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第一部 第八章

 凄まじい光の輪が城郭の外に輝きだす。


 それは天空で結ばれるように、大きな大きな城郭を封じる光のドームになった。


「なんだこりゃぁ? 」


「どういう事だ? 」


 守備兵達が一斉に慌てた。


「こりゃあ、お嬢様、どういう事です? 」


「いや、私も知らない」


 私も焦って答えた。


 兵士の幾人がボウガンを自分達を城郭ごと閉じ込めた巨大な光のドームを射た。


 そのボウガンの矢は光のドームに弾かれて矢が砕けた。


「このドーム。完全に俺達を封じ込める気だ」


 アルバート守備隊長が呻いた。


「ど、どういう事? 」


「なるほど、やはり知らなかったようですね。王家は魔王が復活するのを恐れて、もしもの時はこうやって、魔王ごと城を封じる様な魔法を準備していたのですよ。アクシェルの力を使ってね。ただ魔王クルシュは知ってたようで、本当は城ごと破壊して封じてしまうのだけど。……王子試しにやってみてください」


 オブライエン侯爵がアルフォソ王子にそう告げた。


 それで一瞬つらそうな顔はしたが、王子が別の王家の祈りの歌を歌いだした。


 その瞬間、ドームは急に狭まりだした。

 

 城郭の壁が光のドームが縮む事で崩れていく。


「こ、これはっ! 」


「何で? 」


 アルバート守備隊長と私が衝撃を受けた。


 だが、その時に、私から紅色の光がほとばしる。


 それと同時に真っ白に光り輝くドームが縮むのを抑えるように紅色に光り輝くドームが内側に出来て白く光り輝くドームが縮むのをぶつかり合って止めた。


「やはりな。本来はアクシェルと共に魔王を封じるはずのバルカスの封印が子孫を殺すのを防ぐか」


 そうオブライエン侯爵が呻いた。


「どうして、私から光が……」


「それはバルカス神の力だよ」


 そうお父様がいつの間にか現れて、そう私に告げた。


「これが? 」


「王家の封印で押しつぶされるのをバルカスの封印がお前達を守るだろうと魔王クルシュが言っていたんだ」


「ふーん。何で最初から言わなかったのよっ」


 そう私が言いながら背後に回ってお父様の頸動脈を魔王クルシュに習った裸締めで絞めた。


「いやいや、待って待って! 本当だと思わなかったんだよっ! 」


「知ってる事は洗いざらい吐けっ! 」


「いや、もうこれだけ。こんな凄い話が本当にあると思わなくて! 」


「ふざけんなっ! 」


 お父様が必死に暴れていた。


「ちょっと、お嬢。向こうがドン引きしてる」


 そうアルバート守備隊長に手をトントンとされて気が付くと、オブライエン侯爵だけでなく貴族も王子もドン引きしていた。


「あ……」


 慌てて恥ずかしくてしおらしく裸締めを止めた。


「いや、まさか。王子にやったことあるの? 王子が見てて震えてるんですけど」


 アルバート守備隊長がそうドン引きした顔で聞いて来た。


「ええええと。ずっと昔に? 」


「え? やった事あんの? そりゃ婚約破棄されてもしょうがないでしょうがっ! 」


 お父様もドン引き。

 

「いや、手が細いほうが極まり安いって魔王クルシュが……」


「将来の王妃がこんな事したらドン引きだよっ! 」


 アルバート守備隊長が流石に私をボロクソに言った。


「ええええ? 」


「マジで? 」


 周りの貴族だけでなく、オブライエン侯爵まで王子をドン引きして見てた。


 アルフォソ王子もいたたまれない顔をしていた。


「待って待って、子供の時だよ? まだ十歳くらいの時に……バラが咲き誇る庭園で白い豪奢なテーブルとイスに座って、バラを棒で叩いて落としてたアルフォソ王子を見て、いけませんよキュッと」


