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今一度、原点に立ち返り、
連合国の兵士たちは選択を決めた。
背筋を伸ばし、敵国の人間に
意志を伝えた。
「もし見逃していただけるなら
撤退させていただきたい」
敵からの施しを受ける形になるが、
惨めさや屈辱は感じていない。
今の彼らには職務を
果たすことが全てだった。
「ふっ、そうか。立派だな」
ラントはヒメを横へ押しのけて
兵士たちの目の前に立つ。
「それを俺が許すとでも?」
「!?」
大地が揺れる。
感覚的なものかもしれないが、
ともかく急に直立が難しくなった。
その原因は間違いなくこの男である。
娘の言は正しかった。
こんなもの、最初から逃げるしか
選択肢がない。
「後ろ三人、帰投しろ!
他はこいつの足止めだ」
すぐに隊列を組み
離脱する兵への道を阻む。
ずんずんと無言で近づくラント。
剣を向けるもただの枝のように
払いのけて兵士を掴みあげる。
「隊長!!」
周りの兵たちが取り戻そうと
ラントを切りつける。
しかし、まるで効果がない。
隊長の目に捕食者の視線が刺さる。
ゆっくりとラントの口が開く。
「許すっ!」
「ぐっ! ん?」
死を覚悟したが
意外にもラントの言葉は
好意的で周囲を驚かせた。




