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【完結】サバイバル奮闘記 転生悪役令嬢の逆転劇  作者: 多々野行人
第一章 メイン(乙女ゲーム編)
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4.一人目の仲間

砂浜を歩いて少し歩いた場所に倒れていたのは義兄だった。

近づくと胸が上下に動いているので生きているようだ。


(良かった)


私は素直にそう思ってしまった。

綺麗な銀髪の青年

彼が遠い親戚から我が家の跡取りとして迎え入れられたのは

まだ二人が幼かった頃だ。


身体には鞭で打たれた後が残っていたらしく

酷い虐待を受けていたらしい

彼の両親は両親ともにろくでもなかった様で

彼の面倒などせずに遊び回っていたらしい。


彼自身は親戚や知り合いの家をたらい回しにされて

最後には、母親が私を産んで子供が産めなくなってしまい

家を継ぐ子供いなかった我が家に

わずかばかりのお金で売り飛ばされてしまったのだ。


勿論私が入婿を貰うのが大前提であったが

彼の生い立ちに同情した私の両親は

私が婿を捕まえて家を継ぐ場合でも

支度金を用意してきちんと面倒を見るつもりで

決してぞんざいには扱わずに

義兄も私も平等に育てた立派な両親だった。


結果として両親のこの優しさが我が家を救ったのだから

まさに情けは人のためならずと言った所か。


聖女に嫌がらせをして

王太子の反感を買った我が家に

侯爵家を継げるとはいえ、

ロクな男が来る事はなかったであろう。


その点、王国筆頭魔術師であり、

両親に深い感謝と愛を持っているデュークをキープ出来ていたのは

我が侯爵家にとって、正に天恵であった

勿論彼が無事に戻れればであるが。


「デュークお義兄様」

「デュークお義兄様」


私が砂浜から頭の下を持ち上げて

何度か声をかけると

デュークお義兄様はゆっくりと薄い碧眼の目を開けて

しばらくの間、ぼんやり私を見ていた。

あの聡明なお兄様のこんな顔は、かなりレアである。


「ここは?」

「覚えていらっしゃいませんか?

船が遭難して皆ここの小島に流されてしまったのです

お身体は平気ですか?」

「ああ、問題無さそうだ」

少し身体を動かして確認するとそう答えた


「ルシエルは、平気かい?」

「ッツ、はい私もどこも怪我しておりません」


久しぶりに声をかけてくれたお義兄様の顔は

勘違いかも知れ無いが酷く優しく

まだ二人が出会ってばかりの関係に戻った様に錯覚してしまう。

だけどもう、あの頃の関係には決して戻れないのは分かっている


仮に今回も冷たくされたら私は非情になれた

再び裏切られたのであれば、

彼を騙して利用する事に何の躊躇いも持たなかったであろう


でも、彼の優しく労わる目を見て、彼を騙して利用する事をしたく無かった。

信じてしまったのだ、本当に愚かな女だ・・・・

でも、信じてしまったのであれば、誠心誠意今の気持ちを伝えよう


どうであれ、このままでは、自分に待っているのは破滅なのだから。


「こんな状況で急で勝手なのは承知していますが

私の話をきいて下さいませんか?」


お義兄様は黙って首肯いてくれた


私の能力の事

それによりわかったこの島の状況

聖女の側に行っても出来れば私に害を与えない様に進言してほしい事

可能であれば、たまに様子を見に来て欲しい事


私は、手短に今思っている事を打算抜きで伝えてみた。

だが、彼からの答えは、私の期待とは違ったものであった。


「君は何を言ってるんだ?」


ああ、それはそうか

聖女を殺害しようとして断罪された馬鹿で不器量な義妹

それに比べて相手は、無人島では必須な回復を使えて

綺麗で優しい聖女様

比べるのもおこがましい

義理の家族の関係にすがって物乞いする哀れ私


期待する方が滑稽ね


でもせめてお義兄様にだけは

もう二度と見捨てられたくは無かった


何がゲームだ

ゲームであるのであれば、

どんなに困難でも参加者に勝利の道筋を用意しろ

どんな選択肢を選んでも、どんな努力しても

変えられない未来ならそんなのはゲームではない

少なくとも悪役令嬢に感情などいらないではないか

ただただ、ルートに従順に従うモブ

そのかなしみを感じ、リアルに表現するだけの為に与えられた感情


もうたくさんだ


「・・・そうですよね」

私は全てがどうでも良くなってフラフラとその場を離れ様と立ち上がった。


そんな私の手は、

優しく、だが決して離さないとばかりの思いが込められたかの様に

しっかりと握られた


「ルシエルは本当に何を言ってるんだい?

この状況で大切な義妹から離れて

赤の他人の女の側にいなければいけない理由が全く分からない。


君を守るという理由であれば、私が側にいた方が断然良いだろう

それとも私が側にいて困る理由が何かあるのかい?


だったら教えてくれないか。


何を言われても君を1人にするつもりは無いけど

正当な理由があるなら聞くだけは聞いてあげるよ」


お義兄様のその言葉は

あまりにも想定外で

不覚にも私は呆けてしまった。

 

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