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ルイーザ 第九部 第一章

 スタンリー公爵軍は強行軍で城に向かっていた。


 狼煙台からの連絡によると、まだ攻められてはいないようだが、それにしても時間の問題だった。


「湖の水を切るとなると、再度下流で洪水になるから、カルディアス帝とコンラート皇帝とロイド法王には連絡をしておいた」


 騎馬で走りながら魔王クルシュに麗王が話す。


「こちらは、こないだ土産で送った大量の魚醤のタレ付きの魚の干物を沿道で焼けるように準備させている」


 魔王クルシュがそう答えた。


「は? え? って香の対策か? 」


 麗王が驚いた顔をしたがすぐに魔王クルシュの真意に気が付いた。


 教団は香を使った洗脳が得意で、奇妙な呪文とともに敵に対して使い戦う事もあった。


 香でぼんやりさせて、脳の奥に呪文を叩きこむのだ。


 だが、香の独特のにおいが無ければ、これは使えない。


「なんで、タレ付きの魚を焼くんだ? 別に他の香とかそう言うものでも良いはずだが……」


「これなら兵糧でもあるのだから、助かるだろ」


 魔王クルシュはそう答えたが、麗王は微妙に納得いかない顔は止めなかった。


「いや、それで、臭いのか? 」


「ずっと臭いんだが」


 テイラー部隊長とクリス部隊長が騎馬につけた蔦で作った入れ物の中身を愚痴る。


「また、追加で大量に買って来たんだな」


「香に対抗するには燻したような煙が一番だ。特に匂いの強い奴なら相手への牽制になるし」


 叔父の将軍の呟きに、魔王クルシュが答える。


「確かに兵糧にもなるのだろうけど、急いでんだけどなぁ」


 麗王が少し愚痴る。


 急ぎと言う事で馬車で運んでいるが重すぎるので、一部は騎馬に少しずつ持たせていた。


 そうやって荷を分散させても、やはり遅れるのだ。


「こちらも我々の移動に使う一本道も使ってるから、その辺りは有利だと思うんだが、ちょっと邪魔だよな」


 テイラー部隊長も邪魔な干物を一部だけど持たされているせいで愚痴る。


「食べ物の良い匂いって言っても、ちょっとなぁ。果物の香りとかならともかく、魚の干物だしな」


「生臭いよな」


 クリス部隊長もテイラー部隊長も愚痴り続けていた。


 そもそも、海が無い王国であるから、海の魚は珍味で旨いけど、この臭さにはどうしても慣れれない部分があった。


「魚醤を送ってタレで使って肉とかで焼いた方が良かったのでは? 」


「魚醤の壺が割れると困るし」


「まあ、輸送は壺が割れないように走るから、もっと時間がかかるよな」


 テイラー部隊長の言葉に魔王クルシュが突っ込むと麗王が悩ましい顔をした。


「ううううっ……」


「どうした? 」


「はなしあえるぅのがうれしいぃぃ」


 麗王の冷やかな突っ込みなど受けても嬉しくて泣いてしまう魔王クルシュであった。


 背中の籠に載せた子犬のルイーザがくぅぅぅんと鳴いた。


「あのさ。ルイーザが引くからやめてくれないか? いや、そのルイーザじゃなくて私の中にいるルイーザなんだが……」


 背中の籠の子犬のルイーザを見る魔王クルシュにあきれ果てたように麗王が突っ込んだ。


「いや、だって。ずっと夢だったのが今現実になってるんだよ? 」


「何か、切ないな」


「おっさんの恋の物語だな」


 クリス部隊長とテイラー部隊長が苦笑して話し合う。


「こんなとこまで、焼き用の台が置いてある」


 叔父の将軍が一本道の沿道の長細い竈門を見て驚いた。


「もう、すでに準備してあるんだな」


「背後から敵が香を使ってやってくるかもしれないからな」


 そう魔王クルシュが微笑んだ。


 すでに守備隊からの兵士も十人程度竈門の前に回されていて、いつでも焼けるようになっていた。


「戦争やる雰囲気じゃ無いな」


 クリス部隊長がそれを見て失笑した。


「ちょっと、待て。あの樽はなんだ? 」


 麗王が目敏く焼くための石で作った、横に長細い竈の隣の樽を指差した。


「酒の樽だ」


「酒だぁ? 」


「焼いてる途中に酒を振りかけて香ばしく焼く為に配備した」


「酒の匂いで香の効果を防ぐつもりか……」


 感心したように、叔父の将軍が頷いた。


「お前、まさか……私の守護神のバルカスを召喚する気では無いだろうな」


「ま、まさかぁぁぁ? 」


「お、お前なぁ……」


 麗王の一言で魔王クルシュが目を逸らせたので、麗王がキレて魔王クルシュの足を蹴った。


 皆が呆れた顔で魔王クルシュを見ていた。

遅くなってすいません。


バタバタですが、次の部の投稿します。


宜しくお願い致します。

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