53/301
悪手_1
コン コンコンコン コンコン
「誰だぁ、こんな時間にぃ?」
コン コンコッコン
薄暗い路地裏の扉が開いた。
先の不規則なノックと酔っぱらいの
やり取りがなければこの扉は
今も固く閉まっていただろう。
「お待ちしておりました、王子」
ひざまづく数人に囲まれ、
今までラントと話をしていた使者たちが、
上着を脱いだ。
王子と呼ばれた男は
疲れた様子で椅子に腰掛け、
水を一杯煽った。
「いかがでしたか。この国の新しい王は」
王子は目を伏せて黙ったままだった。
代わりに付き添いの一人が話す。
「とんでもない無礼者だったわ!
礼儀も知らんし、人としての倫理もない!
あのような蛮族が王を名乗るだけでも腹立たしい!
いいや! 自己紹介もせんし、こちらへの興味を
全く示さん! こんな屈辱は初めてだ!」
激昂する付き添いの言葉に
聞いていた者たちも怒りを覚え、
口々にラントへの暴言を吐いた。
「よい」
王子が手を上げて制すると、
罵倒がピタリと止まった。
「すぐにこの街を。
いや、この国を発つ。準備しろ」
王子の決定にラントへの暴言を始めた付き添いが
意見をあげた。




