目覚め
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身体が思い…
鉛のように身体が重く感じられて、瞼さえも開けられない。まるで、何か上に重い物でも乗っているかのようだ。
それでも、暗い意識の中、何とかまぶたを開けると、目の前には、全く見覚えがない天井が見えた。
「!!リュカ様!目を覚まされたのですね!!」
横から突然聞こえて来た人の声に驚いた俺は、声がした方へと目線を動かす。すると、そこにはメイド服を来た女性が椅子に座っていた。
こちらを心配そうに見つめているが、年齢は17、8くらいだろうか?外見は茶髪に黒目。素朴ながらも可愛らしい容姿をしていた。しかし、今はその目に涙をため潤んでいる。俺は、あまりの驚きに言葉を失ってしまい、その少女の事を見つめ返す事しか出来なかった。
「……リュカ様お加減は大丈夫ですか?何処か痛い所などはありませんか?私…リュカ様がお倒れになったと聞いて、本当に心配いたしました…」
目に溜まった涙を指拭うと、少女は俺の頬や手などを触りながら、何処かに痛みなどが無いかを確認しているようだった。
しかし、心配してくれている彼女には申し訳ないが、見知らぬ人間から心配されても、正直、戸惑いの感情しか出てこない…。それに、先ほどから呼んでいる俺の名前も違っている。誰か他の人間と、俺を勘違いしているとしか思えない。
まあ、男としては可愛い女性から看病されてるのが、嬉しくないと言えば嘘にはなるが…。
「あの…此処は何処ですか?」
「無理に起き上がってはいけません!!それに此処は、リュカ様のお部屋ではないですか!」
現状の把握のために、起き上がろうと体を動かせば、女性は慌てた様子で俺をベットの方へと優しく押し戻して来た。とりあえず、大人しくベットへと押し戻され俺は、部屋の中を新ためて見渡す。
部屋は、小さな家ならば入ってしまいそうなほど広く、左側には暖炉があり、明々と炎が燃えていた。その上には、家族の肖像がだろうか、4人並んでいる絵が飾られていた。その中の男性人は、芸能人顔負けの綺麗な顔をしていた。
右側に視線を移せば、バルコニーに出るためのものなのか、ガラス張りで出来た大きな扉が見えた。他にも本棚や机、ランプなどの雑貨が置かれいるのが見えるが、どれ一つとっても、一目で高価だと分かる品物ばかりが並んでいる。
少女はさっき、此処は俺の部屋だと言ったが、俺の部屋はこんなにも広くもなければ、こんな高価な品物を買える金もない。そもそも、俺の知り合いに、こんな可愛い少女などいない。至ら、絶対忘れない自身がある。
「あの……すみませんが…ここは俺の部屋ではないと思うのですが……?それに…あなたはどちら様ですか?」
「!!?」
なるべく相手に失礼のないように、言葉を選びながら聞いたつもりだッタのだが、俺の言葉に彼女はとても驚いたような顔をすると、すぐに悲しげな表情へと変わった。すると、涙で瞳がしだいに潤んでいき、ついには眼から涙が溢れ始めてしまった。
眼からポロポロと涙を流す少女を前に、俺は今までにないくらい焦っていた。男としては、女性の泣き顔ほど対処に困る物はない。何を言ったとしても、周りからは男性側が加害者として見られてしまう。
「すみません!!俺!あなたに何か失礼な事を言いましたでしょうか!?」
「わッ…私は…リュカ様にお使えしているリタです…ッ…まだ…ッ…ここに来て2年と…ッ…そんなにたってはいませんがッ…何時も一緒に…ッ…いました…のに……ッ…」
慌てて謝罪するも効果はなく、涙を浮かべながら泣く声は、だんだんと小さくなって行く。それでも、俺が起きてからずっと握り締められていた左手は、震えながらも硬く握り締めていた。
しかし、この少女に何と声をかけていいのか分からなかった。俺には、少女と一緒にいた記憶などはない。だが、それをこの少女に言ってしまえば、さらに泣いてしまいそうで、それを伝える勇気は、俺にはなかった。
「私の顔をお忘れてしまう程に、召喚の儀に失敗した事がショックだったのですか?ですが、リュカ様のお父上であるアルノルド様が、リュカ様を無下にするはずがありません!それに、私はリュカ様に最後まで付いて行きます!!」
眼に涙を浮かべながらも、俺を安心させるように力強く言ってくるが、召喚の儀や、失敗したと言われても、何の状況説明にもなっていないため、不安と混乱がが増すばかりだった。
それに、父親の名前を聞かされても、やっぱりその名前に聞き覚えがないく、そのため、どんな反応を返したら正解なのか分からない…。
真剣な顔を浮かべながら俺の顔を見つめていた少女だったが、突然何かを思い出したように、驚いたかのような顔に変わる。
「あッ!!リュカ様が目覚められたら、知らせるようにとアルノルド様から言われていたのでした!!すみませんッ!リュカ様!私、少しだけ失礼されていただきます!!」
そう言うと、彼女は慌てたように立ち上がり、部屋の扉を開けて掛け出て行ってしまった。
何とも慌ただしい人だなと思ったが、不思議と嫌悪感のような感情はわかなかった。むしろ、見慣れたような親近感のようなものを感じた。
少女がいなくなると、急に部屋が静かになり、その中に自分一人取り残されていると、何とも言えない居心地の悪さを感じる。
俺は上体だけをベットから起こしすと、再度、部屋の中を見渡して見たが、やはり見覚えのない物ばかりが並んでいる。今、俺が寝ている布団でさえも、普段使っていた物よりずっと柔らかく、寝ていても違和感しか感じない。
1度、ベットから出ようと体を動かせば、身体が重いのとは別に、何処か違和感を感じてその動きを止める。何故、違和感を感じるのかと、不思議に思って見下ろしたば、自分自身の手足が目に入ってきた。
「っ!!?」
それを見た俺は、ベットから転げるようにして慌てて布団から出ると、そのまま少しふらつく足で、部屋の中に置いてあった鏡の前に立つ。すると、そこには5歳くらいの銀髪青眼の子供が立っていた……。
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