私のエッセイ~第百弾:多言語学習雑記(その10)~現代ヘブライ語~ 現代によみがえりし、奇跡の言語
皆さん、おはようございます! お元気ですか・・・?
このサファイアの涙のエッセイも、今回でとうとう100作目となりました。
「なろうデビュー」以来、今日まで無事やってこられたのは、ひとえに、読者・諸先輩方の皆様のあたたかいご支援と、「ふんどしエッセイ」すら容認してくださった運営の皆様のお力添え以外の何物でもありません。
あらためて感謝申し上げますと同時に、ひとつの「節目」となる大切なエッセイにふさわしい内容のネタは何か・・・ということで、非常に悩みましたが、これに決めました。
『現代へブライ語』です。
この言語は、前回の多言語学習エッセイで取り上げました、『エスペラント』同様、世界の数ある言語の中でも、かなり特殊な位置づけとなっている、珍しいタイプの言語とも言えます。
と言いますのはね・・・実は、一度「死語」になって使われなくなった言語が、「現代語」として復活した例は、この『現代ヘブライ語』だけなんですヨ。
ローマ帝国の公用語だった、あの『ラテン語』も、古代のメソポタミアで使用されていた、楔形文字で表記していた『シュメール語』だって、古代バビロニアの『アッカド語』だって・・・一度も、「現代語」として復活したことはないでしょう・・・?
そんな変わった、そして、魅力あるこの言語を、謹んで、日頃お世話になっております皆様にお届けしたいと・・・このように考えた次第であります。 m(_ _)m
さて・・・この「多言語学習エッセイ」は、ちょっとした「寺子屋」の形態をとっておりますが、「語学塾」ではなく、あくまでも、「言語紹介エッセイ」ですので、詳しい文法上の解説などは省略させていただきますネ。
では、さっそく行ってみましょう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヘブライ語は、世界で最も古い言語のひとつです。
そして現在では、イスラエルの公用語になっていますね。
中東の片隅で生まれた、この言語。
実は、意外なところで私たち日本人になじみが深いものとなっております。
日本の子供たちが小学校で踊る、「マイム・マイム」というダンスがあります。
皆さんも、一度は踊った経験がありませんか・・・?
実はこの「マイム」という単語・・・日本語で「水」という意味なんです。
これはですね・・・砂漠地帯が多く、飲み水の確保に日々苦労した、この地帯の人々が、オアシスを見つけた際の喜びを表わす、「マイム、マイム、マイム!(= 水だ、水だ、水だ!)」という内容の、喜びのヘブライ・ダンスだったんですね。
また、中高生になってから、音楽の授業でよく歌う、「ハレルヤ・コーラス」の「ハレルヤ」も、実は、「神を賛美せよ」という意味のヘブライ語です。
その他、キリスト教用語として知られております、「アーメン」という言葉も、「かくあれかし」という意味のヘブライ語だったんですヨ。
また、皆さんは、小学校の音楽の時間に、「今日の日はさようなら」という歌を歌ったご経験はありませんか・・・?
「♪ いつまでもたえることなく、ともだちでいよう・・・」の、あの歌です。
この歌の副題に、「シャローム」という横文字がつけられていませんでしたか?
