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馬車の中で


街に向かう馬車に揺られている間、前から聞いてみようと思っていた事を聞いてみた。


「バルドは、お父さんに怒られるの怖くないの?」


「ん?そこまで怖くないぞ。親父は、静かに起こるから、怒鳴られる事もないしな。親父より、母さんに叱られる方が嫌だ…」


「でも、殴られて事あるんでしょ…?」


僕は、1度もそんな事された事がないから、バルトのお父さんには、怖そうな印象しかない。


「ああ、でも、その時だけだぞ。他家の目があるから、他者から見ても分かりやすい処罰したって、後で兄貴から聞いた。その時は、びっくりしたけど、後で思い返したら、そこまで痛くもなかったからな」


「ても、あの時、涙目だったような気が?」


「泣いてないから!!」


コンラットの言葉に、全力で否定しているバルドを見ると、ほとんど認めているのと同じような気がする。


「と、とにかく、親父は、規則や規律を破れば、罰が重くなるけど、そうでなければ、寛容な時もあるから怖くないぞ!」


だから、規則を破って森に行った時は、罰が重かったんだね…。


「それより、母さんに叱られる方が辛い…。嘘付いてもすぐにバレるし、その事で説教がさらに伸びるし…。その点、親父は、庭の草むしりやら、掃除などの罰則で終わるから、親父に叱られた方が、まだましだ」


「え…。バルド、掃除出来るの…?」


「気になるのはそこかよ!?それに、俺だって掃除くらい出来るぞ!!」


勝手な思い込みで、掃除をしている最中に、物を壊す所しか想像する事が出来ない。


「掃除や、身の回りの事は、私よりも出来るかもしれませんね」


「自分の事は、自分でしろって感じだからな。飯は、まだ作れないけど、覚えておけば、遠征の時に役立つって言われたから、習うつもりだ」


バルドが、家庭的な面を持っていた事に、衝撃を受ける。


「私だって、着替えくらいは、自分で出来ますよ」


「前は、使用人に手伝って貰ってたもんな」


「今は、それくらい出来ます!」


今でも、着替えを手伝って貰っている僕は、2人の会話の中に入って行けない。


「それに、自分の部屋くらいは、掃除だって出来るようになったんですよ!」


「ネアは、掃除出来る?」


片付けくらいならするけれど、掃除なんかした事もない。救いを求めるように、ネアに聞いてみたけれど、期待した答えではなかった。


「自分の部屋くらいはする」


もしかして、この中で一番、僕が子供だったりする?当初は、自立しようとしていたのに、兄様との誤解がなくなってからは、決意などすっかり忘れて甘えきっていた。みんなの話も聞いて、もう少し、自立しようかなと思った。


途中、乗り合いは馬車に、誰かが乗って来るような事もなく、会場近くに無事付いた僕達は、昨日と同じ場所に座った。休みじゃないからか、昨日よりも客席にいる人は少なかった。


「呼んだら、兄貴、俺達に気付くかな?」


客席もまばらだから、会場を見渡すだけでも、来ている事に気付かれそうだ。


「学院をサボって来ているんですから、気付かれたら駄目でしょう」


「兄貴は、怒らないだろうけど、親父達にもすぐにバレるか…」


凄く残念そうな顔をした後、何かを決意したような顔をすると言った。


「なるべく、声出さないでおく!」


「見られないようにも、気を付けて下さい」


僕達は、お兄さんが試合の時は、少し身を隠しながら応援をする事にした。興奮したバルドが、途中で身を乗り出しながら大声を出した時は、2人がかりで慌ててしゃがませた。お兄さんは、会場を見渡していたようだけど、僕達に気付いている様子もなく、コンラットと胸を撫で下ろした。


昼休憩も終わって、会場に戻って来た僕は、時計で時間を確認する。時計を見ると、ちょうど午後の授業が始まっている時間だった。嫌いな授業だからか、逆に何か気になる。


その後も、どうしても、そわそわと時計の方を見てしまう。


「僕、トイレ行ってくるね」


時計が見えない所に行って来ようと思って、みんなに声を掛けてから、僕はその場を離れた。


「リュカ君」


みんなの所に戻る途中、誰かに呼ばれて振り返ると、そこには見知った人が立っていた。


「リオ先生!」


僕は、先生の元へと駆け寄ると、気になっていた事を聞いてみた。


「昨日は、どうして来なかったんですか?それに、今日はお休みしたって聞きましたけど?」


質問してから、学院をサボって来ている事を思い出した僕は、慌てて何か考える。


「あ、えっと…。僕が、此処にいるのはですね…」


「もしかしたらと思って、此処に来ましたが、本当にいるとは思いませんでした」


「先生?」


どうやって言い訳をしようかと考えている僕を、全く気にした様子もなく、先生は良く分からない事を言っていた。


「私は、運がいい」


先生は、謎めいた笑顔を浮かべていた。


お読み下さりありがとうございます

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