表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/305

ギャラリー(レオン視点)


「なるべく、アルの息子とは仲良くするようにしてくれると助かる。喧嘩でもしようなら、どんな報復をしてくるか、予想が出来ない」


オルフェと会った後、父上から部屋に呼ばれてそう言われた。だけど、父上に言われなくても、仲良くするつもりだった。でも、オルフェの好きな事が分からない俺は、まずは自分の好きな事に誘って見る事にした。


俺は、オルフェの屋敷を尋ねて行った。屋敷の使用人に、何処にいるのか訪ねたら、書庫にいると言われた。案内されて向かえば、オルフェは1人、椅子に座って本を読んでいた。


「オルフェ!模擬戦しないか!?」


「何故だ?」


「オルフェと、仲良くなりたいからだ!」


「私は、仲良くする気はない」


本に視線を戻され、俺の誘いはあっさりと断られてしまった。今まで、誘いを断られた事がなかった俺は、どうやって誘ったらいいか分からない。だから、父上達のやり取りを参考にしてみる事にした。


「模擬戦に付き合ってくれたら、有給休暇を出す!」


「はぁ?」


その時のオルフェの呆れたような顔は、今でも忘れずに覚えている。あの頃は、有給休暇を出すと言えば、頼み事を聞いて貰えると思っていたんだ。後で、父上にその事を話したら、大いに笑われた…。


その後も、父上達の会話を参考に誘ったら、呆れたようにしながらも、最後は模擬戦に付き合ってくれた。


今まで、騎士団の訓練に混じって、稽古を付けて貰う事はあっても、同年代の奴とはやった事はなかった。だけど、同年代に負ける気はなかったし、負けるとは思っていなかった。でも、オルフェには、届かなくて負けてしまった。


負けたのが悔しくて、他の同年代の奴と、模擬戦の稽古をしてみたけれど、手を抜いて勝ちを譲っているのが分かって、勝っても何も楽しくはなかった。


真剣に勝負してくれるオルフェに勝ちたくて、何度も模擬戦に誘った。でも、オルフェに弟が生まれてからは、魔力制御の修練で忙しいと断られるようになった。


オルフェの言葉に嘘はなかったけど、そんな事をする必要もない技量を持っているのに何で?という疑問が残った。もしかして俺は、避けられているんだろうか…?仲良くなりたくて始めた事だったのに…。


それからは、稽古以外の口実を見つけては、オルフェを誘ったけれど、初めて会った日から感じる壁は、そのままだった。


その日は、勉強を教えて貰う事を口実に、オルフェの屋敷を訪ねていた。


「オルフェ!宿題手伝って!!」


「自分でやれ」


「そこを何とか!!」


「はぁ…。なら、保管庫に置いてある教本を持って来るなら、手伝ってやる」


「分かった!」


部屋を飛び出してから、保管庫の場所を知らない事に気が付いた。近くにいた使用人に尋ねれば、変わりに持って来ると言われたが、俺はそれを断り、保管庫を目指した。


「ここか?」


目の前に見えた大きな扉を開けてみると、そこには、多数の肖像画が飾られていた。


「此処は、ギャラリーか?それにしても、今と全く変わってないな」


俺は、ギャラリーに飾られた、オルフェの肖像画を眺めながら、出会った時の事を思い出していた。段々と幼くなって行くオルフェの絵を順番に眺めながら、あまりの変わらなさに笑っていた。そうしたら、一枚の絵が目に入った。


「遅かったな?使用人に、頼まなかったのか?」


俺が部屋に戻ると、不思議そうにオルフェから訪ねられた。


「いや。別な物見てたら、遅くなった」


「別な物?」


怪しむような目で、俺の事を見て来るけれど、今の俺は、全く気にならなかった。


「ギャラリーにあった、うさぎの人形を抱っこして…グハッ!」


「忘れろ!全力で!忘れろ!!」


笑いながら言ったのが駄目だったのか、顔を赤く染めたオルフェから、おもいっきり殴られた。


その後、父上からは、俺がギャラリーの絵が撤去される理由を作ったという事で、オルフェの父親が、仕事放棄したと怒られた。すぐに謝りに行けと言わて、もちろん謝りに行った。


「絵を見て笑ったのは、馬鹿にしたわけじゃなくて、意外な一面が知れて嬉しかったというか、身近に感じたというか…と、とにかく、不快にさせたなら悪かった!」


「殴った私を…責めないのか…?」


下げた頭を上げると、伏し目がちにしながら、オルフェがこちらを見ていた。


「?誤解を招くような事をしたのは俺だから、殴られても仕方ないだろ?」


「お前は…」


俺の方を見ながら何かを言いかけて、言葉を止めた。眉間にシワを寄せた後、呆れたような顔をしながら、こちらへと視線を向けた。


「はぁ…。わ、私も、急に殴ったのは、悪かった…」


途中、気不味そうに視線を逸らしながらも、オルフェが俺に謝ってきた。


「許してくれるのか!?それなら、ギャラリーの絵も、戻してくれるよな!?」


「それとこれとは、話が別だ」


さっきまでの、気不味そうな様子は消え失せ、何時ものオルフェに戻っていた。


「それだと、俺が怒られる!!」


「知るか」


その後、父上から再度叱られたが、オルフェとの間にあった壁は無くなっていた。それからは、テスト勉強や稽古なども、俺に付き合ってくれるようになった。


たまに飛んでくる手はかなり痛いが、俺にこんな態度取って来るのは、オルフェだけだ。だからこそ、オルフェの前では、ただのレオン・エクスシアでいられる。


でも、もう少し手加減してくれてもいいんだぞ?処理が終わっていない書類を片手に、そっと心の中で告げるのだった。


お読み下さりありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