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胎動_5
受けた者は多かろうが、
被害らしい被害は皆無のように見える。
そこへ苦しげに倒れた男が一人いた。
「うっ、うぅおっ」
ラントは大の字で空を仰ぎ、
息を切らしていた。
「はは。ははは。やりきった。
これは、なかなかに堪えるな」
先の技の反動か、ずいぶんと
体力を消耗していた。
「はは、なら…逃げるか」
ラントは笑いながら踵を返す。
「待て。そんな勝手が
まかり通ると思うのか」
総司令に代わり副官が
ラントを呼び止める。
「通らんな。だから逃げる。
敗残兵らしく尻尾を巻いて
逃げるつもりだ」
「させるものか。
お前には果たすべき責任が
山ほどある。このまま黙って
行かせるはずがないだろ!」
「ふむ」
少し考えて、ラントは向き直った。
「なるほど、もっともだ。
俺が放棄するかは別として、
敗者に要求することは正しい。
戦死者への弔問ならば
この場で果たそう。本当に御愁傷様だった」
ラントはなんとその場で頭を下げた。
「しかし、聞くがお前たち。
そんなことにかまけてられる
暇があるのか?」
「なんだとーー」
その時、どこかから地響きが聞こえた。




