44.王太子殿下の発病①
今日の私はルイード様と共に拠点警護と細々とした物品の配置をしていた。
拠点内の模様替えをするのに私一人では重すぎて動かせない、
ルイード様の転移を使えば比較的に重いものも楽に移動できるからだった。
お義兄様は湖にトルネード漁に行ってもらい、
獣がいたら捕獲するか仕留めるかをお任せしたので、
一度お昼頃に戻って来ると言い残して出かけた。
昼も近いので、片付けはルイード様にお任せして、
私は先日作ったコンテナ厨房で昼ごはんを作り始めた。
料理する環境こそ整ったけど、調味料も無いので味の変化が乏しい。
塩味スープの具に変化をつけたり、焼く魚介類を変えたりするだけ。
あとはドライフルーツを食べて終わりというのがローテーションだった。
最近は貝類で旨味を付けられるようになったので、
少しばかりスープの味が向上した位。
そんないつもと変わらない料理を作っていると、外で話し声が聞こえてきた。
お義兄様が帰って来るには、まだ少しばかり早い気もするし、
ルイード様と話をしている声は、お義兄様ではなさそう。
私は周りを注意しながらコンテナ厨房から話し声が聞こえる方向に向かった。
外に出た瞬間にこちらに気付いたのか、ダンさんと目があった。
何かようかしらと考えていると、ダンさんはいきなり私に土下座外交して話しかけて来たのだ。
「ルシエルさん、勝手なお願いだと分かっていますが、
殿下が病気になってしまい、皆様のお力をかして頂きたいのです」
私はこの言葉を聞いてゾッとした。
「ダンさん、ダンさんに感染していないか先ず確認させて下さい」
「そんな事が出来るんですか?」
ダンさんは驚いて私をマジマジとみた、実際にダンさんはお義兄様の薬と、
ルイード様の知識をあてにしていたのだろう。
だけど診断が出来なければ薬も何が聞くのか分からない、
ルイード様の知識でも発熱などがあれば、いくつかの病名は想像出来るが、
未知の無人島にどんな病気があるかなど分かる訳が無い。
私の鑑定能力による診断は必須なのだ。
「ルシエルさん、危ないですよ」
「ルイード様、ですがダンさんが感染していた場合は、下手すれば全滅です、
お兄様だけでも隔離して対応して貰う必要があるのです」
「わかりました、ダン、君の騎士の剣を私に渡して、
両手を地面について、ルシエルの診断の間は大人しくしているんだ」
ダンさんは、素直にこちらの言葉にしたがって、私の診断をまった。
私は後ろからダンさんに近ずき背に触り、鑑定の能力を発動した。
『鑑定』
【鑑定結果】
名称: ダン・ベルナンテ
階級:男爵家次男
状態:健康
その他:『解体』能力所有
良かった、感染はしていないみたいね、
『解体』って能力も持っているみたいね。
「感染は、していないみたいですね、
王太子の病状教えて貰えますか」
「今朝起きたら発熱してまして、腹痛と嘔吐が酷い状況です」
「発熱があるということは、炎症若しくは抗体が抵抗している可能性がありますね。
どちらにしても一度直接診ててみないと分かりません。
お義兄様が戻り次第向かいます、そろそろ戻って来ると思いますし、
いきなり留守にすると心配すると思いますので」
「ルシエルさん」
「仕方無いのです、この島で初めての病気ですし、
下手すれば全滅ですので、あと結婚したのにそろそろ敬称はやめませんか?」
「済まない、宰相の息子で幼い頃から色々な人間と関わって来たんで癖になってしまったんだ。
国にいる家族もさん付けで呼んでいる、だけどルシエルさんが嫌なら治しますよ」
「それが自然体なら平気ですよ、旦那様」
「ありがとう」
「ルイード、お前はルシエルさんと結婚したのか」
「ええ、正確には私とデュークさんとルシエルさんで結婚したんですけどね、
手を出さないで下さいね、殺しますよ」
「大丈夫だ、流石のオレもその中に入りたいとは思わない」
ダンさんは、今だに土下座しつつ、そう答えた。




