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【完結】サバイバル奮闘記 転生悪役令嬢の逆転劇  作者: 多々野行人
第一章 メイン(乙女ゲーム編)
28/73

27.サバイバル生活 二日目 聖女リリーナ②

黙々と三人は森の中を進んで行く。


当初はここまで深い森だとは思ってもいなかったが、 

安易に森に入ってしまったのがここまで酷い状況になるとは。


途中、オレンジ色の見た事もない木の実がなっていた。

本来であれば絶対に食べないであろうが背に腹はかえられない。


鳥がついばんだ後が残っている実もあったので

少なくとも毒では無いであろう

三人ともそれぞれ実を手に取って匂いを嗅いだり

割って中を見て暫く様子を見ていたが、まずはダンが実を口にした。


「うぇ、苦」


残り二人はその反応を見て一口も食べずに、ぽいと実を捨ててしまった。


実際には苦いは苦いが非常に各種のビタミンを多く含んでおり

低温で煮込んで甘味を加えれば栄養も損なわずに

日陰であればある程度の保存もきく優れた実であったのだが

王城での高級料理で慣れ親しんだ味を二人とも忘れる事が出来なかったのだ。


「いつになったら迎えの兵士が来るのよ」

「知らん、王太子の俺と仮にも聖女のお前が行方知れずになったんだ

今頃は必死になって捜索しているだろうよ」

「仮にもってどう言うことよ!

本当に役に立たない兵士ね、帰ったら全員首にしてやるわ」


(父上の陛下に仕えている王城の兵士の処遇をお前がどうこう出来るわけ無いし、

そもそもいきなりバカンス行きたいと言ったのはお前だし

兵士達もダンにずっと背負われているお前に、あれこれ文句言われたくはないだろうな

もともと小煩く、傲慢な女だったが、

ここまで来ると流石に捨ててしまいたいのだが何故か思い止まってしまう。)


三人は再び歩き続けた、もうそろそろ空腹による疲労も限界だというところで

ダンが急に立ち止まった。


「どうした?」

「いえ向こうから水の流れる音が聞こえた様で」

「水の流れる音か川かも知れんな、どちらにせよ当てもない行くぞ」

「はい、殿下」


ダンを先頭にして、しばらく木々を掻き分けると眼前に川が見えた。

川の周りには、ある程度開けた河原が広がり、十分拠点を作れそうだ。


川には魚が結構いる様であまり外敵がいないのか

比較的に近くまで近寄れたが流石にダンの剣で刺し貫くのも無理があり

素手でどうにか捕まえるのも無理そうだ。

今後どうにかするにしてもとりあえずは今日の食事を確保する必要があった。

川の浅瀬やある程度の大きさの石の下には

王城で調理した後に見た事があるカニが生息していて素手でもどうにか捕まえられた。

ダンは野営の経験を生かして石を組み上げ簡単なカマドを作り、

立ち枯れした木片を森から持ちかえって来た。


その間にハーレックと聖女はカニを捕まえる事になったのだが

文句を言ってるだけでやはり聖女は全く役に立たなかった。


「ちょっと、コイツハサミで威嚇して来るんだけど、信じられない」


(カニだからなハサミもあるさ、お前も城でも食べた事くらいあるだろ)


「なんで高貴な私がこんな事をしなきゃならないのよ!!」


(お前より高貴な王太子の俺は必死に捕まえてるがな)


「ぜんぶあの悪女ルシエルのせいよ!!」


(ルシエルが悪女かどうかは別として、

今こんな状況になったのはお前のわがままのせいだがな)


袋一つ無い以上は、素手で捕まえたまま持って帰るしか無いのだが、

ギャーギャーと聖女は抵抗して来たが、

「お前の分が無くても良いのなら良いぞ」


最終的には諦めてハーレックが捕まえて弱らせたカニを渋々持って帰った。

拠点と河原をなん往復かして一人二匹分のカニを取る事が出来たのでダンの帰りを待った。


「お前、その木材はどうしたんだ?」

ダンの持って帰って来たのは、木の枝ではなく木材と呼べるレベルのもので

こんな森の中から持って帰って来るのは不自然だ。

どうも、『解体』という能力を持っているらしく

素材を利用しやすい様にバラしてくれるらしい。


生きてるカニ、死んでるカニにそれぞれ試させたが

死んでいるカニは明らかに食べられない部分が取り除かれ、

生きているカニには発動すらしなかった。


生きている人間に対して触っただけで発動出来るのなら脅威であるが、

命がないものに対してしか使えないのであれば問題がないし

素材の下拵えした事がない自分達にとっては、かなり便利な能力だ。


ハーレックは火魔法の適正は無かったが、

ごくごく弱い種火程度であれば使えるので

火を起こしてカニには直接火に突っ込んで焼いて食べた。


久しぶりの食事で休める場所も確保できたので

ハーレックもダンも久しぶりに安心できたのだが

少し元気になったせいか聖女が煩わしく騒ぎだしたので放置していたら

しばらくすると黙り込んで大人しくなった。


川で体と着ている服を洗う時にもひと騒ぎあったがもはやどうでも良い。

どうせ熟睡はできないのだろうから早めに体を休める事にしたのだった。

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