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ルイーザ 第十一部 第一章

 酒と武の神のバルカス神をその場に残したままで、麗王が率いるスタンリー公爵家の部隊は、そのまま無言で北部オルスに向かって進軍している。


 麗王はぶすっとしたまま、軍から少し離れた先頭を騎馬で進んでいた。


 麗王だけが突出するのもまずいから、叔父の将軍と魔王クルシュやクリス部隊長とテイラー部隊長が手勢を一部連れて、麗王の近くまで騎馬を進ませた。


 何とか話をしたいところだが、麗王はぶすっとした顔で黙ったままだ。


 叔父の将軍は動揺した顔で焦っていた。


 何しろ、我がスタンリー公爵家の守り神たる酒と武の神であるバルカス神を置いてきてしまったのだ。


 それは守り神無しの戦いを意味している。


 将軍の立場としてもそれは見過ごせない。


「良いのかな? 」


 それとなく、麗王に聞こえるように叔父の将軍が話す。


 だが、麗王はその言葉を無視したままだ。


「あの? バルカス神は大丈夫なんですかね? 」


 クリス部隊長が叔父の将軍の気持を察して横からさらに聞いた。


 だが、麗王は無視している。


「大丈夫なの? 」


 テイラー部隊長が仕方なく魔王クルシュに聞いた。


「大丈夫だろ。いつもの事だから、この程度で心が折れる様な御方では無いし」


「折れる様な御方ではないって? 」


「ちゃんと、追っかけて来て、なんだかんだで麗王と顕現だってやろうとするよ。あの御方なら。いつだってそうだから……。懲りないのがあの御方の凄い所だから……」


「いや、でも、あんな無礼をしたのに……」


「いや、なんだかんだ言っても麗王の事を娘の様に思ってるから、冷たくあしらわれるのも喜んでやってるんだよ。……あの御方は」


「ぁあ? 」


 魔王クルシュのぶっちゃけ話に麗王が初めて反応した。


「いや、いつもだぞ。我があの子を支えてやらねばって優しい目をして遠くから見てた事もあるし」


「あああああ? 」


 異様にキレ気味の声を麗王があげた。


「いや、結構、きつい事を麗王に言われても内心、喜んでんだぞ。男親とかでたまにいるタイプだ。娘に怒られたりしても構って貰えるのを凄く喜ぶタイプ」


「うぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」


 麗王がたまらず叫ぶと馬を走らせ出す。


 それは凄いスピードだった。


 凄いショックだったようだ。


「おいおい」


 慌てて皆がそれを追いかけた。


「ほらほら、余計な事言っちゃうからさ」


 叔父の将軍がそう魔王クルシュに愚痴る。


「いや、だって、本当の事だし」


 魔王クルシュが拗ねたような顔をした。


「そうか……父親代わりのバルカス様に、恋人は魔王クルシュか……どちらも懲りないし、ずっと見守り続けると……」


 そうクリス部隊長が小さな声で呟きながら、それってストーカー二人に追いかけられてる事だよねって思いながら、両手を合わせて祈るような仕草をした。


「男運悪いよな」


 横で同じように小さな声で呟いてテイラー部隊長も両手を合わせて祈るような仕草を続けてした。


「何ですとぉぉぉ! 」


 小さい声なのに、魔王クルシュがその言葉を聞きつけて叫んだ。


 自分への悪口は良く聞こえる男だった。


 そんな訳で、彼らの進軍は急に速くなった。


「馬が疲れるから、どっかで止めないと……」


 叔父の将軍がそんな騒がしい自分達の軍勢を見てため息をついた。


 

これは一日一章の投稿です。

 

いつも通り夕方に投稿予定です。


宜しくお願い致します。

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