ルイーザ 第九部 第六章
「どうする? 」
麗王が深刻な顔で聞いた。
「救援に向かうしか無いが、間に合うかどうか」
そう魔王クルシュが呻いた。
「このままでは向こうの各個撃破が成立するのでは無いか? 」
麗王の顔が歪んだ。
「いやいや、まだカルディアス帝とロイド法王とコンラート皇帝の方が兵が多いでしょ」
「圧倒的に多いはず」
叔父の将軍とテイラー部隊長がそう突っ込んだ。
「いや、それで仕掛けて来たって事は、それを覆す策があるはず。四大守護者に任せるより自分の戦略で敵を倒すタイプだからな。教王は……」
魔王クルシュがそう麗王の言葉に頷いた。
「幻影を出してまで、我々を引っかけたんだ。カルディアス帝とロイド法王とコンラート皇帝をこれで潰す自信があるとしか考えられん」
麗王がそう呻く。
「相変わらず、的確よのぅ」
その言葉とともに、魔王クルシュ達の騎馬の背後に赤い巨大な目が浮かんだ。
それとともに八つの首を持つ龍とともにその上に座っている美しい女神が顕現した。
「こ、これは。水龍神ラトゥース様」
慌てて、魔王クルシュが騎馬を降りて跪いた。
それを見て、前で懲りているテイラー部隊長などスタンリー公爵軍の皆が騎馬を降りて跪く。
「教王めは奴らの軍の内部に洗脳のしていない、純粋な奴の配下を紛れ込ませて将軍などに出世させていた。それに反乱させて逆にあやつらは包囲されて戦っておる」
「えええええ? 」
「なんて事だ」
テイラー部隊長や叔父の将軍が動揺した。
「いや、なんで、それを最初に教えてくれないんです? 」
麗王が冷やかに突っ込んだ。
「それじゃ。お主は相変わらずじゃのぅ。すぐそう結論を求める。お前のそういう所は我はいかんと思うぞ? それはお前達が自らの力で調べて対処していく事であろうが。インチキはいかん」
「いやいや、守護してるなら教えてくださればいいのに」
「それはそれ。これはこれじゃ。もう少し、面白みのある性格をしろと昔から言っておったろうが……」
「いや、それで敗北寸前なんですよ? 」
麗王がさらに冷やかに突っ込んだ。
麗王は騎馬のままで辛辣に水龍神ラトゥースに返答していた。
魔王クルシュのスタンリー公爵家のものが皆でオロオロとして見守った。
「いや違うな。これはチャンスなのじゃ。今こそ、奴等を一網打尽にするチャンスじゃ」
そう水龍神ラトゥースが断言した。
「……戦ってる場所が川のほとりなんですかね? 」
ズバリと麗王が突っ込んだ。
「身も蓋も無いのぅ」
「全部流しておしまいとか言うんじゃないでしょうね。それだと味方も全滅じゃないですか」
「あのキンキラキンの坊主が自国の艦隊を海に置いている。恐らく、もしもの救援と予備で配下に内緒で配置しておったのだろう。それらに川を北上をさせておる。それならば、そこに逃げ込むだろうから川を流しても大丈夫だ」
そう水龍神ラトゥースが微笑んだ。
「いや、それなら、とりあえず、何とか逃げ切ると言う事では無いですか。ならば川で水を流さなくても良いのでは……」
「洪水で流さなければ殺せないぞ? 」
「いえ、仲間が大丈夫なのなら良いのです。後は我々でします。素晴らしい情報をありがとうございました」
そう麗王が慇懃に礼をした。
それをハラハラしながら魔王クルシュ達が跪いて真っ青になって見ていた。
麗王と水龍神ラトゥースが火花を散らすように言葉は静かに激しい言い合いをしていたからだ。
「ふふふふふふ、甘いの」
「いえいえ、最初に情報を何故くださらないのかお聞きしたら、貴方はおっしゃったじゃないですか、自らの力で調べて対処して行くのが正しいと。さらに貴方はインチキはいけないとおっしゃったでしょ? 」
麗王がさらに氷のように答える。
「ふふふふふふふ、なるほどのぅ……」
そう水龍神ラトゥースが笑った。
「だが、断る! 」
そして引き続き、先に答えたのは水龍神ラトゥースだった。




