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第一部 第九章

「あんたはどうするんだ? 」


 部隊長のクルスがそう魔王クルシュに聞いた。


「三百年待ったんだ。もう次は会えないかもしれない。例え滅びるとしても最後まで戦うつもりだ」


 魔王クルシュがそう話す。


「そこまで想う相手なのかは別として、何というか素晴らしいですね」


「確かに。そこまで想う相手なのかは分からないけど、良い話だな」


 そう部隊長のジェームスとテイラーがそう笑った。


「お前らの言い方っ! いや、姪なんだけどな! 」


 叔父の将軍が叫んだ。


「だから、お前達を巻き込む気は無いよ」


 そう魔王クルシュがスタンリー公爵家のものである紋章を甲冑から剥しだした。


「え? 一人で行くの? 」


「ああ」


 叔父の将軍が驚いた。


「それは無茶だ」


「たった一人でか? 」


「一応、魔王なんでな。諦めが悪いんだ」


 そう魔王クルシュが皆に苦笑した。


「随分、助けて貰ったからなぁ」


 そうテイラー部隊長も紋章を剥した。


「はああああああ? 」


 叔父の将軍が焦った。


「どうする気だ? 」


「一人くらい一緒に行く奴がいた方が良いだろう」


 そうテイラー部隊長が笑った。


「待て。俺も行くぞ」


「仲間を見捨てたとあっちゃ、笑われるからな」


 そうヘンリー部隊長もジェームス部隊長も紋章を剥いだ。


 それを見て部隊長の傘下のものが一斉に紋章を剥ぎだした。


「いやいや、お前らまでしなくても良いんだぞ? 」


 クルス部隊長が紋章を剥ぎながら苦笑した。


「いや、負けたら、とてもこれからスンタリー公爵家が持つとは思えませんし」


「まあ、魔王クルシュの恋の為ってのもしゃれてますよ」


 そう騎馬軍団の騎士達が紋章を剥ぎながら笑った。


「趣味が悪いとは思うけどな」


 ジェームス部隊長が呟くと皆から哄笑が拡がった。


「いや、言い方っ! 」


 叔父の将軍が言いながら紋章を剥いだ。


「いやいや、あんたはまずいだろ」


 魔王クルシュが呟いた。


「いや、そういや十年くらいの付き合いになるが、勝算の無い戦いはしないタイプだったもんな。多少は勝つ可能性があるんだろ? 確かオブライエン侯爵家に近い全てを見通す目に近いものを持ってると口を滑らせた事があったよな」


