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ルイーザ 第九部 第三章

「道理で一気に戻らないで魚の干物を持たせて妙な事をするなと思った……」


 クリス部隊長が苦笑した。


「追加で魚の干物を皆に渡すとは思わなかったが、なるほど、お前も読んでいたという事か。香で攻めて来た時の対策に使う気だったという事か」


 麗王が魔王クルシュを見て苦笑した。


「いや、そうなんだけど。向こうも読んでたって事だよな。こちらが干物を準備した段階でかもしれないけど……。数で押すなら、オルス帝国領内で仕掛けて来ると思ってたんだけど……」


 魔王クルシュが少し深刻そうに呟いた。


「普通なら、スタンリー公爵領に入れないように入り口を塞ぐ動きをすると思って、あちこちに密偵を放っていたんだが、何も起きなかったな」


 麗王も深刻そうに呟いた。


 すでに、彼らは森が多くて起伏があるスタンリー公爵領に入っていた。


 山が近くに多いスタンリー公爵家と違って、王国自体は平野にあるせいで、山岳戦は不得意なはずだった。


 だからこそ、平野だけでなく山岳戦も得意な王国にしては少し毛色が違うスタンリー公爵家を国境付近の山岳地帯に置いて、敵に対する備えとしたのだ。


 そして、だからこそ、敵地に一気にいける一本道を魔王クルシュは配備して山岳地帯の展開の遅さをカバーしていた。


「おかしいな。教王はあれでも相当な戦略家だったはず。何故、ここで仕掛けてこないんだろう」


「確かに、意外と我がスタンリー公爵家はずっと敵国に対する備えであったせいで、戦い慣れているからな。特に自国でのゲリラ戦とかは慣れているから、厄介だと思うのだが……」


 叔父の将軍が呟いた。


「そもそも、魔王クルシュが陣立てを一本道を作って突撃奇襲型に変更する前は、ずっと地味な地元の山岳とか使ったゲリラ戦がメインでしたからね。援軍が来る前提なら、スタンリー公爵領で戦うのはあちらにとって悪手だと思うのですが……」


 テイラー部隊長もその意見に同意した。


 その時だ、空の上で伝書鷹が鳴く。


 鷹と言っても、こちらの世界の鷹で伝書鳩に似て安定した速いスピードで長距離飛行が出来て、非常に頭がいい。


 敵地での連絡に使用されていて、それはクシャナ帝国が良く使っていた。


「あれは? 」


 クリス部隊長がその伝書鷹が降りてくるのを見て聞いた。


「カルディアス帝からの何かの連絡だ」


 そう麗王が手を挙げると、伝書鷹はそこにとまった。


 その足首には金属でできた長方形の丸いものがついていて、それを麗王が開けて読んだ。


「ええっ? 」


 麗王がそれを読んで驚いた。


「どうした? 」


「カルディアス帝が今、縛王に攻撃されているらしい。救援要請だ」


「はあ? 」


「あのスタンリー公爵領に向かった縛王の軍勢自体が幻覚だったらしい。しまったな。こちらを切り離す為だったのか。確かに、あの楓の影響を受けた教王では、お前と戦えないとは見てたのだが……」


 麗王が呻く。


「幻覚? そうか、幻影遣いが四大守護者に居たな。ヤバいんで最初に皆で潰したから、忘れてた」


 魔王クルシュもそこで気が付いた。


「幻影遣い? 」


「ああ、戦うと背後に敵兵の幻影を見せたり、物凄く厄介な相手だ。戦争ではそう言うのが一番効くからな。それ以外でも敵国と戦う前に、敵国の軍の前で幻影で虐殺される教団の信者達の姿を見せたりして、味方の士気というか憎悪を跳ね上げて戦ったりする。本当に厄介なんだ」


「いや、それが分かってるなら、なんで? 」


 叔父の将軍が突っ込んで来た。


「だって、まさか、復活してるとは思わなかったしなぁ」


 そう魔王クルシュが麗王を見た。


「とりあえず、援軍に行くしかない。敵を挟撃する予定でこちらの兵を分けて半分の兵を先に城に送ったんで、今は兵が残り半分しかいないが仕方ないな」


 麗王の眉が深刻そうに歪んだ。 

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