実はこの単語・・・「シャローム(= シャロム(= םולש)」というヘブライ語だったんですね。
意味は・・・「こんにちは」。
以下、ウィキペディアより。
【ヘブライ語で「平和」を意味する言葉。ヘブライ語の挨拶のひとつでもあり、日本語の「こんにちは」に相当する。
シャーローム・アレイヘム(返すときはアレイヘム・シャーローム)は別れの挨拶であり、安息日の夜に歌われるピーユートの名称でもある。】
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヘブライ語は、アラビア語やペルシア語同様、右から左に書きます。
これは、古代イスラエル人が、ノミをハンマーで打って、石に文字を刻んでいたために、右から左に書くようになったからだといわれています。
ヘブライ文字は、約3000年前に書かれた聖書の文字で、聖書時代から使われてきました。
そしてヘブライ語は、現在のイスラエルがある「カナン地方」に住んでいた、古代イスラエル人(= のちのユダヤ人)の言葉であり、旧約聖書時代の人々の話し言葉です。
2000年前に現れた、私も皆さんもよく知る、あの人物・・・そう。「イエス・キリスト」も、このヘブライ語を話していたといわれています。
ところが、紀元70年。
ローマ帝国によって、ユダヤの王国が征服されると、ユダヤ人たちは世界各地に離散し・・・時とともに、いつしか、ヘブライ語を話す人々は、消滅してしまいました。
・・・しかし、聖書に書かれたヘブライ語は残りました。
そして、国を追われても「ユダヤ教」を信じ続けたユダヤ人たちは、毎日、ヘブライ語の聖書を朗読し、聖書の言葉を用いた「祈祷」は、ヘブライ語で行なわれました。
つまり、日常の会話は、離散して行き着いた国の言葉を話していたけれども・・・ヘブライ語は、「聖なる言葉」として、ユダヤ人の間で失われることなく、残り続けたのです。
そして、20世紀の「イスラエル建国」とともに、ヘブライ語は、「話し言葉」として復活・・・カムバックしたのです。
私は、この「復活」「カムバック」という言葉が大好きです。
以前紹介しました「ジョージ・フォアマン」のエッセイでも、この「カムバック」という言葉が、私の座右の銘のひとつである、と述べました。
「復活」「カムバック」「再起」「再生」「リバイバル」「再始動」「再出発」「リスタート」・・・そして、「再会」。
そのどれもこれもが、「戻ってくる」「帰ってくる」「もう一度」「またここから」という意味合いを持った、素晴らしい珠玉の概念です。
倒されても、踏みつけられても、たとえ焼き尽くされたとしても・・・最後の最後まであきらめずに、何度でも「灰」の中からよみがえり、立ち上がり、力強く、前に向かって歩き出す・・・そんな「不死鳥」・・・「フェニックス」のような雄々しく強い存在になりたい・・・私は日々、そのように考えて生きております。
もうひとつ。
私の座右の銘に、「It's not over till it's over.」(イッツ ノット オーバー ティル イッツ オーバー)があります。
意味は・・・「最後まであきらめるな!」です。
ついでにこれも。
「待つ者にこそ、幸いあれ!」(= 「果報は寝て待て。」)
では、続いて、そのヘブライ語の素晴らしい「復活劇」を、拙い解説で申し訳ないのですが・・・ゆっくりと紹介してゆきたいと思います。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
イスラエル人は、ある人物をとても尊敬しています。
『エリエゼル・ベン・イェフダー( 1858年1月7日 - 1922年12月16日)』。
ヘブライ語の復活のために、その生涯をささげた、偉大な人物です。
彼は、19世紀の終わりから20世紀にかけて、世界各地に離散したユダヤ人を一つにするため・・・また、ヘブライ語を共通の母国語とするために、書き言葉ではなく、「話し言葉」としての「生きたヘブライ語」の復活のために尽力しました。
イェフダーは、2000年もの間、ユダヤ人の間で守られてきた、「聖書のヘブライ語」をもとに、ひとつの言語を作りました。
・・・それが、今回紹介しております、『現代ヘブライ語』です。
しかし、『現代ヘブライ語』として復活するにあたり、現代の科学や技術、政治や文学などの、「聖書時代」にはない、物や概念を表わすために、何千もの新しいヘブライ語の単語を創らねばなりませんでした。
そのため、アラビア語などからも、多くの単語(= 借用語)や表現が取り入れられています。
ただ、「現代ヘブライ語文字」は、3000年前に書かれた聖書のヘブライ語と全く同じであり、その文字で、現代の新聞や書籍、雑誌にいたるまで、令和の今現在でも、この文字で書かれていますね。
この、「話し言葉」としての『現代ヘブライ語』は、徐々にユダヤ人の間に広まり・・・1948年の「イスラエル建国」のときに、正式にイスラエルの公用語となりました。
そして今日では、500万人もの人々が、この『現代ヘブライ語』を話しています。
あるとき、エルサレムにある、ベン・イェフダーのお墓が、落書きされ汚されてしまったことがありました。
ところが、ベン・イェフダーの遺族は、「この落書きこそが、ベン・イェフダーの完全な勝利を証明している!」と宣言したのです。
その落書きが・・・他の言語ではなく、『現代へブライ語』で書かれていたからです!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
