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胎動_1
「戦狂いは認めるが、獣扱いはよせ。
俺だって人間だ」
先日、ヒメはラントがそう言うのを聞いた。
しかし、到底そうは思えなかった。
全軍を挙げてたった一人を
倒せないはずがない。
おそらく本体が別にあるとか
そんなおとぎ話の悪魔みたいな
トリックがあるにちがいない。
「弱点ぐらいある」
「例えば?」
こんなに容易く強さの秘密を教える
はずもないが、聞けるだけ聞いてみようと思った。
「心臓と脳を抉られたら死ぬ」
しかし、返ってきたのは
そんな当たり前のことだった。
「心臓と脳……!?」
今、視界にいるラントは
刺されて潰されている、心臓だけを。