「よく覚えてるな」


「記憶と分析だけは得意でな」


「五分五分だがな。ルイーザのとこに俺がたどり着ければ勝てる」


 そう魔王クルシュがそう断言した。


「なら、皆でやるさ。ただ、何が何なのかは分からんけど」


 そう叔父の将軍が笑った。


************************


 凄まじい馬蹄の音が城郭に響く。


「ちょっと! 何で戦闘隊形? 」


 ルイーザが驚いた。


「あららら、何と言う展開だ。やっぱり、あれがいるのか」


 そうスタンリー公爵が呻いた。


「は? 何かあるんですか? 戦ったらスタンリー公爵家も終わりじゃないですか? 」


 そうアルバート守備隊長が苦笑した。


「いや、オブライエン侯爵が約束を守ると思うか? 」


「全然」


 スタンリー公爵がそうアルバート守備隊長に聞くと、アルバート守備隊長が破願して首を振った。


「結局、合戦しかないんだよなぁ」


 スタンリー公爵がため息をついた。


 その反対にオブライエン侯爵家側は貴族達が動揺していた。


「攻めてくるだと? 」


「本領安堵では無いか! 魔王に義理立てしてどうする! 」


 貴族達が口々に呻いた。


「オブライエン侯爵、大丈夫なのか? 」


 アルフォソ王子が心配そうに聞いた。


「ご安心を全てを見通す目の通りの展開です。後は一騎打ちで私が魔王クルシュを倒すだけですから」


 そうオブライエン侯爵が笑った。


 それで皆が少し落ち着いた。


「さあ、奴等を撃退だ! 」


 そうオブライエン侯爵が盾を重ねて、防御を固くする形でスタンリー公爵家の騎馬部隊に迎え撃った。


 オブライエン侯爵が騎馬部隊側に配した戦上手の傭兵団が迎え撃つが、騎馬部隊のボウガンで次々と打ち取られて行く。


「何だ、あの威力は? 」


「あれが奴らの新兵器か? 」


 オブライエン侯爵側の貴族達が動揺していた。


「騒ぐな! 傭兵達が新兵器の相手をする! 心配するな! 奴らの武器は二回撃ち終われば終わりだ! 」


「まさか、傭兵団はスタンリー公爵家の兵器を撃ち終わらせる為に配しているのか? 彼らを犠牲にして? 」


「それが彼らの役目ですから」


 オブライエン侯爵の言葉にアルフォソ王子が異を唱えたが冷やかに苦笑されただけだった。


「何という」


「いずれ、貴方は王になられます。政治と戦は非情な計算が必要なものですぞ」


 そう動揺しているアルフォソ王子をオブライエン侯爵が教え諭した。


 だが、想定より騎馬軍団が強く貴族の騎士が居るところまで馬の横に据え付けた槍で斬り込んで来る。


 ボウガンを撃ち尽くすと構わず槍で騎馬軍団が突入を開始したのだ。


「話が違う! 」


 貴族達が騒ぎながら槍で貫かれた。


「違わない! 最初から一騎打ちなのだ! 」


 そうオブライエン侯爵が槍を持って騎乗した。


 その眼前に魔王クルシュの騎馬が肉薄していく。


「ふははははははは! お前が斬りこんで来るのも予見済みよ! そして、貴様の魂が城郭がアルフォソ王子の力で封じられたことで消えて行ってる事もな! 」


 そうオブライエン侯爵が笑った。


「その予知では俺はどうなっているのだ」


 そう魔王クルシュが哂いながらオブライエン侯爵に肉薄した。


 すでに魔王クルシュの身体が消えだして、甲冑の肩とか手の甲とかが身体が薄れたせいで一部の篭手などがガチャリと下に落ちていく。


「お前が愛する人に会う為にここまで戻り、わしと戦って身体が消えて無くなるのは分かっている! 」


 そうオブライエン侯爵が槍を振り回して、身体が薄れてく魔王クルシュに一合を浴びせた。


 それを魔王クルシュが消えかけた身体で受ける。


「そうか、安心したよ」


 そう魔王クルシュが笑った。


「おっさん! 身体がっ! 」


 ヘンリー部隊長が叫んだ。


「俺の本来の魂がある水晶を城郭ごと封じられているんだ。当たり前だ」


 そう苦しそうに魔王クルシュが笑っている所にオブライエン侯爵が槍の一撃を浴びせた。


 それを魔王クルシュが受けきれなくて、横から騎馬で突進して来たヘンリー部隊長が受けた。


 すでに魔王クルシュの踏ん張る為の左足が殆ど消えていた。


「ちょっと! クルシュっ! 」


 その異常な姿を見てルイーザが叫んだ。


「まずい。身体が消えていっている」


「封印のせいだ」


 城郭から見ていたアルバート守備隊長が騒ぐのを横のスタンリー公爵が答えた。


「そんな! 」


「バルカスに祈れっ! 今のお前なら出来るっ! 」


 焦るルイーザにスタンリー公爵が叫んだ。


「どうやって? 」


 ルイーザが動揺して答えた。


「ぐうっ! 」


 その時、さらに魔王クルシュの身体がさらに薄れていって呻いた。


「おっさん! 」


「良し! 再度、別の騎士の手助けが来る! 予知通りだ! 」


 ヘンリー部隊長がオブライエン侯爵を槍で薙ぎ倒そうとした時にそれを分かっていたように避けて、槍を突きに変えてヘンリー部隊長の肩を突いて、馬から突き落とした。


「ぐはっ! くそっ! 」


 ヘンリー部隊長が肩の甲冑の付け根を貫かれて血を吹き出して倒れた。


「そして、ここだっ! 」


 オブライエン侯爵がその横をすり抜けようとした魔王クルシュをそうするのを知っていたように突いた。


 魔王クルシュの甲冑をオブライエン侯爵が槍で貫いた後に魔王クルシュが静かに消えた。


「残念だよ。未来は変えられないのだ」


 そうオブライエン侯爵は消えた魔王クルシュの身体が消えて、残っていた鎧を貫いた槍ごと突き上げた。


「オブライエン侯爵が魔王クルシュを打ち取ったぞ! 」


 周りの騎士達が一斉に叫んだ。


「嘘! 」


 ルイーザがそれを衝撃を受けた顔で城郭の上から見ていた。


 


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