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ルイーザ 第七部 第八章

 魔王クルシュは真新しい天幕の中で一人で居た。


 カルディアス帝も心配して、魔王クルシュの話を聞いてくれて、それで、しばらくこちらで休んだ方が良いとロイド法王の忠告もあり、休む事にした。


 それと同時に、カルディアス帝はスタンリー公爵家に連絡を入れて、お前の事を相談するからとまで話した。


 それは本気で友人に対する気持ちから出たものだった。


 魔王クルシュは泣きながら、それを頼んだ。


 ロイド法王は苦笑したが、その気持ちは分かった。


 人間は年を取り偉くなるといろんなシガラミが出来る。


 特に彼らは六王として君臨したものの、それぞれが軍を率いていた為に、それが酷かった。


 それで戦わざるを得なくなった。


 特に、縛王が図ったのだと思うが、麗王を殺したのは最悪の結果をもたらした。


 魔王クルシュが憤怒と憎悪に満ちて報復して来るのは当たり前だったから。


 それを何とか出来ないかと模索はした。


 だが、それぞれの率いている軍のシガラミと、何より魔王クルシュの憎悪は止めようが無かった。


 対話すらできず、次々と報復で破壊されていく自分達の軍を見て組んで戦わざるを得なかった。


 何故、麗王を縛王が殺したのかは分からない。


 だが、あの異常なこないだの戦いと縛王のこだわりが何かあるのを感じさせていた。


 今度の転生でも魔王クルシュ……武王に対する彼らの警戒はその時の異常な強さを見れば仕方なかった。


 だが、長い長い年月と転生によって、警戒はあったが、その時に抱いていたシガラミは消えて、縛王を除けばわだかまりも消えた。


 それで、華王のカルディアス帝にしても、化王のロイド法王にしても残っているのはあの仲が良かった時へ戻りたいと言う気持ちだけになっていた。


 クラスごと転移して、彼らはクラスメイトが次々と死んでいく中で必死に生き延びた、本当に這いずり回って戦って互いに協力して教団の教祖と戦った仲間なのだ。


 シガラミが消えて、時間が経てば、その時の自分達の気持ちに戻る。


 ある意味、良くある運動部の同じ釜の飯を食った仲間以上の命を支え合った仲間なのだ。


 あのような状態になってしまったとはいえ、いわば家族よりも深い絆を持った仲間だったのだ。


 だからこそ、カルディアス帝はあの時に死なせてしまった仲間の麗王とともに、武王とももう一度昔のようになりたいと言う気持ちがあった。


 それはロイド法王と同じだったのだ。


「ふぅ」


 キンキラキンの新しい天幕の中で組み立てられた寝台の上で、魔王クルシュはため息をついた。


 麗王と言う愛する人から冷たい突き放しがあってショックを受けてどうにもならなくなった時、まさか、あの時の敵に頼るとは自分でも思わなかったのだ。


 それだけの混乱があったが、彼もまたシガラミが無くなり長い年月が経って転生して、残ったのは互いに命がけで支え合って一緒に戦った、異界に転生したあの時の仲間だけだったのかもしれない。


 もっとも、落ち込みすぎて、それを考える余裕はなく、近づいて来た雌犬の子犬のルイーザだけが心の支えであった。


「きゅーん」


「すまんな。こんなとこまで連れて来て……」


 魔王クルシュがそう呟いて、優しくルイーザを撫でた。


「うぅぅ! 」

 

 その時、雌犬の子犬のルイーザがちょっと唸った。

 

 天幕の外に誰かいるようだ。


「どなた? 」


 魔王クルシュが力なく聞いた。


「あ、はい、飲み物をお持ちしろと陛下に言われました」


 そう、か細い女性の声がした。


 それは魔王クルシュにふと、どこかで聞いた声だと思わせた。


 何故か聞いたことがあったのだ。


 少し魔王クルシュが首を傾げた。

 

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