 そう私がしどろもどろに話す。


「いけませんよキュッとじゃないでしょうがっ! 婚約者のやる事じゃ無いじゃん! 」


 アルバート守備隊長が驚いて叫びまくる。


「王子っ! すいません! すいません! 」


 お父様が城壁の上から必死に土下座して謝る。


「いや、あの……王子……本当なんですか? 」


 オブライエン侯爵が驚いてアルフォソ王子に聞いた。


 アルフォソ王子がそっと目を反らせた。


 流石の全てを見通す目にもそれは見えていなかったらしく動揺していた。


「えええと……。とりあえず、予定通りスタンリー公爵家のものを封じれたので、それを書面にして叔父の将軍に届けてくれ。それで魔王クルシュの封印と武装解除で謹慎後、本領安堵は認めると……」


 オブライエン侯爵がしどろもどろに側近に命じた。


「はっ! すぐ届けます! 」


 即座に書簡を書くと封蝋で封印して印璽で刻印をして側近に渡した。


「いや、お前。いくら何でもこれは無いわ」


「お嬢、ちょっとやりすぎだ」


「いや、子供の時なんだってば」


 そう言う空しい話し合いが城郭から聞こえて、オブライエン侯爵達がドン引きしていた。


******************


「ああ、やっぱり来たか」


 そう魔王クルシュがオブライエン侯爵の手のものが届けてきた書簡を叔父の将軍が受け取ったのを見て呟いた。


「大体、何が書いてあるかは予想通りなんだよね」


「ああ」


 そう叔父の将軍に言われて魔王クルシュが頷いた。


「どうするの? 」


「いや、それはそちらの希望に任せる。どちらにしても最終的にやる事は同じだしな」


 そう魔王クルシュが笑った。


 それで、叔父の将軍が各部隊長に書面の話を伝えた。


 城郭は封印された。


 そして、魔王クルシュの魂を差し出すなら、謹慎後本領安堵で許すと。


「これ、信じれるんですかね? 」


 部隊長のジェームスがそう懐疑的に答えた。


「これじゃあ、オルス帝国を叩いた報酬とか無しでしょうね。そもそも組んでたとしか思えないような動きをしてたのに知らないふりをするみたいだし」


 そう部隊長のクルスが騒ぐ。


 スタンリー公爵家のものとしたら、間違いなく今までこの国を守っていたのは我々だと言う誇りがある。

 

 それで余計に苛ついたようだ。


「でも、ぶっちゃけ、バルカスの防御があるから、当面は死ぬ事ないんじゃないの? 時間を掛けられたら駄目だけど」


 そう叔父の将軍が呟いた。


 分析力とかは凄いのでそう答えた。


「いや、あの封印術やられると問題があるんだ」


 そう魔王クルシュが答えた。


「え? 」


「何? 」


 叔父の将軍や部隊長が驚いて聞いた。


「俺の身体が地下にあるからさ。地面の下まで封印が通ってるんだ。それで井戸の水が枯れる可能性がある。領民を詰め込んだのは水を使わせるためだろう」


 そう魔王クルシュが答えた。


「食料よりも水か? 」


「それはまずいな。水は流石に持たない」


「ああ、封印されると中の温度も上がるしな。水が減るのが早くなる」


「それは参ったな」


 そう叔父の将軍が魔王クルシュの言葉にため息をついた。


「ただ、王子がアクシェルの加護があるとしても、代を経ているからな。王子自身の力が持たなくなるのと水が無くなるのとが同時かくらいでは無いかと思うんだが……」


 そう魔王クルシュが考え込んで黙った。


「先は読んでたんじゃなかったのか? 」


 叔父の将軍が聞いた。


「読んでるが、ここから先はそちらの意見に合わせて動かないといけないからな。降伏するって言ってるのに俺が騒いでも仕方あるまい」


 そう魔王クルシュが答えると皆が黙った。



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