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59.決意

ルシエルが洞窟の中で目を覚ますと、

デュークとルイードの二人が心配そうに覗き込んでいた。


どうやら自分は、まだ消えていない様だ。

気温のせいと悪夢でうなされていた為に寝汗が酷い。

だけど夢の中の記憶は、はっきりと覚えている。


「おはようございます、デュークお義兄様、ルイード様。

寝汗が酷いので朝の身支度が終わってから、お二人にお話ししたい事があります」


何かしら勘付いていただろう少し警戒していた二人は、

素直にルシエルの準備が整うのを待った。


身支度を整え、乾いた喉を潤してから、

ルシエルは、二人の前に座り、ゆっくりと話しはじめた。


昨日二人が居なくなった後に、ハーレックに何か飲まされた事。

昨日の夢の話、そしてそれが恐らく事実である事。

自分が転生者で本来のルシエルさんは、恐らくもういないであろう事。


ルシエルは、全てを二人に話して二人からの返答を待った。


強引にこの世界に呼ばれただけではあるが、

元のルシエルさんを殺したと思われるかも知れない。


そもそも信じてもらえずに気が触れてしまったと思われるかも知れない。


だが予想外に二人は話を信じてくれて、

元のルシエルさんの事も咎めずに変わらず自分を愛してくれると言ってくれた。


「何故ですか、私は本当の意味ではルシエルさんではないのですよ」


「何故と言われると困るが、

元々ルシエルとハーレックの婚約時に気持ちの整理はついていた。

それでもこの島に流れついて浜辺で不安そうにしている君を愛してしまった。

勿論、幼い頃にルシエルに抱いた想いもあったのは事実だが、

それら全てを含めて変わらず君を愛している」


「私もそうですね、幼い頃のパーティで一目惚れしたのは確かに、

元のルシエルさんだったのでしょう。

ですが一度は想いを忘れる為に距離を取っていた私が愛してしまったのは、

今のルシエルさんです」


「......ありがとうございます」

二人の優しさに胸の中の想いが再び溢れてしまった。


だけど、だからこそ二人に残酷なお願いをしなければいけない。


「私は当初この世界に来て自分の運命を呪いました。

ですが二人に会えて、愛して貰えて今では本当に良かったと思います。

ですからお願いがあります、旦那様達の手で私の事を殺して下さい。

二人がいない間に独り逝くのは寂しいです。

私が私でなくなる前にお願いします」


「ルシエル、それが君の願いなのかい?」


「はい、元聖女がこの身体を使って旦那様方に愛されるのは耐えられません」


「そうか、分かった」

「デュークさん!!」


ルイードは、その言葉に反対する様にデュークの名前を叫んだ。


「お前の気持ちも分かるよルイード。

だからルシエル、その時が来るまで最後まではあがかせて欲しい。

そして万策尽きた時は私もルシエルと一緒に逝くよ」


「お義兄様、お義兄様が死ぬ必要はありません」

「ルシエル、残された俺の気持ちを考えて欲しい。

それにルシエル独り先に逝く事は許さない、百歩譲って二人一緒だ」

「お義兄様.......」


「何二人で納得してるんですか、その時は私も一緒ですよ」

「だがルイード、お前は........」

「何で部外者扱いなんですか、ルシエルさんは私の妻でもあるんですよ。

病める時も健やかな時も死が二人を分かつ時もです」

「少しばかり拡大解釈な気もするが、まあ皆で逝くか」

「軽くありませんか?ピクニックに行くでもないのに」


ルシエルは、こんな状況なのに二人の会話が可笑しく、嬉しくて笑ってしまった。


「さてルイード、ハーレックの所に行くか。

元聖女が変な事をしない様に、ルシエルを軽く縛ってくれ、得意だろ?」

「何でこの期に及んで貶めて来るんですか、まあ得意ですが」


ルシエルを軽く縛った後に、二人はハーレックのもとに向かった。


『メガミノゾウ ノ シヨウジョウケン ヲ クリアーシマシタ』

機械音がそんな言葉を告げたが、誰も気づく事が出来なかった。

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