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悪手_3
王子は諭すように答えた。
「爺の真意は分かっている。
他国より先んじて功績を上げることで
発言力の弱い我が国の立場を強める
つもりだろう。
お前にそのような提案をさせたのは
武勲を立てられない私の責任だ。
弱い私を許してくれ」
「何を仰るのですか!
王子が弱いなど誰も思っておりません!」
「よい、事実だ。
私は死ぬのが怖い。だからいつも逃げている。
そして、今回も私は逃げる。
臆病者と罵ってくれてかまわない」
信頼に応えられずすまない、と
王子は静かに侘びた。
いたたまれない気持ちの付き添いたちは一度黙った。
しかし、やはりまだ諦めきれなかった。
「ですが!」
「そうだ。そんな事をされたら
ラントが困るだろう」
王子たちは突然の声に陣を組んだ。
声は入口の扉から聞こえる。
唾を飲み王子たちは扉を凝視した。
ノックもなく、扉が木片を撒き散らして割れた。
ドアノブがついていた場所を
腕が貫通し、穴を開けた。
「ラントさん、登場!」
新たに開いた穴から狂人が顔を出した。
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