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ルイーザ 第九部 第八章

「嫌な予感がする」


 雷神ベルクナスの力を帯びながら戦っていたカルディアス帝が、四大守護者の<黒きもの>に食らわせていた剣による雷撃を相手ではなく、自分と<黒きもの>との間に叩きこんで地面を破壊して距離を取った。


「嫌な予感って? 」


 コンラート皇帝がちょっと離れた所で斬り結びながら、そう聞いた。


「ほら、覚えて無いか? 昔、俺達が軍船で戦っていた時に教王側の軍船が海上に集結したって勝手に水龍神ラトゥースが暴台風を起こして、それに叩きこんで潰そうとした奴」


「ああ、あんときは波が凄くなって、無茶苦茶海に流されたな」


「あの時と同じ気持ちだ」


「そうか、俺は津波で同じ事をやられた時を思い出してたわ」


「私は水龍神ラトゥースが敵を沈めるって騒いで、大雨で敵も味方も分からなくされてしまった時を思い出しましたね」


「な、なんです? それ? 」


 クリトラオスがカルディアス帝に聞いた。


「いや、発作のように教王の軍が集まってると、あの水龍神ラトゥースって無茶すんだ。時は来たとか騒いでやるらしいが」


「懐かしいな。あまり思い出したくない思い出だよな」


 カルディアス帝の言葉にコンラート皇帝が戦っている最中なのに笑って話す。


「いやいや、それ、確か魔王クルシュの守護神でしたよね」


 クリトラオスが困惑した顔をした。


「というか、あの神様。教団で悪神ってされてブチ切れて勝手に参加して来て、いつの間にか武王の守護神になった御方ですからねぇ」


 そうロイド法王も呟いた。


「今、教王の軍が集まってるよな」


「確かにな」


 張り付いたような笑顔でカルディアス帝とコンラート皇帝が笑い合った。


 ロイド法王も笑った。


「ちょっと! どうするんですか? 」


「実はクリトラオス。お前にも秘していたが、もしもの展開を考えて、今オルス帝国の北部を流れるイルナ川を艦隊で北上させている。もうすぐ艦隊が見えるはずだ」


 カルディアス帝が破顔した。


 その時、伝書鷹が上空から降りてくる。


 伝書鷹は鷹と言う名前だけあってスピードが速く時速300キロから400キロで飛ぶことが出来た。


 こちらの世界の鷹は、元の前世の世界と違い最高速度でずっと続いて飛べるのだった。


 その伝書鷹を受け止めると足元の入れ物を開けて、カルディアス帝が中身を読んだ。


「麗王ですか? ……なんて? 」


「逃げてぇぇぇだって」


 カルディアス帝がテヘペロした。


「やっぱりねぇ」


 ロイド法王が横で聞いてて苦笑した。


「おぃぃぃぃ! 逃げるぞっ! 」


 コンラート皇帝が叫んだ。


 それで一斉に突撃隊形になるとコンラート皇帝が突撃を開始して、それに他の軍が続いた。


「逃げろぉぉぉ! 」


「船に乗れぇぇぇ! 」


 コンラート皇帝とカルディアス帝が叫びづづけた。


 それに合わせて凄まじい怒涛の突撃で、一気に包囲網を破ると全軍で川へ急いだ。


「船に乗ったら、そのまま川の流れで海に向かうぞ! 」


「オルス帝国の被災者の避難場所は一応、川から離れた場所にしてますが、その人達をもっと遠くの山になっている場所へ移動させてください」


 カルディアス帝は叫び続けて、ロイド法王は僧兵に伝達をさせた。


 そして、どうにか全員が艦隊に乗った状態で少しずつ増えた川の水で流されて全ての艦船は海へ出ていた。


 そして、悪夢の鉄砲水が来た。


 建物も何も鉄砲水で洪水になった川は海に流しこんだ。


 その鉄砲水がどれほど酷かったか分かる話だ。


 熟練の操舵の腕によってその後に来る鉄砲水の川の流れは回避された。


 そして、海に流れて来る建物の欠片を見て、艦船に乗ったカルディアス帝が呻く。


「良かった。何が起こるか想像しておいて良かった」


「容赦ないなぁ」


「相変わらずですね」


 カルディアス帝とコンラート皇帝とロイド法王が呟く通り、凄まじいものだった。


 結果として北部オルスは再度壊滅した。


 二度と復興は出来ないレベルだった。


 良く、生きていたなぁとしみじみと艦船になんとか乗った兵士達が呟いて泣いていた。


 だが、皆の地獄は始まったばかりだった。

 

 

 

 これで第九部は終わりです。


 続きはいつもの通り来月の予定です。


 宜しくお願い致します。

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