45.王太子殿下の発病②
「ところでダン、先ほど向こうにいた聖女が見当たら無いんですが、
どういう事ですか?」
「一応ここまでは、マジックカーペットで送って貰ったんだけど、
その後は何をしているか分からないんだ。
ルシエルさんには近づけ無いし、攻撃手段もないから放置した。
最近ろくに話もしてないしな」
「隠し通す事も出来ないんで正直に話しますが、
私は瞬間的に目的地に移動する事が出来るのですが、
連れは二人が限界です、ルシエルさんと私は必須で、
デュークさんが同行しない訳がありません。
お二人は来た時同様に自分達で戻って欲しいのですが、
拠点をあける以上は、二人には我々よりも先に戻って下さい。
もしも我々がそちらに行った時に一人でもかけてたら、
問答無用で敵対行為とみなします」
「分かった聖女は俺が責任持って連れてかえる。
抵抗するかも知れないので、少し時間をおいてから来てくれ」
そう言ってダンさんは、森に向かった。
しばらくすると、森の方から言い争いの声が聞こえてきたけど、
多分平気だろう。
そもそもルー君にお留守番して貰うので聖女は拠点に近づけもしない。
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「放っておけば良いんじゃないか」
昼食に戻ったお義兄様に先程の件を説明して返って来た答えがそれだった。
「ですがお義兄様」
「我々の拠点は常に簡易結界ランプを使ってる。
初めて口にするものは、ルシエルが鑑定で安全を確認しているし、
湖の水質調査も定期的にやってもらっている。
薬草類も日々採取して有効な物は備蓄していて、
更に言えば俺が定期的に洞窟内の空気が淀まない様に循環している。
これだけの対策を掻い潜るような病気に王太子が掛かっていた場合は、
そもそも対策のしようがない、近寄る事にリスクしか感じられない。
ダンは発病していなかったかもしれないが、
ルシエルとは基本的な体力に違いがあり過ぎて参考にならない」
お義兄様でもあり、頭も良く、
私がおイタをしていた時も注意してくれていた旦那様に
口で勝てる訳も無いのは分かっていたんだけど。
「ですがお義兄様」
「更に道義的観点においても、聖人にだけとは流石に言わない。
せめて一般的な道義を向こうがわきまえていれば考える。
だが、向こうは一方的にルシエルに害をなしてくる、
こちらは一方的に助けるでは釣り合いが取れない。
むしろ俺としては、パーティーでも開きたい気分だがね」
「うぅ」
「それでもルシエルが助けたい理由があるのかい?」
「王太子はどうでも良いです、聖女は論外です。
ダンさんは、王国で牢屋に入れられる時に痛くされたし聖女贔屓でした、
今はそうでもないので恨みはありませんが。
でも私は嫌なのです、私のせいでお義兄様やルイード様に嫌な役をして欲しくないのです。
逆の立場でお二人に害をなされたら、私もきっとお義兄様と同じ様に思います。
ですがあくまで、これは私と聖女の因縁だと思うのです。
聖人に成りたい訳じゃ無いのです。
お義兄様もルイード様も私といて私と共に幸せになって頂きたいのです」
「正直俺は合理的な思考をしてしまうので、感情の機微にはうとくてね。
でもそんなルシエルにだからこそ、一目惚れをしたのだろうな。
ルイードもそれで良いか?」
「ええ私は初めから、惚れた弱みと言う奴ですね」
「そのルシエルの事なら何でも分かっている感はムカつくな」
皆で笑いながら食事を済ませたら、王太子の診察に向かう事になった。