ルイーザ 第十一部 第五章
「やっぱり、変わらんな」
教王は漁船団の一際大きな漁船の上で呻いていた。
電撃で痺れてはいたが、それはまだ彼らのような猛者には何とかなった。
だが、それ以外の兵士は洗脳しているとはいえ、目の前で、プカプカ浮かんでいる変死体みたいな海底人とのたうち回るカルディアス帝の艦隊の艦艇の兵士達を遠目で見てドン引きするとともに、電撃の痺れに耐えていた。
洗脳されているものとかでも、電撃は響く。
彼らは少し怯えていた。
「流石だ。俺のライバルなだけはある」
<黒きもの>がそう呟いた。
だが、仲間達は単に、お前、昔に負けたからだろと突っ込みたいような顔をしていた。
「どうします? 最初に仲間の艦隊を呼んでましたから、恐らくはここにしばらくしたら敵の艦隊が来ます。今なら、あのクシャナ帝国の艦隊を動かすほどの兵士はいないように見えますが、バリスタとかは使えそうですけどね」
そう<白きもの>が教王に聞いた。
「お前の力で勝ちに向けれないか? 」
そう教王が聞いた。
戦の上で、不確実な運をコントロール出来る能力は実はチートである。
その異常な能力を持つのが<白きもの>であった。
「難しいですね。どうとも言えない。天運と言うものが彼らにあります。転移させたものだけにある勇者のようなものでしょうかね。そして、不確実性の問題で言えば、こちらに向かっている武王……魔王クルシュも厄介ですぞ。貴方にとっては最大の弱点では無いですか」
「ううむ」
そう言われて、教王の心臓がトクンと高鳴る。
そして、周りに花が咲くのだ。
頬を染めて、トクンと鳴る心臓を抑える教王はまるで少女漫画のヒロインであった。
姿はアルフォソ王子なのに。
心はおっさんと言うよりは爺さんに近い教王なのに。
それほど、心の中にいる楓の影響力は半端でなかった。
そう突っ込まれただけで、制御できないほど心と身体が反応する。
配下の者は皆、ドン引きしたようにそれを見ていた。
「いや、私じゃ無いからな……」
そう頬を染めて教王がドキドキしながら反論した。
だが、それすらも、乙女の姿になっていた。
「楓殿に呑まれないようにしてくださいよ」
それを見て、一番達観していて、未来をも見通せる<白きもの>が忠告した。
だが、それは藪蛇だった。
「え? まさか、俺が魔王クルシュとくっつくと言うのか? 」
そう教王があまりの動揺に呟いてしまった。
そうしたら、中の楓が止まらない。
心臓は早鐘を打つように鳴り響き。
トロンとした顔で頬を染めていた。
繰り返すがアルフォソ王子の姿のままで。
その姿を見た漁船団の洗脳されて信仰心と忠誠心溢れる者たちが全員凄い動揺したのは間違いなかった。
そのせいで、艦隊を包んで叩くはずが、散開した漁船団は動かなかった。
それを相対しながら、カルディアス帝達も唖然としていた。
とりあえず、最低数はバリスタとカタパルトに配備させて、漁船団が近づいて来たら潰す用意はさせていた。
だが、こちらのクシャナ帝国の艦隊も兵士が船酔いと電撃で足りず動かすことが出来なかった。
そのせいで、双方はしばらくの間、膠着状態になった。
勿論、戦えばただでは済まないので動けないのだ。
かくして、時間は無駄に流れていった。
その間、教王の心臓は止まらなかった。
これが恋と言うものか、などと教王が思ったのがいけなかった。
純粋に教王は野望と権謀策術に血道をあげていたので、恋などしたことが無い。
それで冷静にこの反応を驚いている部分があって思ってしまったのだが、それがさらに少女漫画のヒロインモードを加速させて、その結果周りがさらにドン引きすると言うとんでもないループになってしまっていた。
周りに飛び散る背景のような花が止まらない。
教王の凄まじい魔力によって、楓の深層心理の昔読んだ少女漫画の恋の一コマの風景が現実になるのだ。
これにどれほど周りがドン引くか分かるだろうか。
まさかの少女漫画インパクトであった。




