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ルイーザ 第八部 第一章

 災害で壊れたオルス帝国の北部の石造りの建物は豪雨の洪水で痛みが酷く危険な為に誰も人はいなかった。


 そんな荒れ果てた場所で睨み合うショートカットの少女と麗王がいる。


 しばらく、双方は無言だった。


 口火を切ったのは麗王だった。


「縛王は御奈神榊(みなかみさかき)が本名だ。我々と一緒に異世界に召喚されたクラスメイトだが、あの時に召喚された34人は召喚された時点で半数が亡くなった。だが、思い出してみれば、御奈神榊(みなかみさかき)は双子だったはずだ。そして、お前は今、女性の身体を使っているし、女性の人格で話して来ている。という事は双子の妹の御奈神楓(みなかみかえで)という事になるが……。違うのか? 」


 麗王がショートカットの少女を睨んだ。


「……いつから気が付いた? 」


「転移して来た時に半分が亡くなった最初からだ。身体は御奈神榊(みなかみさかき)だったが、所々にあいつと違う所があった。性格とか仕草だな。お前達は兄妹仲が良かったはずなのに、御奈神楓(みなかみかえで)が亡くなった時に御奈神榊(みなかみさかき)は泣いたが取り乱さなかった。いつもの御奈神榊(みなかみさかき)なら取り乱すはずだった。それで気になった。何故、兄の身体を乗っ取って兄が生きているようにしたのだ? 」


 麗王が畳みかけた。


「兄は亡くなってはいけないから……」


「ご実家は御奈神神社の社家と兄の方に聞いた。いくつもの不思議な言い伝えがある神社でその一つが<生き返り>とか……。それで私は推測した……<生き返り>では無く、身体を奪う事で生き返ったように見せるだけでは無いかと。本来は死して魂が薄れた他人の身体に入り、その魂の力と人生を受け継ぐ能力を持っていたのでは無いかと」


「……その通りだ。乗っ取るのでは無く、魂が亡くなりかけて薄くなった人間に入って交じり合うのだ。結果として強い方の心が残る。兄には御奈神家の祖師の魂が混ざっていた。これを無くすわけにはいかない、だから、私は自分の魂を溶け込ませて、祖師の魂の残る兄を残そうとした」


「つまり、自分の肉体は死んでも良いので、魂を混ざり合わせたと言うのか……」


「そうだ……すでに兄の魂も祖師の魂も殆ど消えかかっていたが辛うじて間に合ったのだ……」


「何と言う馬鹿な事を……」


 麗王が悲しそうな顔をした。


「そうやって、千年以上を御奈神家は生きて来た。それを今更どうしょうもないでは無いか。我ら一族にとってそれは大事な事なのだ」


「自分の人生を捨ててもか……。昔から、お前は武王……武藤亮(むとうりょう)に惚れていたはずだ。私がそうであったように……」


「自慢か? それを知っていて、だからどうだと言うのだ? 」


 さっと縛王が殺気立つ。 


「いや、まあ、あいつは馬鹿だから、恐らくはお前の恋心には気が付いてないとは思う。どうだろう、全てを和解して奴に告白してみたらどうだ」


「何だ、その上から目線はっ! どうせ、武藤君が断ると達観しているのか? 」


 縛王がさらに殺気立った。


「いや、私の身体の持ち主が私が眠っている間に人格を持ってしまってな。本人も困っているんだが、亮を自分のまわりをうろうろしてた変なおっさんにしか見えないらしい。本人の思っている以上に拒絶感が酷くてな。今回、添い遂げるのは厳しいかもしれんしな」


 そう麗王が苦笑した。


「はああああ? だから譲ると言うのか? 」


「いや、私はお前が知っている通り、いつも正々堂々とやりたいタチだ。だから、ちゃんとお前と争い合って、あいつに選ばれたいとは思ってる」


 そう麗王が笑った。


 それで縛王の顔が少し柔らかくなった。


「だから、その為にも、お前の中にいるものを処分しなくてはならない」


 麗王が呟くと同時に、少女だった縛王の顔が老人の男の顔に変化していく。


「ほう、流石だな。これも知っていたか」


 そう、その老人の男は異様な迫力の笑いを見せた。


 


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