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ルイーザ 第九部 第四章

「なぜ、魔王クルシュと麗王に救援を? 今ならロイド法王とコンラート皇帝で教王に対する包囲殲滅が完成するのでは? 」


 戦いの最中でクリトラオスがカルディアス帝に疑問を呈した。


 すでに、教王である縛王の軍に包囲されつつあるのを、騎馬で走って相手の軍を引き付けて陣形を崩しながらクシャナ帝国は戦っていた。


「いや、こちらの戦術は前世で何度も見ているはずなんで、こちらが包囲殲滅を狙っているのは分かったはずだ。麗王の策略では、教王の恨みを買っている麗王達が囮になって包囲殲滅をやるはずだったんだが、それをこちらに攻めてきているのは、こちらを各個撃破するつもりだろう。とはいえ、妙だ」


「妙とは? 」


「距離的に、ロイド法王とコンラート皇帝とで充分にこちらの包囲殲滅の陣形は整う。なのに、何故、わざわざこの3つの軍勢が揃っているここを攻めるのか分からん。オルス帝国の北部に今、我々は分散はしているが集結しているのだ。軍と軍の距離をうまく使って各個撃破する気なのなら余計におかしい」


「なるほど、わざわざ、こちらの包囲殲滅の陣形に攻め込んで来たのがおかしいという事ですか」


「他の奴ならいざ知らず。前世でこの包囲殲滅戦術で死んだ男だぞ、教王は。ならば、それなりに戦略家として通っていた奴にしては信じられない行動だ。しかも、俺がこうやって、包囲殲滅の陣形になるようにロイド法王とコンラート皇帝の軍の方に引きずって連れて行っているのに、そのままついてくるとかおかしすぎる」


「では、この際、一度一気に逃げてみては? 」


「いやいや、それをやると、今度はロイド法王とコンラート皇帝が包囲殲滅されるだろ? 味方を見捨てることになる」


「生まれ変わってんだから、どうかと思う訳ですよ。前世でも晩年は戦ってたのに、その仲間意識。ぶっちゃけ、彼らは敵と言えば敵ですよ? 」


 クリトラオスがそう囁く。


「ははははははははははははははははは。まあ気持ちは分かる。でもな。それをやって前回失敗してるんだ。麗王が縛王に殺されて、武王を皆で倒して封印した。その後は、延々と残りの六王で殺し合いだ。一度仲間を殺して戦ったせいで互いへの疑念から、ずっと死ぬまで苦い思いをして、かっての仲間同士で戦い続けた。武王がそうやって最愛の麗王も殺されて自分も戦いで敗れて封印されて性格が変わっていたら別だったと思う。だが、あいつはそうされていたのに昔の通り馬鹿のままだった。なら、そう言う互いに殺し合い呪い合う選択をした自分達を考えて馬鹿馬鹿しくなったんだ。とんでもない無駄をしてたのかもしれん。元の仲間で仲良く皆でこの世界を発展させれば良かったんだと思う。多分、化王達も同じだと思うよ。俺達はやり直すチャンスを貰ったのさ」


「意外と本当に感傷的になっておられるんですね」


「いやいや、お前、そういう所をなおせよ。ドライすぎるだろ? 」

 


「いえいえ、陛下の元で働き政治をする者としては当然の感覚ですが……でも、そう言うのは私も嫌いじゃないです」


 そうクリトラオスが笑った。


「……お前、笑えたのか……」


「失礼ですね」


 そう言い合いながら、ジリジリとオルス帝国の間を流れる川と建物の間の狭隘地に教王の軍を戦いながら引きずり込んだ。


 教王の軍隊は2つの洗脳した造反者の軍隊と王国の近衛からなる軍隊で、連携が無茶苦茶だった。


 その為、カルディアス帝のような戦功者には突くところがいくつもあったのだ。


 その結果、想定される狭隘地に見事に引きずり込んだ


「さあ、これで、後はロイド法王とコンラート皇帝の軍を待つだけだ」


 そうカルディアス帝は仕事師のような自分の誘導で引きずられた教王の軍を胸を張るように見た。


 その時、来るはずの援軍が来た。


 それは教王を包囲するものでは無かった。


 カルディアス帝を包囲するものだった。


「簒奪者め! 」


「簒奪者どもめっ! 」


 ロイド法王の僧兵とコンラート皇帝の傘下の将軍の配下の軍が叫びながら狂乱して向かってきた。


「あらら? 」


 カルディアス帝が想定外の状況を見て首を傾げた。


 それと同時に、教王の背後に回していたはずの傘下のバルズ将軍が長大な槍を持って、カルディアス帝に向かってきた。


 簒奪者がぁぁぁと叫びながら。


 

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