当然の評価だな」
「そう思っているなら…お前も少しは見習え…」
満足げな顔をしながら堂々と立っている父様の横で、その様子を何処か諦めたような目で陛下は眺めていた。
「あ、あの、他のみんなは?」
陛下や父様の周りをキョロキョロと見渡すが、他の姿が見えない。人影に隠れて見えないだけで、みんな父様達の近くにはいると思ったのに、何処に行ったんだろう?
「ん?とりあえず、ベルはあそこにいるよ」
少し視線を上げて陛下が指差した方を見ると、少し離れた位置にベルンハルト様が1人で立っているのが見えた。他の招待客よりも身長が高いからか、僕からでも何処にいるのかが見える。でも、視線が上の方過ぎて、指を刺されるまで気が付かなかった。
僕の視線に気が付いたようで、目線が合うと目礼をされたので僕も目礼で返した。その後すぐ、別の方向へと視線を向けたので、僕も同じように視線を向けてみると、さっきの場所で料理に手を付けているバルドの姿が見えた。
でも、料理があまり減っていないようにも見えないうえに、表情も少し苦しそうにも見える。あの様子を見ると、此処に戻って来るにはまだ時間が掛かりそうだ。
「他の者達は少し席を外しているが、君達はこの前の事があったからね。今回は君達の事にも対応出来るように、ベルには中間地点くらいの場所で待機して貰っているんだよ。他の者達は、問題なく自分で対処も出来るし、私の護衛役はアルがいれば問題ないからね」
「リュカ達を守るついでのオマケくらいでは守ってやる」
「ああ、任せたぞ」
ついでのオマケって…。それは…守っている事にに入るのかなぁ…?そんな僕の疑問をよそに、お互いに納得しているような平然とした態度で言葉を交わしていた。
「そういえば、さっきリータス先生とは何の話しをしてたの?」
とりあえず本人達が納得しているならいいかなと思って、さっき少し気になっていた事を父様に聞いた。
「アルノルドは人使いが荒いって話しだよ」
「……レクス」
父様に訪ねたのに、何故か少し意地悪そうな顔をした陛下が変わりに答えた。
「何だ?本当の事だろ?」
「……」
からかうように笑う陛下の態度に対して、父様は何処か不貞腐れたような不満顔で、黙って陛下の事を見ていた。
「ああ、アルノルド。先程の話しの続きだが、妹から近々帰ると連絡を受けたから、約束通りお前に知らせておく」
「……礼は言う」
「誰か帰って来るの?」
陛下には不満顔のまま返事をしていたのに、僕が声を掛ければ、浮かべていた顔を緩めながら答えた。
「帰って来るのはこれの妹。一応は、この国の王女だよ。少し頼みたい事があったから、帰って来るようなら連絡をよこすよう、前もって頼んでおいたんだ」
「一応って…お前な…」
「なら、お前は自信を持って言えるのか?」
「……」
父様からの問い掛けに、何とも微妙な顔を浮かべてながら答えに詰まっていた。
「それが答えだろ」
苦虫を噛み潰したような陛下に対して、父様は何処か仕返しが成功したような子供みたいな笑みを浮かべていた。
「どんな人なの?」
「「……」」
2人揃って表情を曇らせながら、何か言葉を探しているようだった。
「そ、そうだね…。息子と一緒で…一箇所でじっとしているのが苦手な子…だね…。そういった意味では、レオンは大人しくて聞き分けが良い方…かな…?」
「アレと比べればな…」
「「はぁ…」」
父様達が2人揃ってため息を付くような人って、いったいどんな人なんだろう?だけど、父様達の表情を見る限り、今日はもうその話題は聞けなさそうだった。だけど、帰って来ると言うのなら、僕も合う機会があるかなぁ?
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