43.安心と不安と ☆
他の備蓄も合わせれば、二ヶ月まるまる何も収穫出来なくても、
過ごしていける食料を確保出来た事に私はかなり安心した。
サバイバル生活をしていて、結局人にとって何が幸せかといえば、
『安心』を得る事、そう思う様になった。
風雨をしのげる拠点を得た事による安心。
食料や水を確保出来た事による安心。
農耕をする事により安定した作物を育てられる安心。
病気にかかった際に、治療出来る薬が増えた事による安心。
何よりも、二人の旦那様がいてくれる安心。
これらの安心が私を幸せだと感じさせてくれる。
では逆に不幸とは何かと聞かれれば、『安心』を無くすこと、不安である。
今何が不安と言えば、二人の旦那様に見捨てられる事。
最近は毎日愛されているので、聖女よりは自分のほうが可愛らしいと、
思えるようにはなった。
だけどここが乙女ゲームの世界で、聖女はヒロイン、私は悪役令嬢。
いずれ努力もせずに全て奪われてしまう、そんな不安はどうしたって消えない。
少しばかり重い話だけど、二人共聖女に奪われてしまったら多分私は死を選ぶだろう。
でも、それでも、あの頃よりは幸せに死ねると思う。
きちんと愛されたから、愛されていると知る事が出来たから。
仮に全て奪われる運命でも、この思いがあれば幸せに死ねると思う。
今日の夜は少しばかり積極的に甘えよう、もう少し幸せな記憶を作りたくなったから。
少しばかり重い事を考えてしまったけど、これからの事も考えよう。
現在私達は、狩猟や採取を中心に食べ物を確保している。
理由は、三人の食料を調達する分には、狩猟や採取でも十分だったのと、
食物の長期保存のめどがたった事が一つ。
穀物の農耕をするには、十分な広さが必要なんだけど、
聖女達の妨害を常に警戒しなければいけないのが辛いのが一つだった。
仮に子孫が増えて狩猟だけでは、食べ物が足りなくなる事を懸念して、
種子や苗などで長期保存が厳しいものは、コンテナ温室で維持したり、
格納スキルで保存したりして備える事にした。
☆☆☆☆☆☆
その夜は私の方から旦那様二人をお風呂に誘った。
自分に泡を付けて密着したり、首元にしがみついたりと、
珍しく甘えに甘えた、旦那様二人は初めは少しばかり驚いていたけど、
私から何かを感じ取ってくれたのか色々教えてくれた。
初めて口に含んだり、痛くしないように大胆に上下したりした。
二人をちゃんと最後まで開放してあげて、私も軽く気持ちを飛ばしてのぼせてしまいそうだった。
そう言えば、最近私は少しばかり変わった、
前はベタベタと男に擦り寄る聖女の気持が全く分からなかったけど、
最近は外でも軽く触れ合いたいと思うようになったのだ、勿論二人限定だけど。
これもきっと安心だからだと思う。
その夜は二人に手を握って貰いながらぐっすり眠る事が出来た。




