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昼休み

今年も新学期から色々あったけれど、一ヶ月経つ頃にはクラスの中もだいぶ落ち着いて来て、静かに過ごせる日が増えて来た。例の彼女も、今はリータス先生に呼ばれて教室にいないから、なおさら静かに感じる。


「クラスは少し落ち着いたけれど、相変わらずあなた方も大変ね」


静かな昼休みを過ごしているとレイア嬢が僕達に話し掛けてきた。


「そう思うならそっちの方でなんとかしろ」


「あら、相変わらず貴方は、貴族に対する口調と言うものが分かっていらっしゃらないようね…」


何処か楽しげに言ったレイア嬢に、ネアが不満そうな顔で文句を口にすれば、目を細め、少し低くなった声になり、ネアよりも不機嫌そうになった。僕に言われたわけじゃないけれど、ちょっとだけ怖い…。


「お互い去年からいるんだ。そんなのは今更だろ。それで、どうなんだ?」


「ネア…。流石に…そのもの言いはちょっと…」


僕とは違って、ネアは全く動じる様子もなく、レイア嬢へと言葉を返していた。だけど、余りにも失礼な態度にコンラットも注意するけど、言っている本人もいまさらなのを自覚しているためか、その言葉尻は弱い。


「そうね。たしかに今更ね。でも、余りにも度が過ぎるとどうなっても知らないわよ。理解がある方々ばかりでないのも、去年から知っていらっしゃるでしょう?」


さり気なく去年の事を例に出して笑う彼女に、ネアは不満げな表情を返す。


「それと、さっきのお答えですけれど、お断りさせて致しますわ」


「……」


そんなネアを楽しげに見ながら言った後からの言葉に、さらに不満そうな表情になって視線を返していた。無言のまま視線だけをやり取りする2人の間に入るように、コンラットが変わりに彼女に理由を聞いた。


「レイア嬢。それは、どうしてですか?」


「そうですわね。最初は、ただの非常識なご令嬢かと思っていましたが、女だと高圧的な態度を取る方も、彼女を見ると逃げるようにいなくなるのが滑稽で、今ではいい娯楽ですわ」


コンラットからの問いかけで視線をずらした彼女が、先程よりもいい笑顔で少し不穏気な事を言う。


アリアに対して好感を持っている人もいるけれど、普段からの行動も合わさって、マナー講師などを中心に教師陣達からの評価は低い。出来ないわけではないようだけど、本人にする気がないようだった。


去年も、何度かその事で担任からも呼び出しは受けたりもしたようだったけど、今の担任はリータス先生だ。流石に今回は少しは大人しくなるかと思いながら、たぶん無理だと感じる自分もいた。


「なぁ…俺達の事…面白がってないか…?」


バルドが、何とも微妙な顔で聞けば、軽く首を振りながらそれを否定した。


「そんな事はございませんわ。皆様はそんな方達ではないですので、同情はして差し上げますわよ」


「あ、ありがとう…」


お礼を言うのが正しいのかは分からなかったけれど、とりあえず僕はお礼の言葉を口にする。


「ふふっ。まさか、お礼を言われるとは思ってもみませんでしたわ。それなら、私からはご武運をと言わせて貰いますわ」


「ご武運をって、どう言う事?」


言葉の意味が分からなくて彼女に聞き返したら、少しきょとんとした顔を浮かべて答えた。


「あら、分かりません事?いくらあの担任に叱られたからといって、彼女のあの性格がそう簡単に変わるとはとても思えませんわ。そんな彼女がまず最初にしそうな事、それはきっと自分を貶めた犯人探しに違いありませんわ。なら、その最有力候補はいったい誰なのでしょう?」