では、この古代から伝わる、「古い言語」であり、また、現代に復活した「新しい言語」である、素敵な『現代へブライ語』の特徴を簡単にではありますが、ここで紹介させていただきますネ。
ヘブライ語のアルファベットのことを、「アレフヴェート」といいます。
全部で22文字あるのですが・・・実はこれは、すべて「子音」であり、「母音」を表わす文字は、ありません。
この「母音」に関しましては、私たちの日本語と同じ、「あいうえお」の5つなので、発音という観点から見れば、学習しやすい言語である、といえるかもしれませんね。
そして、ここがヘブライ語を学ぶ外国人にとっての「やっかいな壁」なのですが・・・ヘブライ文字は、原則として「子音」だけを表わし、「母音」は表記されないんです。
もちろん、イスラエルの人たちは、子音だけでも、スラスラと読めちゃうんですけれどネ・・・。
現代ヘブライ語の新聞や書籍は、ヘブライ文字(子音字)だけで印刷されますが・・・辞書や子供向けの本、詩集など、一部の出版物には、「母音記号」が用いられます。
ちなみに、この母音記号を「ニクダー」(あるいは「ニクード」)といいますが・・・興味のある方は、ウィキペディアなどでお調べになるのもいいかもしれませんね。
まぁ・・・わざわざ、こんな記号を使うくらいですから、現地の幼児はもちろん、私たちのような外国人の「初学者」が、この「ニクダー」の助けなしに、いきなり子音ばかりのヘブライ文字の「原文」をスラスラと読むことは、まずできません。
ピンとこない方は、ちょっと想像してほしいんでありますが・・・たとえばですね、ローマ字で書かれた、「KOISIIKIMI(=恋しい君)」という表現があったとします。
ここから、もし「母音」を取り除いてしまったとしたら・・・。
「KSKM」
??????????
ナンダコリャ!?
つまりはですね・・・こんな感じになっちゃうんですヨ。
それにしても、すごいですよねぇ・・・イスラエルの人たちって。
こんなのを、苦もなく、まいんち読んでるんですからね・・・。
こうしてエラそうに「レクチャー」している、このサファイアの涙もですね・・・実は、この「ニクダー」なしでは、正直、まだまだキツイっす(泣)。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ではここで、『現代ヘブライ語』の音声を聴いてみましょう。おなじみのYouTube動画ですネ。
『The Sound of the Modern Hebrew language (UDHR, Numbers, Greetings, Words, & Story)』
→ UP主様は、「ILoveLanguages!」様。
ついでにコレも。
『The Sound of the Yiddish language (Numbers, Greetings & UDHR)』
→ UP主様は、「ILoveLanguages!」様。
これはですね・・・『イディッシュ語』といいましてね、字面から見れば、「ヘブライ文字で表記された、ドイツ語の方言」といった感じでしょうか。
実際には、「方言」ではなく、れっきとした、ドイツ語とは違う、独立した「別言語」なんですけどね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
では、せっかくの機会ですから、その『現代ヘブライ語』の簡単な会話を、ここで紹介してみますネ。
美絵子:「? Shigeo התא .Mieko ינא .םולש」
茂雄:「.Shigeo ינא ,כן.וֹואת םיענ.ואגיש」
美絵子:「?בלֶכֶּ ?הז המ .וֹואת םיענ」
茂雄:「.Ryousaku וםש .לותח הז .אל」
美絵子:「!ופוי」
茂雄:「.דלנ ארב .הדות」
~ ~ ~ ~ ~
(読みと意味):上記の「原文」の方はですね・・・単語ごとに、「右から左へ」読みます。この下記の「カタカナ読み」は、左から右へ、いつもどおり素直にお読みくださいませ。
美絵子:「こんにちは。 私は、美絵子です。あなたは、茂雄さんですか?」
(シャロム。アニ、ミエコ。アタ、シゲオ?)
茂雄:「こんにちは。初めまして。はい、私は茂雄です。」
(シャロム。ナイム メオド。ケン、アニ シゲオ。)
美絵子:「初めまして。それは、何? 犬?」
(ナイム メオド。マ ゼ? ケレヴ?)
茂雄:「いいえ。これは、猫です。名前は、『良作』。」
(ロ。ゼ ハトゥル。シュモ、リョウサク。)
美絵子:「素敵!」
(ヨフィ!)
茂雄:「ありがとう。さあ、行きましょう。」
(トダ。ボ ネレフ。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
では最後に、私が細々と、ゆっくり取り組んでおります、学習書を紹介して、今回のエッセイを閉じたいと思います。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
m(_ _)m
~ ~ ~ ~ ~
1.『CDエクスプレス 現代ヘブライ語』:白水社
2.『ニューエクスプレス 現代ヘブライ語』:白水社
3.『まずはこれだけ ヘブライ語』:国際語学社(絶版)
4.『現代ヘブライ語辞典』:キリスト聖書塾