ルイーザ 第十部 第五章
「凄い戦いが続いてるようだな」
テイラー部隊長が食事を終えて、皆で再度進軍と決まって、馬に乗りながら、これから向かう予定の遠い海の方の黒雲を見て呟いた。
そこは更に黒雲が集まり、どんよりと厚くなって、こちらの方まで風が強くなってきた。
雷も何度も落ちているようで、その度に黒雲が光る。
「延々と攻撃をする気なんだろうな」
「その可能性が高い」
麗王の呟きを魔王クルシュが即座に頷いた。
「どう言う事? なんで、そんな無限の力が? 」
クリス部隊長が聞いた。
「神と言うものは、人の祈りと願いと念によって顕現する。あの御方は海風や海や川や泉に人が捧げた豊漁や安寧などの願いで顕現したのだ。その願いはあらゆる海で生活するものだけでなく、川の水を使う山の民すらも願う。なにしろ、人間にとって一番大切な水だから。それゆえに無限の力を持っている」
そう、魔王クルシュが説明をした。
「いやいや、それにしちゃ物騒な事ばかりしてるようだけど……」
「それは台風などが来た時にいろいろと考えないといけない親達と違って、子供は非日常感でワクワクするものがいるだろう? そういうワクワクの願いも詰まったのがあの御方なのだ」
「何だ、それ? 」
「本当に迷惑だな」
「かって、我々の前世の世界では台風が来たら「コロッケ」祭りと称して、冷めても美味しい「コロッケ」と言う料理を買って来てワクワクしながら台風を待つと言う祭りがあった。そう言う辺りはどこの世界も変わらないだろう」
「いや、台風が命に関わる自然災害として、全ての人間が生きていく事に向こうの世界より切実に関わっている世界なのだ。この世界では、そこまでは行かないと思うけどな」
麗王が呆れて呟いた。
「魔王クルシュは恐ろしい考えの世界から転生して来たんだな、知らなかった」
そう叔父の将軍がため息ついた。
「ふふふふ、六王達が呼ばれただけはあるのさ」
そう魔王クルシュが自慢気に話すので、麗王はあきれ果てた顔をした。
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「どう言う事です? 」
「聖地の領域が狭い。それと慌てて漁船を集めたのだろう。水と食料は積んでいないはずだ。となると、兵の水が足りない。海神ゆえに水は施せない。領域にある聖地の小さな小さな井戸しか無いはずだ。さらに、今後はあの狭い範囲で食料を探さねばならない」
「え? 」
クリトラオスがカルディアス帝に聞いたら意外な言葉が帰って来た。
「このまま、あの空間のまま嵐を維持されたら、兵達の食料も水も足りないという事ですよ」
「こんな形で、兵糧攻めするとはな。普通なら考えられない。流石、あの変態の守護神だけはある」
ロイド法王とコンラート皇帝があきれ果てた顔をした。
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「それが、狙いか! 」
教王の顔が歪む。
「どう言う事です? 」
四大実力者の<黒きもの>が聞いた。
「このまま、この狭い領域に封じ込めて攻撃を続けることで、こちらを水不足と食料不足の兵糧攻めにするつもりだ」
「なるほど、この範囲では採れる魚も水も限られているし、漁船に食料は無いし、無限に攻撃できる水龍神ラトゥースならではの攻撃と言う事ですな」
四大実力者の<白きもの>が呻く。
「お前の<運>の力で食料や水は持ってこれないのか? 」
「難しいな。これほどの神々の戦いの合間では<運>が働きにくい」
<赤きもの>の提案を<白きもの>が答えた。
「こんな馬鹿馬鹿しい戦い方。魔王クルシュの守護者なだけはある」
教王が歯噛みした。
「ふははははははは、気が付いたとて遅いわ! 海神バルバトースの領域は壊せなくとも貴様らを飢えさせることは出来る! 我が力は無限なり! 」
水龍神ラトゥースが誇らしげに叫んだ。




