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ルイーザ 第十一部 第六章

「暗雲と雷鳴が止まった」


 そうクリス部隊長が呟いた。


 その瞬間、騎馬で進んでいた魔王クルシュが呻いて落馬した。


「ど、どうした? 」


 麗王がそれを見て叫んだ。


 前方の遠くの水龍神ラトゥースのいるあたりの異変を感じて、誰かが落馬する音を聞いて、背後の仲間を見たのだ。


「ええええ? 何が一体」


 叔父の将軍が困惑していた。


 魔王クルシュが胸の甲冑を外して投げ出して、中の麻の服を脱ぐと自分の胸をはだけた。


 そこにある水龍神ラトゥースの紋章が消えかかっている。


「そ、それは……」


 麗王がその消えかかった紋章を見て呻いた。


「まずいな。昔もあったな。神殺しか何かで攻撃を受けたらしい。死にかけのようだ」


 そう魔王クルシュが呻いた。


「えええ? 」


「神殺し? 」


 叔父の将軍とクリス部隊長が叫んだ。


「ああ、良くあるんだ。三回目かな」


「確かにな。また、やられたのか……」


 麗王と魔王クルシュが冷静に話す。


「いや、大丈夫なのか? 」


「大丈夫だろ。前もしばらくしたらケロっとして出て来た」


「その間の加護が無くなるだけだな……」


「いや、冷静だな! 」


「昔は神殺しって良くあったから」


「特に、水龍神ラトゥース様は恨みを良く買っていたからな」


 そう冷静に淡々と麗王と魔王クルシュが話すので、調子が狂ったような顔をクリス部隊長がした。


「あ、消えてしまった」


「本当だな」


 魔王クルシュが胸の水龍神ラトゥースの紋章が消えたのを見て冷静に呟くと麗王も無言で頷いた。


「いやいやいや、これから戦いだって時に加護無しだと、まずいんじゃないの! 」


 テーラー部隊長が叫ぶ。


「いや、これで良いんだ。人と人の戦いは人間がつけないといけない」


 そう麗王が皆を見回して力強く答えた。


 皆がその力強い言葉を聞いてほっとしたような顔をした。


「その通りだっ! 」


 その麗王の前にカイゼル髭の上半身裸の酒と武の神のバルカスが現れた。


「ぁあ? 」


 麗王が変な声を出して呟いた。


「その通りだよっ麗ちゃん! 今こそ、人と人との戦いを肉弾戦でつけるべきだ! 魔法なんて邪道だよ。電撃とかそう言うのでケリがつくようでは駄目だ! 今こそ、顕現だよ! 」


 酒と武の神のバルカス神が熱く語る。


 皆が顔を見合わせた。


 魔王クルシュとかが言ったとおりの性格なんでうんざりしていた。


「ぶっちゃけ、風を操ったり、電撃を使ったり、爆炎を使ったりって出来ないから、そう言う風におっしゃってんでは無いんですか? 」


 そう、麗王が冷やかに突っ込んだ。


「違うよ! 麗ちゃん! 男と男が殴り合って分かり合う! 好敵手と書いて友と呼ぶ! これだよ! 男はね! 拳で語り合うものなんだ! 」


「いや、私は女なんですが……」


「いや、麗ちゃんなら大丈夫たよ! 」


「どういう意味だ! ゴラァ! 」


 麗王がキレた。


「ははははははは、神にだって怒鳴れるんだ! 男だって余裕余裕! 」


「男みたいって言いたいのかっ! 」


「そんなところを全部含めて麗ちゃん、なんだよ! 」


 酒と武の神のバルカス神が微笑んだ。


「どんなところが含まれてんだ、ゴラァ! 」


 麗王がガチギレしているが、それをまるで娘に怒られたように嬉しそうに微笑み続ける。


 ああ駄目だって顔で叔父の将軍とかが顔をしかめた。


 マヂで魔王クルシュが言う通りじゃんと皆がドン引きしていた。


 それは男親にたまにいる、まさに娘に怒られても構ってもらいたい困ったパパの姿だったからだ。



  


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