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ルイーザ 第十部 第三章

「やはり来たか」


 縛王の中にいる教王がそう苦笑した。


「全力で、移動してます。もう少しで我らと契約した海神バルバトースの領域に入ります」


 少し、陰気で顔が前髪で隠れた長身の男がそうぽそりと呟いた。


 彼こそ、<青きもの>と呼ばれる水を操る四大守護者の一人だ。


 中身は水を操る魔物であり、直径百メートルくらいの池の水を自在に操り、それで相手を溺れさす。


 また、その水を城にぶつけて崩壊させたりもできる。


「やっと、やっと、あの水龍神ラトゥースの糞野郎に復讐が出来る……」


 <青きもの>が震えながら手を握り締めた。


 前世では、魔王クルシュと戦い、水龍神ラトゥースの無茶苦茶な反撃にあって負けていた。


「お、おぅ」


 教王がそうその異様なまでの憎悪を見て、動揺したように答えた。


 水龍神ラトゥースは意地になる性格なので、無茶苦茶やられて散々弱い弱いと煽られて負けたのを未だに根に持っていた。


「逃がすかぁぁぁ! 我のどこが悪神か思い知らせてやるっ! 我は水龍神ラトゥースなりっ! 」


 凄まじい、テレパシーの迸りが響き渡る。


 それは、この海域に居た全ての人間の頭に雷鳴のように響く。


「よっぼど我らより、悪神だと思うが……」


 そう、赤髪の燃える様な瞳をした筋肉質の中肉中背の男が呟いた。


 四大守護者の人の<赤きもの>である。


 炎を操り、自在に火計を行い、教団で最強と言われた<赤きもの>も残念ながら豪雨の海の上では何もできなかった。


「相変わらずだな」


 他の四人に比べるとチビと言っていい低身長の男だが、俊敏な男で、それ以外には派手さは無いが、実は四大守護者筆頭である。


 不可思議な運を操ると言われて、漁船を大量に脱出できたのも、そのせいかも知れなかった。


 実際に、この<白きもの>は最後まで前世で倒せなかったのだ。


「はははははははははは! 我がそれほど恐ろしいかぁぁぁ! 我を悪神として散々貶した報いぞ! 我は貴様らが転生しようとも、それを追い続けて倒すのだぁぁぁ! 永遠に追い続けてやるぅぅぅ! 」


 凄まじいテレパシーが弾けるように広がる。


 そのテレパシーはカルディアス帝達の艦隊にも届いた。


「あまり、大きな声では言えませんが、そう言う所が悪神って呼ばれた理由ですよね」


「昔、文壇で最強と呼ばれた小説家が、勝つまで毎日追い続けるんだっけ? ボコボコにして終わったと思ったら、下駄持って次の日も次の日も現れるとか」


「そういうのって弱い奴が弱さを庇うための戦術であって、強い奴がやる戦術じゃないよな」


 そうロイド法王とコンラート皇帝とカルディアス帝が冷やかに呟いていた。


 そして、凄まじい雷雲が海を激しく波立たせながら教王達の船団を追った。


「完全に領域に入りました」


「良し! 久しいな水龍神ラトゥースよ! 」


 教王がそう、海神バルバトースの領域内から、厳かにテレバシーを周辺一帯に飛ばした。


「えらそーに何様のつもりじゃあああああああ! 我と同格のつもりかぁぁぁぁぁ! このゲス変態野郎がぁぁぁ! 」


 そのテレパシーはまたしても、カルディアス帝達に届いた。


「対話する気なしですね」


「相変わらずだな」


「格好つけてる教王が台無しだな」


 そうカルディアス帝達がそのテレパシーを聞いて艦隊の旗艦の上で呟いた。


 バケツの底が抜けたような風雨が叩きつけるように、教王の漁船団のいる海神バルバトースの領域内を襲った。

 

 だが、それはまるで何かに弾かれたように穏やかな空間に遮られた。


「何っ! 」


 そう、水龍神ラトゥースが驚いた。


「ふはははははははははは! 久しいのぅ! 水龍神ラトゥースよ! 」


 その穏やかな空間の中に巨大な銛を持った、下半身が魚の男の人魚のような海神が現れた。


 髭を蓄えたやや年を食った老神だった。


「くらぇぇぇぇぇぇい! 」


 だが、水龍神ラトゥースは聞いちゃいなかった。


 さらなる風雨がその穏やかな領域に叩きつけられた。

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