「うっ…」


彼女は不思議そうに問い掛けているけれど、明らかに僕達だと言ってるふうに聞こえる。


「俺達は無関係だぞ!」


「そうですよ!冤罪です!」


僕が言葉に詰まっていると、変わり2人が直ぐに反論した。実際、僕達は何も言っていないから、コンラットの言うように冤罪だ。


「私に言われても困りますわ。それは、彼女本人に言って頂かないと。それでは皆様、頑張って下さいね」


困った様子をみせながらも、最後まで楽しげな様子で励ましの言葉を口にし、彼女は優雅に僕達の前から去って行った。


「……どうする?」


無言で見送っていた僕達を振り返りながら、バルドが静かに問い掛けてくる。


「逃げた方が良いのではないかと…」


「意味…あるかな…?」


「「……」」


どうせ此処で逃げても、彼女なら何処までも追い掛けて来そうだ。それは2人も分かっているからか、無言のままで返事がない。


「此処でただ嵐が来るのを待ってるよりは、逃げた方がましだ…」


「そうだね…」


ネアの一言で教室を後にしたけれど、特に行く宛もなかった。みんなで相談しても特に思い浮かばなかった僕達は、とりあえず中庭で時間を潰す事にした。


中庭に行くと、ちらほらと何人かの姿が見えて、中には今年入って来た子とかの姿をもあった。普段は合わないから、学年が上がったという実感は薄かった。


教室が2階に上がっただけで、外からの景色とかは余り変わっていない。上から人影など見かけたりもするけれど、こうして一緒の場所にいる方が実感もわく。


「俺、弟とか欲しかったから、下の子とか見ると何かこう落ち着かなくなるんだなぁ~。あっ!コンラットの事は弟みたいに思ってるぞ!」


「私は、1度たりとも貴方を兄と思った事はありません…」


「何でだよ!?」


凄く嫌そうな顔を浮かべながら言うコンラットに、バルドは大声で文句を言ってるけど、僕もそれは遠慮したいな…。


「下がいても、良い事なんてないぞ…。何かあれば、年上だから我慢しろだの言われて、怒られる時も理由も聞かずに上だけが叱られる。理不尽な事しかない…」


「ネアって下に誰かいるの?」


何処か実感の籠もったような言い方だけど、下がいるなんてネアから聞いた事もないし、家に行った時も見た事もない。


「いる。とも言える」


「何だそれ?」


何とも曖昧な表現に意味が分からなくて、僕達はそろって首を傾げる。


「近所とかに…。まあ、下がいると上は大変だって事だ…」


ちょっと顔をそらしながら言っている様子を見ても、僕よりも年下の子と話した事がないから、大変さとかがよく分からない。


でも、兄様も僕の相手をしたりするのが大変だったりするのかな…?今までの事を思い出して見ても、迷惑を掛けたような記憶しかなくて自信がない。


「俺の兄貴はそんな事思ってるわけないぞ!」


そんな僕とは正反対に、バルドは自信満々に言い切った。


「そういう奴に限って、意外と嫌ってたりするものだ」


ネアはバルドの反応を面白がって、何処かからかっているような雰囲気だった。


「なら、兄貴に聞いてみようぜ!昼休みなら演習場にいると思うからさ!」


「いや…。まあ、大丈夫か…」


ネアの売り言葉に、バルドは少しムキになって言った。その様子を見て、ネアは少し戸惑ったような表情を浮かべたけれど、最後は何かを納得したような顔をして頷いた。


バルド達はいつ見ても仲が良さそうだし、僕としてはわざわざ確認するまでもないと思うんだけどな。


そんな事を思いながら中庭から演習場に行くと、バルトの言うとおりお兄さんの姿があった。


「兄貴ー!!」


「ん?バルドか?」


駆け寄りながらバルドが声を掛ければ、声の主を探すように辺りを見渡して、こちらの方を振り向いた。


「なんかようか?」


駆け寄って来たバルドに、汗を拭いながら不思議そうに問い掛けると、バルドは顔を上げて言った。


「兄貴に聞きたい事あって!」


「聞きたいこと?」


「兄貴は俺がいて嫌だなって思った事ないよな!?」


「………え?」


お兄さんが驚いたように動きを止めた。そのせいで、そこに行こうとしていた僕達の足も止まった。


「あに…き…?」


そんな様子に、バルドも同じように動揺を隠せないように動きを止めていた。それでも、何とか出したような声に、お兄さんは正気を取り戻したように、大きな声を張り上げる。


「あ、あるわけねぇだろそんな事!!下らない事聞くなよな!!」


「だ、だよな!そうだよな!!」


「そうだよ!」


お互い大きな笑い声を上げながら話しているけど、声は堅いうえ、わざとらしさしかない。


「どうするんですか…この空気…」


「今回は…俺が悪かった…」


「それなら…何とかしてよ…」


「……」


ネアの方を横目で見ても、全く動く様子はない。この空気を何とかしたくて、心のなかて神頼みをしていたら、その人物はやって来た。


「見つけたわよ!!」


この空気をぶち壊しそうな存在が降臨した!?ような気がした…。

お読み下さりありがとうございます

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